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三章 町をつくる様です
184 秋の祭りも
しおりを挟む8月の最終日、秋祭りを開催中のリーガルリリーです。
今回は、ポチさんが遊びに来ています。
来たと言っても私の転移魔法での送り迎えなんですけど。
どうも以前の感覚で、平成生まれの若者が苦手で、始めの頃は距離を置いていましたけど、大豆製品を色々取り引きさせていただいているうちに慣れたと言いますか、一年以上交流が有れば為人(ひととなり)も分かってきて、仲良くなれますよね。
秋は技術の祭りですから、色んな作品を見ていただき、交易に繋がらないかな…と言う下心が無いとは言えませんが。
「凄い人出だね」
「ええ、夏の終わりに開催した祭りの評判を聞きつけた様で、行商人方々が増えましたからね」
夏祭りの開催の後、秋祭りもやると言うと、その場で
「では秋の祭りも引き続き……」
と皆さん仰ってくださり、更にその方々に噂を聞いた方が、それなら自分も出店をと申し出が相次ぎ、とてもら賑やかになりました。
また、秋祭りでは参加者として出品する事のない、農業従事者の方達が、自作の野菜を使った料理の屋台や、朝取れ野菜の即売などをしているので、更に賑やかです。
「うちの領地でも収穫祭やるけど、ここまで繁盛してないよ」
「ありがたい事に周囲の国からも、遊びに来て下さっているようです」
ええ、何故か行商人の出店に紛れて、マークスさんが、
【腕相撲で勝てたら豪華賞品プレゼント】
などと言う屋台を出してますし(いつの間に許可を取った?)コニーの城に滞在した時にお世話になったメイドさんの集団が、ファッションショーに鈴なりでしたし、きっと私の気付かない所にも、見知った方が居ると思いますよ。
【贈答品選手権】も【必要品選手権】も、即席の会場に展示されています。
入り口で投票用紙を手渡され、作品を見て周った後、出口で投票箱に入れると言う形式です。
識字率の低い世界ですので、投票する作品を記入する方法は無理なので、スタンプ方式にしました。
展示してある作品ごとにスタンプを置き、気に入った作品のスタンプを押す様にしています。
一つ選ぶのも悩むので、気に入った作品があれば幾つでもスタンプ可能にしています。
作品には、製作者の名前もタイトルも書いていません。
誰それの作品と言うのは無しにして、作品だけで判断してもらいたいので、無表示です。
そんな会場をポチさんと一緒に回りました。
【贈答品選手権】の会場は、鳥や花をかたどったガラスの置物や、とんぼ玉が付いた飾り紐、様々な形の小物入れ、透彫の入った櫛、お守りを彫刻した小さなペンダントヘッド、綺麗に染められたショール、鞘に宝石の付いている小型のナイフ?
「あー、あれは子供が一番初めに貰うナイフだと思うよ。
中のナイフは刃を潰していて、お守りっつうか、縁起物?」
ポチさんも5歳になった時に貰ったそうです。
刃を潰しているから怪我をする事なく、刃物の使い方を学ぶための物だそうです。
付いている宝石は、女の子用なら料理が上達する様にと、火をイメージする赤い石か、水をイメージする青い石を付ける事が多いそうです。
男の子用なら、何者にも染まらぬ意思を持てる様に黒い石、怪我をしても早く治る様に薬草をイメージした緑の石など、相手によって飾りが変わる様です。
「うちの家は農業に携わる家だから、きょうだい皆、茶色い石の付いた物だったね」
「そうなんですか」
私に子供ができたら、どんな石が付いたナイフを作りましょう。
先の楽しみが増えましたね。
【必要品選手権】の会場では、ワンポイント刺繍の入った肌着や手ぬぐい、木彫りのペアカップ、パッチワークの…ランチョマット?それとも壁飾りかな?
蔦で編んだ籠、うちにもある畳もどき、色染めされた革紐、良い香りの石鹸、調味料を入れるに丁度いい大きさの小さな壺、三段カラーボックス擬き、などなど。
多種多様で、展示品を見ていると言うより、ホームセンターを見て回っている感覚になりますね。
贈答品も必要品も見ていて楽しかったです。
甲乙つけ難く、私は全ての作品のスタンプを押しましたよ。
ポチさんは、予想通りガラス製品が気に入った様で、後日取り引きの申し出がありました。
今年は間に合わなかったけど、来年にはシルク擬きが量産できるでしょうから、来年も呼ばないといけませんね。
昼は屋台で色々買い食いしましたけど、夜はヨーコーの【ごはん屋】で食べる事にしました。
「おー、馴染みな食べ物だらけだ!
大丈夫な分だけでいいからレシピ プリーズ!」
「全然大丈夫ですよ。
そう言えばポチさんも、クラーラル商会と取り引きしているのですよね?
なら色んなソースが手に入るから、料理も増えたのでは?」
私が聞くと、「あははは」と乾いた笑いを漏らすポチさん。
「だから、料理は出来ないんだって…。
まあ、ケチャップライスとか、パスタの麺を使った焼きそばとかは作ったよ?
でも美味しく無いんだって~」
突っ伏してテーブルに額を付けるポチさんの姿を見ると、つくづく料理スキルが有って良かったなと思いました。
祭りも終わりの時間となり、住民が広場に集まります。
「皆集まって何かするの?」
集まった住民は幾つかのグループに分かれています。
噴水が一際高く上がったのを合図に、音楽が流れ出し、グループ毎に円になり、踊り始めます。
「炭坑節~⁈」
「ポチさんもご存知でしたら一緒に踊りましょう」
さあさあと手を引き、近くの円に混じります。
「いや~、知ってるけどさ、何で異世界で♪月が~出た出た~ なんてやってんの、俺?」
戸惑いながらも笑顔のポチさん、なかなか器用な表情筋ですね。
スローテンポの曲が終わり、周りで見ていた子供たちも加わり円が増えて広がります。
「え?まだなんか有るの?」
首を傾げるポチさんの手を、両隣の人が取ります。
「え?え?何?」
そして始まるマイムマイム。
「あはははははははは!!」
大笑いをしながらマイムマイムするポチさん、喜んでいただいて光栄ですね。
コレの為に連れて来たと言っても過言では無いですから。
大笑いするポチさん、踊る住民の方々も、輝く笑顔です。
勿論私もニコニコですよ。
「いや~、炭坑節もだけど、マイムマイムを踊らされるとは思わなかったよ。
てか、何ここの住民、めちゃテンション高くマイムマイム踊ってるじゃん」
気持ちは分からんでも無いけどと、満足気なポチさんを、転移魔法でダイズスキーまで送り届けました。
「いや~、マジ楽しかったわ。
また呼んでね」
「楽しかったなら何よりです。
また是非来て下さいね。
レシピは後日転送します」
私が言うと、ポチさんは額をペシリと叩き、
「マイムマイムのインパクトでそっち忘れてたよ」
と苦笑しています。
「うちの領地でも祭りで踊ろうかな」
「あれは皆が纏まりますし、オススメですよ」
「確かに一つになれるね…ってなんだそんなにマイムマイム推しなの⁉︎」
「ははははは」
楽しいですよね?マイムマイム。
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