【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

168 間話・お祭りについて話し合おう

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「そろそろ祭りの件を決めたいと思うのですけど」
ある日の夕食後、ジョニーが皆に言った。

「年末を建国祭とするのであろう?」
「……町の完成記念日ですね」
やはり国と言うのは自分の中でしっくり来ないので、言い直すジョニー。

「それはそれとして、もっと祭りらしい祭りをしたいのです」
正月、節分、ひな祭り、花見、節句、七夕…酒が飲める飲めるぞ~と言う歌が浮かんできつつ、話を進めるジョニー。
季節ごとの行事に事欠かない日本で生まれ育ったからには、祭りが一度だけと言うのは物足りない。

「最低でも収穫祭はやろうと思います」
「妥当なんじゃないの」
「時期は雨季の前ですか?」
コニーとアインの言葉に頷く。

「私の中では収穫の秋と言うイメージが有りますけど、実際には上夏に収穫される物が多い。
なので雨季の前にと考えています」
「どんな事するの?」
ワクワク顔のシナトラ。

「ありきたりですけど、一番を決めるのはどうでしょう。
一番収穫数が多いだと、畑の大きさで不公平になりますから、一番大きな野菜とか、一番面白い形になってしまった野菜とか」
「大きさはわかりますけど、形ですか?」

アインに聞かれて、考えていた事を答えるジョニー。
テレビで、面白い形になった野菜を見た事が何度もある。
調理には使い難くても、ネタ的にはアリでは無いかと思ったのだ。

「見た目だけではなんですので、味の一番を決めるのも良いかと」
どんな食材でも、調理次第で味は変わるので、公平を記す為、茹でて塩のみの味付けで比べてみる事を提案する。

「全て同じ調理方法なら公平ですね」 
「大きさ一番、おもしろ野菜、美味しい野菜、農家の方々はこの辺りでいかがでしょう。
後は料理に携わる方々に、収穫された野菜を使った料理コンテストをしたいと思います。
審査員は野菜の嫌いな子供達で、嫌いな野菜を美味しく食べさせることができるか、とか」

子供の大半が野菜が嫌いなのは、この世界でも変わらない。
肉食獣の亜人が多いから、野菜嫌いが多いとも言える。
そんな子供に美味しい野菜を食べさせて、好き嫌いをなくすことができれば一石二鳥だ。

「チーム対抗狩り勝負はありきたりでしょうけど、やりたいですね。
シナトラが喜びそうですし。
後は大声選手権とか、伝達競争とかも面白いかも」
通信媒体の無い世界、問題発生時には人から人への伝達や、危険を知らせる為に大きな声を出す、光やゼスチャーで離れた相手に伝える、などとなる。
それを正確に伝えることが出来るか出来ないかでは、危険度が全然違ってくる。

「農業に携わる者以外でも参加できる物が有るのは良いことだと思うぞ」
「情報の速さと正確さは重要ですからね」
ブルースとアインの言葉に頷く他の面々を見て、ジョニーが続ける。

「上夏の祭りはこれくらいとして、秋ですけど…」
「まだやるつもり?」
思わず突っ込んだチャックに頷く。

「上夏の祭りは農家の方々が中心ですけど、農業以外の方メインの祭りを冬の前にやろうと思います」

ジョニーが挙げた秋祭りのイベントは、冬に備えての薪割り競争と、物作りの仕事をしている者達への出し物だ。

「つまり、自分で使うならどれが良いかを選ぶのと、人にプレゼントとするのに向いてる物のそれぞれの一番を投票で決めると?」
「そうです、普段使いに適した物、服や家財道具など、これは使いやすいとか、これが有れば便利など、日常生活に生かせる物を選ぶのと、人に渡すに適した物は違いますよね。
なので、目的に応じたそれぞれの良いと思う物に投票してもらい、一番を決めようかと思います」

デイビッドの言葉に捕捉するジョニー。
「競わせる事で技術面を磨く目的もあるのだな」
「そうですね、私的に皆が揃って同着一位より、やはり競ったナンボと思いますから」

先入観を抱かせない様、無記名で作品を並べ、投票させようとか、伝達競争のチームは仲間内ではなく、無作為で決めようなど細かい事も話終え、最後の出し物を提案するジョニー。

「祭りの最後に皆で踊りたいですね」
「踊り?」
「この世界でには無いでしょうけど、フォークダンスや盆踊りを踊って、皆で楽しく祭りを締めたいと思います。
覚えているのは炭坑節と、コロブチカと、オクラホマミキサー、後はマイムマイムですかね」

どう言ったものかと聞かれて、説明しながら鼻歌で曲を口ずさみ踊ってみたジョニー。

「おくらなんちゃらと言うのはどうかと思うな」
「コニーの言う通りかと思います。
男女が密着するのは如何でしょう」
「ころぶんとか言うものくらいなら、常識の範囲内だろうが、おくらは破廉恥だな」
破廉恥とまで言われて頭を捻るジョニー。
フォークダンスで破廉恥なら、社交ダンスはどうなるのだろう?と頭の中で考えつつ、世界が変わると感じ方も違うのだなと、改めて思った。

とりあえずオクラホマミキサーは不人気だ。

「たんこーは年寄り向けかな」
「だが歌は面白いな、耳にした事のない音程だ」
「たんこうぶしは老若男女踊れそうですね。
ころぶちかは若い男女の出会いも兼ねられそうですね」
この二つはなかなか好印象。
コロブチカの手を繋ぐまでは常識の範囲内の様だ。
だがしかし、

「でもまいむまいむが一番面白いと思う」
「まいまいまいまい、まいむべっさっそん」
珍しく素直に楽しそうなチャックと、ちょっと間違えた歌詞で踊っているシナトラ。
「俺もコレが一番楽しいと思う」
二人に混じりたそうにソワソワしているデイビッド。

「なら三つとも採用で、一番最後の締めにマイムマイムという感じでどうでしょう」
「そうですね、それで宜しいかと」
「なら、音楽家を選んで曲の練習もしてもらわないといけないね」
「コニーに伝はありますか?」
「任せて」
「よろしくお願いします」

こうして上夏と秋の祭りの話は決まった。
その日の夜ベッドの中で、ジョニーは独りごちていた。

「マイムマイムって確かにテンポが良くて楽しいけど、あれって中心に人を置いて真顔で取り囲んで踊るとめちゃくちゃ怖いんだよね」

頭の中で思い出した光景に、〈怖っっ! 〉と突っ込むティちゃん。
やる時は真ん中でキャンプファイヤーだな、と心の中に留め置きながら眠りにつくジョニーであった。





ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー


手を繋いだ人たちに周りを囲まれるだけで怖いと思います。
しかも、案外早足でぐるぐる回って、謎の呪文の様な言葉『マイムマイムマイムマイム………』と言いながら近づいて来る………。

マイムマイムを知らない人には恐怖だと思います。





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