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三章 町をつくる様です
191 じゃあまたね
しおりを挟む「いい加減にしないか、二人とも。
水色のは無理強いしないと言う話だったろう。
ブルースも若い奴を揶揄うものじゃない」
その場を収めたのはヨルゼル氏です。
流石アインの半身、強いです。
《……そうね、落ち着いた方が良いわよね、貴方も私も》
言いながらエイティンさんはため息をつきます。
《……………すまない。
そうだな、別にこんなジジを無理やり誘うことは無かったんだ。
つい、同種より人族を選ぶってのが頭にきた》
一旦落ち着いた水色の方なのですが……
《またそんなこと言って。
貴方風の方を探していたじゃない》
《なっ!!》
《亜人化したけど、やっぱり人族とは相容れなかった様だから、島でゆっくりして欲しいって言ってたの、私聞いてたわよ》
《なっ! べ、別に! いや、俺、そんな事!》
エイティンさんに暴露されて、とても焦って取り乱しています。
「ほぅ、坊は我の事を心配しておったのか」
《だから違うって!》
人の悪い…いえ、意地の悪い(あれ、あんまり変わらない?)ブルースは、ニヤニヤと追い討ちをかけます。
《ま、まあ、真名を貰ったからって、精々後五十年くらいの事だろ、その後島で老後をのんびりすれば良いだけだからな。
そんな島が有るとだけ覚えておいてくれれば》
「ほほぅ、我の老後の心配までしておるのか」
《だから……あー、もう!》
揶揄いモードのブルースが、更に追い討ちをかけます。
「お前で遊ぶのも良いが、コイツの規格外が面白くての。
寿命も後300年以上有る様だし、我の寿命の方が先に来るだろうな」
《は??300年??!!》
面白かろうと笑うブルース、固まる水色の方、目を見開きこちらを見るエイティンさん、「そこまできましたか」とヨルゼル氏。
そして………
「ねえ、私そこへ行くわ」
マイペースなルシーさん………え?ルシー遠くへ行っちゃうんですか?
「私真名は付いてないし、亜人化して生活してたけど、元の姿に戻ってそっちに行っても良いかなって」
「え、ルシー、何か不満でも有るのですか?」
楽しく日々を過ごしていると思っていたのに。
「不満なんて無いわよ、ご飯は美味しいし、祭りは楽しかったし。
でも前みたいな全力が出せないのが、ちょっと窮屈かなって。
細かい決め事が面倒ってのも有るけど、んー…なんて言うのかな、なんか私違うって感じがするの。
ご飯は美味しいんだけどね」
確かに初めの頃は窮屈そうでしたけど、随分慣れてきていると思っていました。
もしかして、ご飯が美味しかっただけ?
「元々私って、人族に狙われるのが嫌で、なら亜人化しようって無性人を探してたんだもん。
人族の居ない場所があるって言うのなら、そこに行くのもアリなのかなって」
そうでしたね、そう言う始まり方でしたよね。
「それに他にも同種がいるんでしょう?
私、ブルースおじさん以外の王様トカゲって会ったこと無いの。
それにいずれは卵も生みたいって思っているし、私以外にも雌が居るなら、お友達になれるかもしれないし。
だって今の仲間って皆んな雄なのよ?
友達作りたかったのに雌が居ないんだもん」
ああ、すみません、確かに雌……女性は居ませんでしたね。
どうしても妻以外の異性を身近に置きたくないと言いますか、どう扱って良いか分からないと言いますか。
《え?友達になってくれるの?》
「是非お願い!
それにそっちの雄は強そうだから、思いっきり挑めそうだし」
《あら、貴女脳筋タイプなの?》
「のーきん?」
《拳で語り合おうぜ!ってタイプ?》
「よく分からないけど、思いっきりぶん殴っても丈夫そう」
《あははは、大丈夫、もし怪我しても私が回復魔法で治すから、いくらでも挑んで良いよ》
《え、ちょ……何を……》
うわーいと単純に喜ぶルシー、【初友達】と嬉しそうなエイティン、何やら巻き込まれている水色の方。
「ねえ、ブルース、やっぱり元の姿で暴れるのって、スッキリするの?」
小声で私が聞くと、
「そうだな、全力を出せる故、スッキリするのは当然だな」
ブルースも小声で返してきます。
そうなんだ、全力は出せないし、それまでとは違って色々細かい決まり事はあるしで、ストレスが溜まっていたのかも知れませんね………あのルシーですが。
「でもちょっとだけ心配があるんだけど」
急に表情を無くすルシーに、エイティンが焦ります。
《え、何か不安でもあるの?
何かあるなら言って、できる限りのことはするから》
「その島ってご飯美味しいの?」
半月後、ルシーは元の姿に戻り、西へと飛び立って行きました。
勿論、私とヨーコーが腕を振るい、盛大な送別会をしましたよ。
異性としてでは無いにしろ、ルシーを慕っていたヨーコーはショックだった様です。
案外懐いていた白雪も、随分引き止めていました。
二度と会えなくなるわけでも無いし、元々仮の名付けでしたけど、仲間が旅立つのは少し寂しく感じます。
今度会う時には、また美味しい物を沢山食べさせてあげましょう。
じゃあまたね、ルシー。
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