【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
184 / 206
三章 町をつくる様です

184 秋の祭りも

しおりを挟む

8月の最終日、秋祭りを開催中のリーガルリリーです。

今回は、ポチさんが遊びに来ています。
来たと言っても私の転移魔法での送り迎えなんですけど。

どうも以前の感覚で、平成生まれの若者が苦手で、始めの頃は距離を置いていましたけど、大豆製品を色々取り引きさせていただいているうちに慣れたと言いますか、一年以上交流が有れば為人(ひととなり)も分かってきて、仲良くなれますよね。

秋は技術の祭りですから、色んな作品を見ていただき、交易に繋がらないかな…と言う下心が無いとは言えませんが。

「凄い人出だね」
「ええ、夏の終わりに開催した祭りの評判を聞きつけた様で、行商人方々が増えましたからね」

夏祭りの開催の後、秋祭りもやると言うと、その場で
「では秋の祭りも引き続き……」
と皆さん仰ってくださり、更にその方々に噂を聞いた方が、それなら自分も出店をと申し出が相次ぎ、とてもら賑やかになりました。

また、秋祭りでは参加者として出品する事のない、農業従事者の方達が、自作の野菜を使った料理の屋台や、朝取れ野菜の即売などをしているので、更に賑やかです。

「うちの領地でも収穫祭やるけど、ここまで繁盛してないよ」
「ありがたい事に周囲の国からも、遊びに来て下さっているようです」

ええ、何故か行商人の出店に紛れて、マークスさんが、

【腕相撲で勝てたら豪華賞品プレゼント】

などと言う屋台を出してますし(いつの間に許可を取った?)コニーの城に滞在した時にお世話になったメイドさんの集団が、ファッションショーに鈴なりでしたし、きっと私の気付かない所にも、見知った方が居ると思いますよ。


【贈答品選手権】も【必要品選手権】も、即席の会場に展示されています。
入り口で投票用紙を手渡され、作品を見て周った後、出口で投票箱に入れると言う形式です。

識字率の低い世界ですので、投票する作品を記入する方法は無理なので、スタンプ方式にしました。

展示してある作品ごとにスタンプを置き、気に入った作品のスタンプを押す様にしています。

一つ選ぶのも悩むので、気に入った作品があれば幾つでもスタンプ可能にしています。
作品には、製作者の名前もタイトルも書いていません。
誰それの作品と言うのは無しにして、作品だけで判断してもらいたいので、無表示です。

そんな会場をポチさんと一緒に回りました。

【贈答品選手権】の会場は、鳥や花をかたどったガラスの置物や、とんぼ玉が付いた飾り紐、様々な形の小物入れ、透彫の入った櫛、お守りを彫刻した小さなペンダントヘッド、綺麗に染められたショール、鞘に宝石の付いている小型のナイフ?

「あー、あれは子供が一番初めに貰うナイフだと思うよ。
中のナイフは刃を潰していて、お守りっつうか、縁起物?」
ポチさんも5歳になった時に貰ったそうです。
刃を潰しているから怪我をする事なく、刃物の使い方を学ぶための物だそうです。

付いている宝石は、女の子用なら料理が上達する様にと、火をイメージする赤い石か、水をイメージする青い石を付ける事が多いそうです。
男の子用なら、何者にも染まらぬ意思を持てる様に黒い石、怪我をしても早く治る様に薬草をイメージした緑の石など、相手によって飾りが変わる様です。

「うちの家は農業に携わる家だから、きょうだい皆、茶色い石の付いた物だったね」
「そうなんですか」
私に子供ができたら、どんな石が付いたナイフを作りましょう。
先の楽しみが増えましたね。

【必要品選手権】の会場では、ワンポイント刺繍の入った肌着や手ぬぐい、木彫りのペアカップ、パッチワークの…ランチョマット?それとも壁飾りかな?
蔦で編んだ籠、うちにもある畳もどき、色染めされた革紐、良い香りの石鹸、調味料を入れるに丁度いい大きさの小さな壺、三段カラーボックス擬き、などなど。

多種多様で、展示品を見ていると言うより、ホームセンターを見て回っている感覚になりますね。

贈答品も必要品も見ていて楽しかったです。
甲乙つけ難く、私は全ての作品のスタンプを押しましたよ。

ポチさんは、予想通りガラス製品が気に入った様で、後日取り引きの申し出がありました。
今年は間に合わなかったけど、来年にはシルク擬きが量産できるでしょうから、来年も呼ばないといけませんね。

昼は屋台で色々買い食いしましたけど、夜はヨーコーの【ごはん屋】で食べる事にしました。

「おー、馴染みな食べ物だらけだ!
大丈夫な分だけでいいからレシピ プリーズ!」
「全然大丈夫ですよ。
そう言えばポチさんも、クラーラル商会と取り引きしているのですよね?
なら色んなソースが手に入るから、料理も増えたのでは?」
私が聞くと、「あははは」と乾いた笑いを漏らすポチさん。

「だから、料理は出来ないんだって…。
まあ、ケチャップライスとか、パスタの麺を使った焼きそばとかは作ったよ?
でも美味しく無いんだって~」
突っ伏してテーブルに額を付けるポチさんの姿を見ると、つくづく料理スキルが有って良かったなと思いました。


祭りも終わりの時間となり、住民が広場に集まります。

「皆集まって何かするの?」
集まった住民は幾つかのグループに分かれています。
噴水が一際高く上がったのを合図に、音楽が流れ出し、グループ毎に円になり、踊り始めます。

「炭坑節~⁈」
「ポチさんもご存知でしたら一緒に踊りましょう」
さあさあと手を引き、近くの円に混じります。

「いや~、知ってるけどさ、何で異世界で♪月が~出た出た~ なんてやってんの、俺?」
戸惑いながらも笑顔のポチさん、なかなか器用な表情筋ですね。

スローテンポの曲が終わり、周りで見ていた子供たちも加わり円が増えて広がります。

「え?まだなんか有るの?」
首を傾げるポチさんの手を、両隣の人が取ります。
「え?え?何?」
そして始まるマイムマイム。

「あはははははははは!!」

大笑いをしながらマイムマイムするポチさん、喜んでいただいて光栄ですね。
コレの為に連れて来たと言っても過言では無いですから。
大笑いするポチさん、踊る住民の方々も、輝く笑顔です。
勿論私もニコニコですよ。

「いや~、炭坑節もだけど、マイムマイムを踊らされるとは思わなかったよ。
てか、何ここの住民、めちゃテンション高くマイムマイム踊ってるじゃん」
気持ちは分からんでも無いけどと、満足気なポチさんを、転移魔法でダイズスキーまで送り届けました。

「いや~、マジ楽しかったわ。
また呼んでね」
「楽しかったなら何よりです。
また是非来て下さいね。
レシピは後日転送します」
私が言うと、ポチさんは額をペシリと叩き、
「マイムマイムのインパクトでそっち忘れてたよ」
と苦笑しています。

「うちの領地でも祭りで踊ろうかな」
「あれは皆が纏まりますし、オススメですよ」
「確かに一つになれるね…ってなんだそんなにマイムマイム推しなの⁉︎」
「ははははは」

楽しいですよね?マイムマイム。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

処理中です...