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三章 町をつくる様です
178 忙しい上夏の日々
しおりを挟む支店を出したいと申し出のあった、もう一つの【オファド商会】との面談もスムーズに終わりました。
オファド商会は大森林の向こうの西側が本拠地で、西側では隅々まで広まったので、そろそろ別の区域に…と、海路でこちらに来られたそうです。
「過去には、大陸全てを統一しようとした国もあった様ですけど、現実問題として、国を広げ過ぎても管理は難しいです。
ましてや大森林を挟んだこちら側を手に入れたとしても、陸続きとはいえ、陸路だと一月以上かかる大森林を挟むこの地域に進出するメリットは少ないですからね。
私達の住む…こちらで言う西側は、今三つの大国が治めていまして、多少の小競り合いは有っても、至って平和です。
なのでこうして、他の地域との交流も兼ねて、色んな商会が各地を訪れているのです。
こちらの町の噂を港町で耳にしまして訪れたのですけど、新しい町とは思えない程整っていますし、治安もとても良いですし、何より町の方々の表情が明るい。
この町はまだまだ発展すると思います」
商会から派遣された、カラマさんが、ザックリと西側の現状と、この町に支店を出したい理由を告げてきました。
取り扱い品は、聞いてた様に装飾品と衣料品です。
指輪やネックレス、ブローチなどから、櫛や髪留め、コサージュ、レースのリボンなど、こちらには無い物も多く、主に女性の喜びそうな物が沢山あります。
衣料品は、貫頭衣にズボンや作務衣が基本のこちら側と違い、ポロシャツやワイシャツ、ブラウスみたいな、私的には見慣れた普段着という感じですね。
ちょっとがっかりしたのが、ボタン付きの服が普通にあった事です。
この地域で一番乗りでボタン付きの服を販売する計画が崩れました。
思いついたら即行動しないと、チャンスは逃げちゃいますね。
オファド商会との取り引きの詳細も、クラーラル商会と併せてアインにお任せしました。
上夏の5月上旬、新居が出来たのでお引越しをしました。
城…とは言いませんけど、広くて部屋数が多いですね…。
建物はロの字になっていて、中庭には、移動して来た家庭菜園と、小さな池が有ります。
家族の個室と居間の窓には窓ガラスが嵌められましたけど、さすがに全ての部屋には行き届かなかったです。
まあ、おいおいガラス窓と入れ替えていけば良いですよね。
私の部屋は、床にコルクを敷き詰め、その上にゴザを敷き、なんちゃって和室にしました。
コルクを敷いたので、寝転んでも体が痛くなりません。
やはり床にゴロゴロ出来るのは良いですね。
部屋にはベッドを置いていますけど、寝るのは寝室で、チャックやシナトラと一緒に寝ますから、使う事は無いでしょうけど、一応ね。
新居が出来たので、町の中央広場の整地と、噴水の設置を急ぎ行いました。
なぜ急ぐかって、月末には第一回目のお祭りを予定していますから、頑張りました。
私が整地をした後、シナトラが植物魔法で植えた草木を成長させ、力自慢のブルースにも遊具の設置などを手伝ってもらい、町の人々の協力もあり、下旬までには広場は完成しました。
広場づくりと同時に、商業ギルドでは、行商人達による出店や屋台の受け付けをお願いし、冒険者ギルドへは、治安維持のための見回りの依頼を出しました。
チャックとコニーとデイビッドには、祭りの企画、“大きな野菜、おもしろ野菜発表会” “野菜料理対決” “チーム対抗狩り勝負” “チーム対抗伝言ゲーム” “大声選手権” の受け付けをお願いしています。
ちなみに、ヨーコーは野菜料理対決に、ルシーは町で親しくなった冒険者に混じって、狩り勝負に出場するそうです。
私は総合監督兼踊りの指導、アインは全ての裏方に携わっています。
…アインがハイスペック過ぎて、逆に何をやっているのか分かりません………。
一度アイン本人に、色々任せて良いのか聞いてみたところ、
「色々な事の大元はジョニーが判断しなければいけません。
貴方がこの地の代表者なのですから。
だからと言って一人の考えで物事を決定するのは、よく無い事だと思います。
話し合い、他者の意見も取り入れて、最善の道を選ぶ事が大切だと思いますよ。
そして決まった事柄は、それを得意とする者に任せる事も大切です。
全てを一人で行うのは手っ取り早いでしょうけど、仕事を人に回すのも、上に立つ者には必要な事です。
適材適所とも言いますし、仕事を任せる事により、貴方には他の事に使う時間ができます。
任された方はスキルアップにも繋がります。
また任せる事により、信頼関係も生まれる事でしょう。
一人で抱え込まず、周りを信じて、周りの手を借りる事は、貴方の成長にも繋がります。
ですから、私だけではなく、他の家族の手も借りる事を考えて下さいね」
と言われました。
なので今回、家族に色々と仕事を割り振る事にしたのです。
その時、大人なブルースやデイビッドは普通に了承してくれたのですけど、チャックは「面倒だ」と言いながら、顔は笑っていましたし、シナトラは大喜びでした。
今まで私は、
『私が名付けて家族にしたのだから、責任を持って全てを自分の手で行い、家族を守らなければ』
と思っていた部分が有りましたけど、これからは家族に頼る事もしようと心に決めました。
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