【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

177 クラーラル商会の取り扱い品

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アルモンドさんは、お茶に口を付け交渉を始めました。

「先程も申し上げた様に、こちらの町に支店を置きたいと思いましたのは、これからの発展を見越したのとは別に、もうひとつ理由があるのです」
アルモンドさんに視線を向けられたカシウさんが、カバンから薄い冊子を取り出し、私の前に差し出します。

「こちらは貴方の考案されたものですよね?」
見てみると、それはダイズスキーで教えたレシピをまとめた物です。

「ミソやショーユは、別の国で製造している所がありまして、現在そちらを取り扱っておりますけど、ダイズスキーのミソとは種類が異なりますので、取り引きを…と訪れた時に、こちらを教えていただいたのです」

やはり他所でも、味噌は味噌汁くらいにしか使っていなく、醤油も掛けるだけだったそうで、まさか味噌や醤油が一部でしか出回っていない大陸で、色々なメニューが開発されているとは思っていなかったそうです。

それで詳しく聞き、ここへ辿り着いたとか。
別に隠しているわけでは無いですから、私が渡したレシピだと公表しても問題はありません。

大豆の使い方に関しては、ポチさんの右に出る者はいない様でら数々の大豆製品に取り引きを申し出て、支店も置いたそうです。
因みにその支店はアルモンドさん達のご兄弟のベーゼルさんが働いているとか。

それとは別に、東の窓口のリアンスで、煮干しの件も聞いたそうで、これは是非とも取り引きをしなければ…と、この町へやって来たそうです。

取り引き自体は問題ないと思いますけど、支店を開くとして、どんな品を取り扱っているかが気になりますね。

「私どもがこちらで販売するとすれば、まずは調味料ですかね」
アルモンドさんの言葉に合わせて、カシウさんがカバンから小さな壺を取り出して机に並べます。

「こちらから、黒ソース、赤ソース、貝ソース、マヨネーズです」

壺と一緒に出された小皿に中身を少しずつ出して、味見を促されました。
ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、そしてそのままのマヨネーズでした。
それぞれ別の国のソースだそうです。
世界は違っても美味しいものに行き着く方はいるのですね。

ただ、元の世界と違って、鮮度を保つ事が難しいので、一回で使い切る量でしか販売していないとか。
マヨネーズは特に足が早いと聞きますから、キチンと考えていらっしゃる事に好感が持てます。


「後はこちらが私どもの扱うミソです」
「おお、麦味噌ですか!」
見た目や色から、どうやら私の馴染んだ麦味噌の様です。
「見ただけで分かるのですか?
ジョニー様の知識には驚かされます」

その後も、携帯食としてのビーフジャーキーやサラミ、この辺りでは見かけないスパイスやハーブなどをカバンから出すカシウさん。
どうやらマジックバッグの様ですね。
そしてハーブと出されたうちの一つに紫蘇の葉を見つけて、少しばかりテンションが上がってしまいました。

「(ティちゃん、梅干しの漬け方わかる?)」

〈んー…OK大丈夫、子供の頃お婆ちゃんが漬けてるの近くで見た事あるから作れるよ 〉

「(よっしゃー!)」

あ、話し合いの最中なのに、脳内会話をしてしまいました。
思わずニヤけてしまった私に気付いたショタコフスキーさんが首を傾げています。
向かいに座っているアルモンドさんは、

「その表情から察しますに、これらを使った新しいメニューを思いつかれたのでしょうか?」
商人の観察眼なのでしょうか、言い当てられました。

「そうですね、色々と作りたいと思うものが思い浮かびましたね」
「それは重畳、是非とも色々作っていただき、美味しいものを世に広げて頂きたいですね」
「美味しい物は世界を平和にしますよ」
スターチオさんが相槌を打ちます。
「是非とも試食には呼んでいただき……痛い!」
カシウさんの拳が、スターチオさんの脇腹に打ち込まれましたけど、大丈夫でしょうか……。

「その辺りはまたいずれとし致しまして、話を続けましょう」
続いて出されたのは飲み物関係です。
紅茶が数種類、緑茶、コーヒー、ワイン、ウイスキー。
日本酒と焼酎は無いみたいですねぇ。
日本は無いから米酒とでも言うのでしょうけど、取り敢えず飲み慣れた二つは無いようです。
コーヒー紅茶は有るけど、ココアも無いですね。
寒い日はあれで温まるのが好きなんですけど。

「とまあ、一応この辺りが商会で人気のラインナップなのですけど、食べる物に関しては、ほぼ世界中を網羅していますので、珍品や希少品も取り寄せ可能です。
我が商会の支店を開く許可をご考慮下さい」

すぐさま許可を与えても良いかと思いましたけど、一旦保留にしてお開きとなりました。



「別にそこで決めて良かったんじゃないの?
このお茶いい香りだね」
持ち帰った紅茶を飲みながらコニーが言います。

「うむ、美味いものが増えるのは歓迎だな」
サラミを口にしながらブルースも頷きます。

「干し肉なのに不味く無い」
ジャーキーを齧りながらシナトラ。

「見たことのないハーブだね」
紫蘇の匂いを嗅ぎながらチャックが言います。

「即決しないのは良かったと思いますよ」
「ですよね、取り引きは最初が肝心ですから」
魅力のある品が多いからと、その場で許可を与えると足元を見られそうと言いますか、最初の取り引きは駆け引きが必要ですよね、色々と有利に進めるには。

ただ、取り引きの細かい事や、支店を開くにあたっての取り決めなどは私には分かりませんので、アインにお任せするので、一旦保留としたと言うのもあるのですけど。

「では後の交渉はお願いします」
頭を下げるとアインは「お任せを」と請け負ってくれましたので、この件は私の手を離れる事となりました。

その日は眠りにつくまで、食べたい物が頭の中を飛び交っていました。







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