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三章 町をつくる様です
185 冬支度
しおりを挟む9月、冬に入り風も随分冷たくなって来ました。
雪が降る前に色々やる事が有りますね。
去年は、食糧も薪も全て私が準備しました。
町は完成間近で、寒さが厳しくなる前に移住を済ませてもらいましたから、冬支度が間に合わなかったのです。
持ち出ししましたけど、毎年私が住民全ての食糧や薪を支給するわけにはいきません。
なので暫くはお手伝いをして、来年…再来年には各自で準備を済ませる様になればいいですね。
肉に関しては、ブルース達が体を動かす為、近隣の森やダンジョンから獲って来るので、年中安定供給が出来ますけど、肉だけで健全な食生活は出来ません。
保存食と言っても、乾燥させたり、酢漬けにしたりと簡単な事なんですけどね。
各家に冷蔵庫は設置していますけど、それじゃあ足りませんので、食糧庫を各家の台所の地下に作って回る事にしました。
「んー…そうですねぇ……縦横2メートル、深さ1メートル程有ればいいですかねぇ」
「めーとるってのがわかんないんだけど」
「一度作ってみますね」
今回は全ての家を回るので、新しい魔法を考え、それを【複写】して、シナトラとデイビッドに手伝ってもらう事にしました。
土魔法が得意じゃなくても、固有の魔法としてなら複写できるのでは無いかとアインが言うので、試してみる事にしたのです。
複写する為には、まず私がしっかりとしたイメージで魔法を作らなければいけません。
そうですねぇ…普通地下保管庫を作るなら、穴を掘ってセメントで固めるのでしょうけど、セメントなんて無いですから…。
こう…地面に穴を開けて、それを広げながら土を押し固めていくと、掘った土も出ないですし、崩れることも無くなるのでは?
ほら、土って固まると岩になるじゃ無いですか。
だからきっといけるはずです。
私は地面に手を当てて、魔力を流します。
「【保管庫】」
魔力が行き渡り、掌の下に穴が空いたと思ったら、徐々に広がり土が圧縮されて、想像通りのスペースが出来ました。
「こんな感じでやってみて下さい」
「え……そんな簡単に言わないで欲しい」
「出来るかなぁ、一回やってみるよ」
私の言葉に不安顔のデイビッドと、なんとかなるでしょうと言う表情のシナトラ。
まずはシナトラが、私の作った穴をじっくり見た後、地面に手を付け「保管庫」と唱えました。
私の時より時間はかかりましたけど、四角い穴が開きました。
壁を触ってみても、ちゃんと押し固められていて問題ない様です。
「出来たけど、魔力いっぱい使うね。
僕一日に2個か3個くらいしか出来ないと思うよ」
「そうなんですか?」
「僕の魔力量は普通なんだからね、魔力の多い父ちゃんと一緒にしないでよ」
私には分からない感覚なのですけど、魔力を沢山使うと疲れるようですね。
「多分土魔法が得意な人なら、そんなに魔力馬使わないんだと思う。
潜在的に誰でも基本の属性は使える筈だから、得意じゃ無くても発動できてるけど、使う魔力も増えるし、普段使わない属性だから、何度も使えないし疲れるんだと思う」
成る程、シナトラの得意魔法馬【植物魔法】ですからね。
普段使わない属性で、得意な属性じゃないから、魔力を沢山消費するのですね。
「じゃあ俺もやってみるよ………【保管庫】」
デイビッドも無事成功しました。
かかった時間はシナトラより少し早かったかな?
「うん、俺もコレは一日に最高で5回が限度かな」
シナトラより魔力量が多いですから、速さも少し早いですし、回数も多いのでしょうか。
「まあ、一日で町中の全ての家を回るわけではないですし、無理のない程度にやっていきましょう」
きっと私一人で出来る事ですし、早いかもしれませんけど、それじゃあダメですからね。
手分けして保管庫を作っていきます。
「じゃあ始めましょうか。
何かあったら話しかけて下さいね」
離れて作業するので、ついでに念話のスキルも複写しました。
勿論チャックにもですよ。
複写なので、少し精度は落ちますけど、東の山の向こうのダイズスキーくらいまでの距離なら、問題なく使えるそうです。
そのチャックですけど、住民の翼人の亜人の方々と、少し遠い森へ木の実の採取に行ってもらっています。
町の近辺は取り尽くしていますから、遠出をお願いしたのです。
アインとコニーは町の雑事をこなしてくれています。
ブルースには、炭作りをお願いしました。
新たに住民となった方の中に、炭作りの経験者がいらしたので、チャレンジです。
薪は暖を取るのに良いですけど、炭の方が一定の温度でじっくり暖まる様な……気のせいですかねぇ。
料理にも使えますし、有っても損は無いですからね。
そんなこんなの今年の冬支度です。
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