【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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四章 再会

198 ヨバレタサキニ(妻視点)

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誰かに呼ばれた気がして、気付いたら、見知らぬ部屋で寝かされていました。
ここは何処なのでしょう?

「……百合江………」

名前を呼ばれ、そちらへ顔を向けると、そこに居たのは…

「あらあらあなた、随分と若くなったのね」

籍を入れた頃の私の旦那様が居ました。
泣きそうな顔で、ベッドで横になっている私を覗き込んでいます。

「こんなにすぐにあなたに会えるなんて、ここは天国なのかしら?」

でも私の方が先に亡くなったはずですよね、なぜ旦那様の方が先に居るのかしら?

「……ああ、そうだね、ある意味天国かもしれないね」

涙を浮かべて微笑む旦那様は、見た目こそ二十歳くらいですけど、この微笑み方は長い月日を一緒に過ごした後の表情(かお)ですね。


それにしてもここは何処なのかしら?
よく見てみると、見知らぬ男の方がいらっしゃいますね。
髪の色がとてもカラフルですから、バンドか何かをやっている方々なのでしょうか?
でも顔付きを見ると外国の方のようです。

あらいやだ、私ベッドに横になったままだわ、恥ずかしい。

私が身を起こすと、紫色の髪の毛の、小学生くらいの男の子が、クッションを背中にあてがってくれました。
その男の子に旦那様がお礼を言ったわ。

「ありがとう、チャック」

男の子の名前はチャックと言うのね、懐かしい名前ね。

「ジョニー、私達は部屋へ戻りますね。
ゆっくりと話をして下さい」

白い髪の男性がそう言って、他の方と部屋を出て行きます。
あら、後ろに居たから見えなかったですけど、可愛い男の子が2人居たのね。
一人は5、6歳くらいかしら、白い髪の男の子?それとも女の子かしら?
その子より小さな2歳くらいの男の子は、黒いクルクルとした巻毛で、頭に何かオモチャが付いているわ。

7人の男性の方が部屋から出ると、旦那様は私の手を両手で包み込み、ゆっくりと、話を始めました。



旦那様があれから一年後に儚くなった事、不思議な方によって、この世界に来た事、この世界が別の世界である事、見た目年齢が若返った事、魔法が使える事、私を甦らせる為に頑張った事……そして、沢山の出会い。

「あらあら、不思議な世界に来たのね私達。
それに家族も増えたなんて、素敵な事ね。
でも……」
「でも?」
私の疑問は旦那様にはわからない様です。
まあ、旦那様らしいと言えばらしいのですけど。

「家族が増えたのは嬉しいですよ。
でもほとんどの方が今の私達より年上だった様に見えましたけど」

紫色の髪の毛のチャックと言う男の子と、白い幼子と可愛い巻毛の男の子以外は、今の私達の外見より年上に見えました。
聞くと一つ屋根の下で一緒に暮らす事になる様です。
私達は中身はいい歳だとしても、見た目が二十歳そこそこですから、悪い評判がたつのでは無いのでしょうか。

私の心配事を、旦那様は「大丈夫だよ」と笑って答えました。

「この世界では……口で言うより、見てもらった方が分かりやすいかな?」
言いながら旦那様は、両手の掌を合わせる様に繋ぎました。

「今から一つ魔法を使うね。
この世界の事、それから、皆との出会いを伝えるから、ビックリしないでね……目を閉じて」

言われたままに目を閉じると、頭の中に色々な光景が浮かんで来ました。

そうなのね、この世界の方々は見た目通りの年齢では無いのね。
あの背の高い方はドラゴンで、白い髪の方と巻毛の男の子は魔王?
緑の髪の男性は生まれてまだ2年?
可愛い巻き毛の子は150歳?

とてもたくさんの情報で、少しクラクラします。
それより何より……旦那様の名前のセンスって……………。

「今私はジョニーと呼ばれています。
だから百合江もジョニーと呼んで下さいね。
それと、百合江の事も『リリー』と呼びますから、慣れて下さいね」 
「あらあら、今更リリーと呼ばれるのは、少し恥ずかしいわね」

恥ずかしく思いますけど、この世界のシステム?本名を伝えてはいけないのでしたら、従うべきね。

「それにしても、あなたのその見た目で、『私』と言うのは少し違和感があるのね。
その年頃ですと、『俺』って言ってましたから」
私が言うと、旦那様…ジョニーは少し顔を赤くして、
「まあ、見た目はこうでも、中身はオジサンですからね。
でも、最近少しばかり、若い頃の私が顔を出す事が増えた気がします」
「まあ、そうなの?」
「……主に怒った時とかですけどね」
顔を横に向けるジョニーの姿に、少し笑えてしまいました。

「元々あなたって喧嘩っ早い所が有りましたよね。
歳を重ねて抑える事を覚えましたけど、内心でキレる事は、割としょっちゅう有ったじゃないですか」
「気付いて……」
驚いた顔でこちらを見るので、笑ってしまいました。

「うふふふふ、気付きますよ。
何年一緒に過ごしたと思うのです?」
恥ずかしい時に顔を見られたくなくて、片手で覆うクセも変わらないですね…片手で隠れるわけないのに。

ああ、変わらないあなたと、これから第二の人生を一緒に歩いていけるなんて、なんて素晴らしい事でしょう。

「あなた……ジョニー、喚んでくれてありがとう。
それと……先に逝ってしまってごめんなさい」

置いていく事になってしまい、とても傷つけた事でしょう。
最後に告げたかった言葉を伝えると、彼は涙を流しました。






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