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三章 町をつくる様です
167 間話・その時他の家族は・3 真面目に働いている家族
しおりを挟むチャックの場合
チャックは忙しくしている。
朝はジョニーが食事を作る時以外は、ヨーコーが朝食を作り、それを受け取りに行く。
家の隣がヨーコーの店と言えど、自分達の住む敷地は広く、歩くのが面倒な時は飛んでいく。
朝食が終わると、食器の片付けや、自分の部屋の掃除などをして、皆の洗濯物を近所の主婦の方に預けに行く。
主婦の方々の小遣い稼ぎの洗濯代行だ。
日暮れに回収に行くのも、いつの間にかチャックの仕事となっていた。
昼間はジョニーに教わった簡単料理を作って食べた後、森に木の実やハーブなどを取りに行ったり、バスの二匹に食事を運んだり、文字を覚える勉強も続けている。
そうこうしているうちに夕方になり、食事を作るジョニーの手伝いをする。
夕食後は日々の出来事の報告会だ。
大概はそうして過ごすのだが、ジョニーから頼まれている仕事もある。
年明けに行商に回った時見つけたダンジョンへ、様子を見に行く事だ。
二つ見つけたダンジョンなのだが、探索は冒険者ギルドへ依頼として出した。
自分達で調べる時間的余裕がないからで有る。
どちらも朝町を出て、ダンジョンで進行状況を聞き、昼前 に戻れる距離だ。
ただしこれは【飛べば】の話で、歩いてだと、片道で朝から夜までかかる程は離れている。
バスなら朝出て昼過ぎに戻れるくらいか。
障害物が無い分、空を飛ぶチャックの方が早いので有る。
3日に一度ダンジョンへ飛び、話を聞いて、夕食後に家族に伝えるのが頼まれた仕事だ。
「ラルーセンさん、お待たせしました」
「おー、ご苦労さん」
ダンジョン入り口で焚き火にあたっているのは、元冒険者の ラルーセンである。
彼は最近、東の山の城下町のギルドを拠点としていたのだが、縁あって親しくなったので、町を作る時にギルド職員にスカウトしたのだ。
ギルド員のラルーセンをリーダーとし、冒険者複数名でダンジョンの調査をしているのである。
「こっちのダンジョンはちと珍しいな。
すり鉢状で地下4階迄で、見た事のない獣ばかりだ」
この世界のダンジョンは、地中を流れる魔素が、強力な(或いは大きな)魔石に取り込まれ、それが核となり更に周りの魔素(地中だけではなく大気中の魔素)を吸収し、地中に空洞を作る。
その空洞に、魔素を求め獣が集まり魔獣化し、魔獣は更なる魔素を求め、ダンジョン内を徘徊し、他の魔獣を襲い魔素を取り入れる。
しかしながら魔獣は魔素を取り込み過ぎると身体(いれもの)を維持できず死んでしまう。
その死んだ魔獣の魔素を、核が吸収し、さらにダンジョンの規模が広がって行く。
死んだ魔獣の素材や魔石を求め、冒険者はダンジョンへ挑むのであるが、ダンジョンの規模や危険度によって、低ランクの冒険者には危険な場所であれば、高ランクの冒険者に依頼して、ダンジョン核を破壊し、ダンジョンを終了させる。
低から中ランクの冒険者でも挑めそうなレベルなら、ギルドが管理して、冒険者の収入源とし、運営することとなる。
それがこの世界のダンジョンだ。
「見た事のない獣、ですか?」
「ああ、目が赤くないから魔獣では無いな。
数も多くない」
「魔獣でない上に数も少なくて、地下4階までの規模なのですか?」
魔獣が少ない、イコールダンジョンの核が魔素を補給出来ない、つまり小さなダンジョンにしかならないのである。
「魔獣は少ないのだが、地下なのに植物が豊富でな、薬草を大量に見かけた。
その植物の全てが魔素を持っている様だ」
「魔素を含む薬草ですか」
「魔素を大量に含む薬草は、普通の物より数倍効能が良いと聞いたことがある。
しかも一種類じゃあない。
鑑定持ちがいないから、正確にはわからんが、間違い無いと思う」
本当に効能が格段に高い魔素を含む薬草が採取出来るダンジョンであれば、普通のダンジョン以上の収益が出るのではないのか。
急ぎ報告するとして…
「この事は他言無用でお願いします」
「勿論だ。
他の冒険者達にも口止めをしておく」
薬草の有用性を考えると、ギルドに管理をしてもらわないといけない。
ギルドが管理をする前に、噂を聞いた冒険者が侵入し、根こそぎ採り尽くす事のない様に、口止めをする様に頼む事は重要だ。
「くれぐれもお願いします。
ボクは急いで知らせに行くので、あとはお任せします」
「了解。
共に来ている奴らは、顔見知りばかりだからな、口止めした事を吹聴して回る奴はいないから、心配しなさんな」
「……よろしくお願いします」
再度頭を下げて飛び立つチャックに、軽く手を振るラルーセン。
ダンジョンについての後日談はまたいずれ……。
コニーの場合
「ああああ、なんでこっちに来てまで事務仕事しなきゃなんないの?」
ジョニーのいない間、町の運営はコニーに任されている。
ちょっとした隣人トラブルや、住民の要望、農家からの収穫見込みの報告から、来客の相手まで。
勿論アインやブルースも手を貸してはくれるけど、ほぼ一人でやっていると言っても過言ではない。
「早く戻ってこいよ、ジョニー!」
他者と面会する時は大人バージョンだけど、机に向かっている間は本来の姿だ。
今日も上底をした椅子に座り、愚痴をこぼしながらも書類と格闘している。
「アインは一体何をしてるの⁈
もっと手伝ってくれても良いよね!」
アインの場合
町中はブルースが出歩き、何かあれば対処をする。
町の外との連絡事項はチャックが一っ飛び。
内政はコニーが代理をしている。
それならアインは?
彼が何をしているのかは、彼しか知らない。
面と向かって問い正すなんて事は、誰にもできはしないのであった………。
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