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四章 再会
206 妻のいる日々
しおりを挟む側に妻が居ます。
お互いにやる事が有るので、一日中くっついている訳にはいきませんけど、生きて動いている妻と一緒に暮らせているのです。
朝晩の食事は、一緒にとっています。
家族とも一緒です。
寝る時は、週に一度ほどのペースで、私は家族の寝室で雑魚寝をします。
チャックの魔素の循環は随分と良くなっていますけど、ずっと一緒に寝ていましたから、妻を喚んだからと急に「これからは完全に別だよ」とはいきません。
私が寂しいです。
シナトラや白雪も一緒に、四人で一緒に寝ています。
最近私は、妻の作った薬を入れる為のガラスの小瓶を作ろうと、ガラス職人の方々と試行錯誤しています。
栓はコルクを使用予定です。
しかしながら、吹きガラスで薬用の小瓶は難しいですねぇ…。
土魔法で型を作っても、取り外す時に割れるか、めちゃくちゃ分厚い瓶になってしまうので、試行錯誤中です。
町の運営は、相変わらずアインとコニーが主体ですけど、経理事務として雇っている、ドーディーさんがしっかりしてきたので、仕事を随分と割り振っているそうです。
え?私が町長でしょうって?
何かあった時に責任を取るのは私ですけど、細々した事は、素人が口を出す事じゃ無いですよね。
え?国だろうって?
町で良いんです!
たとえ人口がどんどん増えていて、周りの小さな村が合併を申し込んできて両地もバンバンに増えていても、私の中では町なのです!
他の仕事としては、サーベラス商会も、今ではほぼアインにお任せしていますけど、今年になって移住してきた方に、適材が居ました。
商家の長女さんで、跡取りとして学んでいたそうなんですけれど、最近【弟】ができたそうで、お役御免となったとか。
まあ、良く有る話ですけど、旦那さんが手を出した下働きの女性に子供ができてしまい、女性は隠して出奔。
一人で産んで育てていたけれど、病で育てられなくなり、旦那さんに「あなたの子よ…」と……。
怒った奥さんと娘さんは、離縁書を叩きつけて家を出て、うちの町へ移住して来ました。
浮気はいけませんよね。
しようとする気にもなりませんよ。
そんな母娘をまとめて雇い、商会をお任せする予定で、只今教育中です……アインが。
基礎はバッチリ出来ていますので、近いうちに雇われ店長?になってもらう予定です。
妻は薬師として、主婦として、バリバリと働いています。
薬師とは別に、服のデザインも頼まれたりしています。
ドレスとかでは無く、普段着の、ですけど。
ブラウス、スカート、ズボン、シャツ、ワンピースなどですね。
作務衣や貫頭衣みたいな服が主流の世界ですから、日本の普段着でもファッショナブルに見えるようです。
でも、まだ技術的に【小さなボタン】が作れないので、妻としては不満のようです。
え?私は何をしているのかですって?
今まで通りですよ。
ガラス工房で『こんなの作れないかな』と意見を出しに行ったり、移住希望者の面接したり、カカルの民や、ダイズスキーなどから、色んなものを仕入れたり、輸出したり、町中や農作地を見回ったり、ダンジョンに出かけて体を動かしたり、結界が作動しているかチェックしたり、ワープを使い、彼方此方へ挨拶回りや、採取やら、何やらかんやら。
……色々やっているようで、【仕事】と言えるのは、仕入れと輸出くらいな気もしないでは無いですけど…。
2月の頭には、新婚旅行へも出かけました。
………ワープを使い、日帰りですけど。
カカルの民のババ様や、ダイズスキーのポチさんに、妻を紹介して来ました。
カカルの民には、日本では食べたことのない山羊料理などでもてなして貰いました。
妻は食後に出たバター茶を気に入ったようです。
「これがバター茶…、独特の風味だけど、好きな味だわ」
テレビで見ていたバター茶と多分同じものだと思われる物ですけど、私は苦手です。
狩りの獲物が少ない冬は、羊を潰して食べるカカルの民なのですけど、あの独特の匂いがなく、美味しいんですよね。
どうやら、薬草で下処理をするそうなのですけど、妻はその手法を教えてもらっていました。
普通に牛豚鶏を食べて、ジビエや羊などは食べる事はなかったですからね。
「でもこの世界だと、食肉用に交配された家畜なんて居ないのだから、何でも美味しく食べれる様に、色々と知っておくに越した事無いと思うの」
とニッコリと笑った妻は、料理方法なども教えてもらっていました。
ダイズスキーでは………ポチさんのテンションがウザかったです。
「ちょっ!マジ奥さん召喚したの?
え?そんなのアリなの?
つか、ズルくね?
町つくって、色んな物に手広く手ぇ出して成功して、仲間にドラゴンや魔王なんかいて、更にリア充?
爆ぜろ!禿げろ!もげろ~~~!!!」
落ち着いた後は、仲良くお茶をしましたけどね。
日本での生活や、こちらの世界のあるあるなどを、面白おかしく話してくれました。
勿論ヨルゼル氏の元や、コニーの城、北の城や南の港町、私が綺麗だと思った風景などを、妻と一緒に見て回りました。
日差しの温かい日には、家族も揃ってピクニックへ出かけたりもしました。
遠くへはワープ、近場はバスで移動したのですけど、妻はバスがお気に召した様で、一人でもゾウケシのポニーに乗って、町の近辺を散策しています。
私も時間が合えば、ドドに乗って一緒に行きます。
チャックやシナトラも付いてきて、皆でのんびりとバス移動を楽しんでいます。
再び会えた妻と仲の良い家族、楽しい仲間や穏やかな住民にかこまれて、幸せな日々をこれからも過ごしていければ良いなと、心の底から思います。
そんな幸せな日常生活を送っていた3月の終わり、一人の来訪者によって穏やかな日常が崩れる事になりました。
でも、それは別のお話。
……end……
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
ジョニーが妻と再開し、家族や周りの人々に囲まれて幸せに過ごす話はここまでです。
なろうさんでは話を続けたのですけど、温度差があり過ぎて、【幸せ】と言い辛い話なので、一旦ここで終わりとします。
フラグ回収の続編として
【正義の味方とは言いません。妻と幸せに過ごすために掃除させていただきます】
を明日からアップします。
暴力的なシーンや、残酷な表現、子供が酷い目に遭う事もありますので、読むか読まないかは自己判断でお願いします。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
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