【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

183 誰かさんが見つけた

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下夏も過ぎ、秋が深まる頃、つまり収穫が終わる頃、町に住民が増えました。

ガラス作りや細工加工、鍛治に大工にお針子さん、仕事はたくさん有りますからね。
それに住民が増えれば食糧も必要になりますので、農業従事者も大歓迎なのです。

収穫が終わった近辺の農家の方が、出稼ぎに来たいとの申し出もあります。
期間限定でも人手があるのはありがたい事です。

その為にはまず、面接なのですが…。
ロスフォータでは少ないと言えども、やはり人種間のトラブルや、町の噂だけ聞いて『楽して稼げる』なんて勘違いしている方も居ますからね。
移住してからトラブルがあるより、最初にキチンとしておく方が良いですから、面倒でも一人一人の面談は止める気はありません。

そして秋祭の準備も順調です。

プレゼント用の加工品No. 1な加工者を決める【贈答品選手権】、自分用に使うならコレだ!を決める【必要品選手権】、この二つは選ばれると注文が増えるでしょうね。
優勝しなくても、新しい技術や綺麗な物などを出品すれば、審査をする住民の目に留まり、販売数が増えるでしょうし、行商人の目に留まれば、他国でも自分の作った物が売れる事になります。
是非とも皆さん頑張って欲しいですね。

あとは追加でファッションショーも企画中です。
新しい生地、この大陸では殆どお目にかからないボタン付きの服やデザインの発表会ですね。

そして締めは、住民からのリクエストで、炭坑節とマイムマイムです。
上夏の祭りの後も、広場でマイムマイムを踊っている人はしょっちゅう見かけました。
グループで、どちらの方が早いマイムマイムを踊れるか競ったりしていた方々もいらっしゃいましたねぇ……。
まあ、楽しければそれで良いんです。



そんなある日、執務室でアインとコニーの二人と、出稼ぎ希望者の割り振りを考えていたら、チャックとシナトラが私を呼びに来ました。

「父ちゃん!ちょっと来て来て!
絶対に見せたいから来て!」
満面の笑顔で机にいた私の腕をグイグイ引っ張るシナトラ。

「ちょっと、ジョニーは仕事中なんだから、無理かもしれないって言ったよね。
明日でも大丈夫って、ブルースも言ってたんだから、先ずは話さないと」
口調はいつも通りのチャックですけど、目がワクワクしてます。

「何があったのですか?」
「あのね、花なの、海の花なの!」
アインの問いかけにシナトラは答えますけど…海の花?
海に花が咲くの?
さすが異世界ですね。

「ああ、水花か」
水花?コニーも心当たりが有るようです。

「今日四人でダンジョンに遊び……鍛錬に行こうと思ってたんだけど、その途中で見つけたんだ。
…その……出来ればアンタにも見せたくて…」

どうやら珍しい物を見つけて、それを私に見せたくて呼びに来たようです。

「水花ですか、それなら私も見たいですね」
「じゃ皆で行こうよ」
アインとコニーも興味が有るようで、皆で行く事になりました。


「なんだ、皆で来たのか」
シナトラとチャックに案内された場所は、風に揺れる白い花の群生地でした。
甘い…プリンの様な香りのする、キラキラ光る花、かすみ草を大きくした様な花です。

「珍しい物ですからね。
見れるのなら見ておこうと思いまして」
「んー、懐かしい。
30年くらい前に見たのが最後かな」

少し離れた場所で待っていたブルースとデイビッドの元へ歩いて行くアインとコニー。

「珍しい花なのですか?」
私が聞くと、
「そうだな、大体50年に一度の秋にしか花を付けぬから、寿命の短い種族なら、一度も目にする事はないだろう」
ブルースの答えに驚きました。

50年に一度しか花が咲かなくて、絶滅しないのでしょうか。

「コレは根で増える植物です。
普通の植物の様に種子で増えるわけでは無い、珍しい植物なのですよ」
「見ると良い事があるとか聞くよね」
「珍しい物を見られるのが良い事のうちだろう」

珍しい物を見つけると幸せになれるって、四葉のクローバーみたいな感じなのでしょうか。
確かに50年に一度しか咲かない花をみかけたら、良い事の一つでもおきそうな気がしますよね。

「ねえねえ、もう父ちゃん連れてっていい?」
ソワソワしたシナトラが聞いてきます。
ここが目的地なのでは?
まだ他に行くところが有るのでしょうか?

「ああそうだな、デイビッド頼むぞ」
ブルースがデイビッドの肩を叩くと、彼は私の後ろに周り込んできました。

「んじゃあちょっと抱えて飛ぶから、力抜いてね」
「え?」
状況が掴めぬまま、デイビッドに背中から抱き抱えられ、私は空へ飛び上がりました。

「ほら、下見てみなよ」
言われて花畑に視線を落とすと、
「うわ~~~!」
下で見た時は、キラキラ光る白い花だったのに、上から見ると青く煌めいています。
まるで海の様に、揺れる花弁は波の様に。

「どうやらあの花って実は透明なんだって。
そんで光の当たり方で空から見ると青くなる…とかブルースさんが言ってた」
透明な物が集まると白く見えるって、テグスや白熊の毛みたいな感覚ですかね。
光の反射で青く見えるのは確かに【水】と呼んで良いのではないでしょうか。

「綺麗ですねぇ…」
「これ、チャックが最初に見つけて、アンタにも見せたいって。
だから抱えて飛んでくれってお願いされたんだ」
「チャックがですか……」
普段素っ気ない素振りですし、シナトラみたいにわかりやすく口にする事は少ないですけど、優しいですよね。
私って愛されてますよねぇ。

十分に堪能して下に降りた後、デイビッドは請われてコニーも抱えて飛んで、ついでとばかりアインも空からの景色を眺める事になりました。

アインを後ろから抱きしめて飛ぶデイビッド……なんとなく微妙な気分になりました。






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