【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

174 ダンジョンから帰宅

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ダンジョンから出たら外は夕暮れ。
付近で一泊し、翌日に町に戻る予定でしたけど、面倒なので移転でとっとと戻りました。

「あー……戻り次第ギルドへ報告する様に言われてんだけど、今から行ったら何言われるか…」

確かに、行って帰るだけならその日のうちに町へ戻れるでしょうけど、中まで私達を案内してこんな時間に戻れる訳ないですよね。
仕事をサボったと思われるかもしれません。

「ギルド長達にでしたら、移転の事伝えて良いですよ」
「秘密じゃ無かったのか?」
「まあ、大っぴらに言うのはあまり良く無いですけど、『絶対に誰にも知られたく無い』って事でも無いんですよね」
 
同じ町で過ごしていれば、その内バレるでしょうし、こんな便利な魔法を使わずにいるなんて出来ませんからね。

「北や東の向こう側にさえ知られなければいいのでは無いか?」

ブルースが言うには、移転魔法は珍しいと言うだけで、使える人はいないわけでは無いので、厳重に隠す必要は無いであろうと。
珍しい魔法が使えると、権力者に利用されたり、いざこざに巻き込まれる事もあるけど、ロスフォータ内において、権力者と言えば東、西、北、一応中央の5人なので、気にする事ないそうです。

「なら、ギルド長に移転で戻ったって伝えるからな」
「大丈夫ですよ」
「権利の譲渡の契約とかは明日ギルドに来てくれ」
「わかりました」

じゃあな、とラルーセンさんはギルドへ向かいました。
「なんか暴れ足りないな、夜狩りへ行って来る」
「あ、僕も行く!」
ブルースとシナトラは夜の森へ狩りへと出かけるそうです。
元気ですね。

「じゃあ俺は家に帰るよ」
デイビッドは新妻の待つ家へ。
チャックと二人で家へ戻る事に。

「………ねえ、移転ってさ、アンタが行った事のある場所しか行けないの?」
隣を歩くチャックが尋ねてきます。
「そうらしいですよ。
行った事のある場所で、頭の中に情景を浮かべる事の出来る場所…だそうです」
私の答えに、暫く沈黙した後、チャックが言いました。

「あのさ、アンタと初めて出会った場所、覚えてる?
あそこへ行きたいんだけど」
「大丈夫だと思いますけど……まさかチャック、私を捨てる気ですか⁉︎」

一番最初に出会った場所、あのキノコしか食べる物の無かった森の中。
そばに来てくれて、温めてくれて、食べ物を運んでくれた紫色の小鳥……。
初めて出会った場所へ戻って、違う道を進もうとでも言うのですか⁈

「捨てるって何だよ、アンタがオレを拾ったんでしょ?
そんな話じゃ無くて、爺ちゃんの墓参りに行きたいかなって。 

あーびっくりした!あーびっくりした!!

今日採取した薬草の実の中に、チャックのお爺さんの好物だった物が有るそうで、それをお供えに行きたいそうです。

「わかりました、では明日ギルドの用事が終わったら行きましょう」
「え?アンタも来るの?」
チャックが驚いた顔をして私を見上げます。

「え?私が行かなくて、帰りはどうするんですか?」
「そりゃあ……飛んで帰るよ」
「遠いじゃ無いですか!」
「2、3日で戻れるよ」
「移転なら一瞬ですよ」

地上を行くよりは早いでしょうけど、ブルースが本気で飛べば半日かからないかも知れませんけど、チャックは休憩無しで飛び続けるのは無理ですし、墓参りに行った先で、チャックの事を群れから追い出した奴らに鉢合ったらどうするんですか。
チャックが傷つくじゃ無いですか。

チャックを追い出した群れの近くなんて、一人で行かせられる訳ないです。

「………何考えてるんだか。
まあ、一緒でもいいよ」
私の考えている事が分かるのか、呆れ顔ですけど、同行して良いと言質を取りました。
明日は昼から二人でお出かけです。



家へ戻って夕食を食べて、白雪を構って癒されて、チャックに白雪の寝かしつけを頼み、私はアインとコニーに今日の出来事の報告です。

「…………って訳で、これが人喰い花です」

凍った人喰い花を、部屋では狭いので、夜の庭に出します。

「へー、これが人喰い花なんだ」
「私も原料としての欠片は見たことありますけど、実物は初めてです」
ブルースだけで無く、アインまで知らないとなると、本当にこの大陸では自生しない物の様ですね。

「これだけ有れば、一体どれだけの薬を作れるのでしょうね」
人喰い花の周りを回りながらアインが言います。
「確か万能薬を作るのに必要な量って、耳掻き一杯だったっけ?」
「そうですね、蘇生薬てさえ、小さじ半分ですから、これは市場崩壊する量ですね」

え?そんなにちょっとで良いんですか?
この花、直径2メートル以上有りますが?
小さじ半分の量で死者を蘇らせるって、どんだけ凄い効能やねん!
……内心ツッコミを入れてしまいますよ。

「これは一気に出さないほうが良い…ですよね?」
私が聞くと、頷くアイン。
「そうですね、やめておいた方が良いです」
「それにアレだ、物が物だから、冒険者ギルドじゃ無くて、薬師ギルドの方が良いと思うんだけど」
コニーの言葉にアインも深く頷きます。

これはまた面倒事の予感…?






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