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四章 再会
196 リーンカーネーション
しおりを挟む気持ちが決まれば、後は喚ぶだけです。
ですがその前に……。
服や靴など、着る物は数着準備しました。
好みがありますから、数を揃えるのは、本人が来てからですね。
部屋は私と一緒ですけど、一応布団は用意しました。
一緒の布団でも良いんですけど、一応ね。
「町の人達にも、妻を喚ぶ事を伝えた方が良いのでしょうか?」
「こちらに来られた後に、故郷からいらしたと伝えればいいと思いますよ」
「喚ぶなら朝が良いのでしょうか、それとも夜の方が良いでしょうか?」
「昼で良いのではないか?」
「遠くから喚ぶのですから、喉が渇いてるかもしれませんね、お茶の準備も必要ですかね?」
「「「取り敢えず落ち着け」」」
いよいよ明日妻を喚ぶとなったら、ドキドキして落ち着かず、リビングの中をグルグルと歩き回っていると、
「明日失敗しない為にも、今夜はしっかり休むのが良いんじゃないのかな」
「コニーの言う通りですよ。
今日はゆっくりと寝て、明日は体調万全で魔法を使うのが良いと思いますよ」
さあさあ、部屋へ戻って下さいと、アインに背中を押されます。
「明日からは寝室は別になるのだろうから、チャックもシナトラも今夜はしっかり甘えときな」
「いつも甘えてなんて無いし!」
「え~、明日から父ちゃんと一緒に寝れないの?」
コニーに送り出されたチャックとシナトラも、一緒に寝室へ向かいます。
「ねえ、父ちゃん、オクサンが来たら一緒に寝ちゃあダメなの?」
シナトラが不満気な顔で尋ねてきます。
子供とは言え、見た目は立派な成人男性のシナトラと、妻が同じ部屋で寝るのは、やはり抵抗が……。
でも、この一年半以上一緒の部屋で(或いは同じ布団で)寝てたのに、いきなり別々なのも、ちょっと可愛そうかも知れませんね。
それにチャックの魔素の循環も、出会ってから今までで、随分と良くなってきましたけど、完全に良くなったわけでも無いですから。
「うーん、たまには一緒に寝ようね」
「わーい!約束だからね」
喜ぶシナトラに頷きながら、
「勿論チャックも一緒に寝ましょうね」
チャックに声をかけると、
「べ、別にオレは一緒じゃなくても…」
と言いながらも嬉しそうです。
寝室で横になり、3人で話しているうちに、いつの間にか眠りに落ちていました。
翌日、午前中はソワソワしながら過ごし、昼食を食べて一休みした後、いよいよ魔法を発動させる事になりました。
イメージを固める時間もありましたから、バッチリです。
最初は、
『異世界から転生して召喚だか…、転生と言えば、魔界転○ですかね、あれってちょっと怪しい雰囲気もありましたよね』
と言う考えが浮かんだのですけど、魔界じゃないので、却下。
召喚だから、呪文は『エ○イムエッサ○ム』……いや、これも悪魔が来そうですよね。
それなら『エ○エ○アザラ○』…コレも違ーーーう!
いやいやいや、呪文は『リーンカーネーション』でいいんですよ、イメージが大切なんですから。
えーと…思い浮かべるのは、出会った頃ではなく、共に月日を過ごした後のを妻……癌の告知を受ける前の、穏やかな日々を過ごしていた頃の彼女。
色々乗り越えて、人生を重ねてきたあの頃、その妻を喚ぶのです。
あの笑顔、困った顔、拗ねた顔……私を見るあの視線………。
あの頃の妻が、今の私と同じ年齢の姿に入っていたら、どんな感じになったでしょう。
そのイメージを何度も頭の中で繰り返し、思い浮かべました。
亡くなった直後、妻の中から出た魂に語りかけ、呼び寄せるイメージで、喚びます。
ねえ、私との人生は幸せでしたか?
ねえ、もう一度私と人生を歩みませんか?
ねえ、二人でたくさんの家族に囲まれて、過ごしてみませんか?
ねえ、皆と一緒に幸せになりませんか?
ねえ、この世界でちょっと頑張ってみたんですよ。
ねえ、一緒にすごす町を、たくさんの家族を、仲間を、ご近所さんを作ったんですよ。
ねえ、コレからまだまだ変わっていくこの町を、一緒に育てていきませんか?
ねえ、また私を愛してくれませんか?
ねえ、また私に愛させてくれませんか?
ねえ、今度は一緒に…………
「私の元へ来てください、【リーンカーネーション】」
目の前が白く光り、眩しくて目を閉じました。
瞼越しに光が収まったのが分かったので、目を開けると、そこには……………。
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