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三章 町をつくる様です
164 ある意味シナトラで実験?
しおりを挟む「そう言えば、転移魔法ってどんな感じなの?」
興味津々にシナトラが尋ねてきます。
「行き先を思い浮かべて呪文を唱えると、そこに居ると言った感じでしょうか?」
「父ちゃん以外でも転移出来るんだよね?」
「ええ、まだ一人ずつですけど、出来ますよ」
「なら僕やってみたい!」
キラキラした瞳でこちらを見ています。
興味が湧くのはわかります。
「ならシナトラの部屋まで移転してみます?」
「やるー!!」
〈えーと、この場合シナトラを見ながらワープって言えば良いのでしょうか? 〉
〈対象者に触れて、その対象者が【何処に、どう言った形で移動する】をイメージしてからワープって言えば良いよ 〉
〈成る程成る程、ならばシナトラの部屋の……… 〉
私はシナトラの背中に手を当てて、
「ワープ」
と呟きました。
その瞬間、目の前からシナトラの姿が消えたのです。
「ほう、側から見るとこんな感じなのですね。
掻き消えると言うのでしょうか、正に瞬間移動ですね」
私の呟きに、デイビッドの呟きが重なります。
「転送魔法と同じなんだね。
今までここに居たのに、ふと消えたけど、シナトラはちゃんと部屋まで行けたのかなあ」
「消えたけど体に異常は無いんだよね?」
思案顔のチャックに聞かれました。
「大丈夫ですよ、商業ギルドへ2回飛びましたけど、問題なかったですから」
「【ワープ】が呪文なのですね。
あれもジョニーの世界の言葉なのでしょうか」
「いつ見ても不思議な感じだな」
チャックと話している横で、アインとブルースが話しています。
「私の世界で一般的に使われている(?)移転の言い回しですね。
ブルースは移転魔法が使える方を知っているんですね」
「我やアインの様に長く生きておると、出会う奴も多いからな」
「あの方は、目的地も口に出していましたね」
どうやらアインとブルースの共通した知り合いの方が、移転魔法を使えた様ですね。
「今の場合ですと、『シナトラの部屋へシナトラを移動』と言った感じの呪文を唱えたでしょう。
ジョニーの呪文は簡潔ですね」
「それって毎回呪文が変わるの?」
アインにチャックが尋ねます。
「呪文と致しましては【移動】の言葉スペルなのでしょう。
呪文を補助するのに名称と移動先を言うのだと思いますよ」
アインが答えているところに、ティちゃんから聞いた補足を足します。
「私の場合は対象者に触れる事と、行き先を頭の中でしっかりとイメージする事で短縮していますけど、その方は全てを口にする事で、魔法の成功率を上げているのでしょう……とティちゃんが言っています」
「成功率って……失敗したらどうなんの?」
尋ねてきたコニーの顔色は少し悪いです。
「えーと…何処に行くのかわからないそうですよ」
「「「怖っ!!!」」」
コニーとチャックとデイビッドの声が重なります。
私も内心「怖い」と思いながら、顔には笑顔を浮かべています。
移転に恐怖心を与えないためにも、ここは笑顔ですよね。
「あの笑顔が怖いな」
「そうですねえ」
ブルースとアインの呟きは聞こえなかったことにしましょう。
そんな話をしていると、走る足音が近づいて来て、勢いよくドアが開き、シナトラが飛び込んで来ました。
「父ちゃん凄い!
父ちゃんが『ワープ』って言ったら、自分のベッドの中に居た!」
先程シナトラを転移した時に、彼の部屋のベッドの中に横たわる姿を思い浮かべて呪文を唱えたのです。
「ちゃんと布団の中でしたか?」
「うん!ベッドの中で横になってたよ、靴を履いたまま」
ああ、また靴問題ですか……。
しかしこれは良い実験でしたね。
椅子に座っていたシナトラを、そのまま部屋のベッドの上とだけ思い浮かべていたのなら、ベッドの上で椅子に座ったままの格好で飛んでいたでしょう。
ベッドの脇に立っている姿を思い浮かべていたら、起立した状態だったのだと思われます。
【ベッドの上、シーツの中に横たわっているシナトラ】
をイメージしたので、その通りに横たわってシーツの中に移動できたのですね。
他人をワープさせる時には、場所とどう言った形なのかもイメージした方がいい様です。
「体はなんとも無いの?」
「うん!チャック兄ちゃんもやってみるといいよ。
いきなり違う場所に居るなんて、すっごく面白いよ」
笑顔のシナトラに、ソワソワするチャック。
「ならチャックも部屋へ送りましょう」
「僕ももう一回!」
「ならシナトラも部屋へ送りますので、今日はもうお休みなさい」
わかった!と答えるシナトラを先に送ります。
今度はベッドサイドに立つ姿をイメージしましょう。
チャックは、椅子に座っているので、そのままの格好で…ベッドの端に腰掛けるイメージなどはどうでしょうかね。
二人の姿が消えた後、チラチラとこちらを見る視線を感じます。
「デイビッドとコニーも移転、試してみます?」
尋ねてみると大きく頷くコニーは部屋のベッドの上に座った姿で、デイビッドは奥さんの待つ家の玄関の前に立った姿で。
デイビッドは奥さんの実家で、奥さんの両親と同居生活を送っています。
今回の様に話し合いがある時に、こちらで夕食を取る様にしているのです。
なので、私の家に準備しているディビッドの部屋ではなく、そちらへ送りました。
部屋に残ったのは、私とアインとブルースの3人です。
「4人も転送させて、魔力の残量は問題ないのですか?」
アインが心配顔で尋ねてきます。
私は体内を巡っている魔素に神経を向けましたけど、全く問題はない様なので、そう伝えました。
「昼間にもギルドへ飛んでおるのだろ?
日に7回も転送魔法を使って、その上他の魔法も使っておるのだろ。
普通なら魔力切れで倒れるところだぞ。
やっぱりお前は規格外だな」
ブルースの言葉にアインが頷きます。
事あるごとに【規格外】と言われるのは不本意ですねぇ。
「魔力に問題がないのなら、私も一度試してみたいですね」
「別に大丈夫ですよ。
アインも部屋で大丈夫ですか?」
「そうですね、取り敢えずそれで」
「うむ、我も送ってくれ。
我は酒場で良いぞ」
アインもブルースも、転移魔法で送られる事に興味が有ったようですね。
リクエスト通りにアインを部屋へ、ブルースは街の外れにある少し静かな酒場へ送りましょう。
人の事を規格外扱いする人は、飲んだ帰りに沢山歩けば良いです。
んー、魔力量は全く問題無いようですね。
魔力が沢山有るのは良い事です。
私も自分の部屋へワープで戻りましょうかね。
「ワープ」
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