【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

161 出かける時は忘れずに

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移転を試してみるのに、いきなり遠くへ行くのは少しばかり怖いので、まずは商業ギルドのギルド長執務室の扉の前へ飛んでみました。

呪文は単純明快に
「ワープ」
唱えると部屋の中にいた私の目の前の景色が一転して、見た事の有る廊下に座っていました。

「おおー、この扉は確かにギルド長室の扉ですね」

うん、一つ学習しましたよ。
私は自室の中で座布団もどきの上に座って呪文を唱えました。
その結果、正座のまま目的地へ送られましたよ。

座ってたら座ったまま、それなら逆立ちをしてたら逆立ちのままなのでしょうか。
取り敢えずワープをする時は靴を履いてからにした方が良いですね。
現状裸足の私です。

室内ならまだしも、外で裸足はいただけませんから、靴を履いてから立った状態でワープしないといけませんね。

一度自宅へ戻って靴を履き、再度商業ギルドへ飛びました。
コンコンコンとノックをして扉を開けて……そっと扉を閉めました。

「あら、ジョニー様、どうなされたのですか?
どうぞお入り下さい」
ダンゴさんが中から声を掛けてきましたけど、入りたく無いです。

「いえ、お取り込み中の様なので出直してきます」
ギルド長室の中では、土下座をするショタコフスキーさんの頭を足で踏み、椅子に座って書類を見ているダンゴさんが……。

扉を挟んで会話をしていると、中から開き、ショタコフスキーさんが顔を出してきました。

「どうぞお入り下さい」
ギルド長直々に招かれましたから、断ることもできず中へ入り、ソファーへ座ります。

「お見苦しいところをお見せしてすみません、少々お仕置きを受けていましたので」
ニコニコ笑顔のショタコフスキーさん。
「この人って可愛いでしょう?
色んな女性ひとに色目を使われるのよね。
狩り鳥の亜人とか尾太犬の亜人とか」
それって猛禽類とか狐ですよね?
肉食獣ですよね?
色目と言うより別の視線の様な気がするのですけど……。

「熱い視線にドキドキするね」
頬を赤くしてショタコフスキーさんが言うと、
「ふふふふ、また後でお仕置きかしら」
ダンゴさんが楽しそうに言います。
「クフフフフ、宜しくお願いします」
さらに顔を赤くして嬉しそうに笑うショタコフスキーさん。
ああ…そう言った嗜好の方なのですね。
聞かなかった事にして仕事の話を始めましょう。


春になってから、行商人さん達がチラホラとリーガルリリーに訪れる様になっています。
露天を出すのに皆さん商業ギルドに顔を出すので、その時にこの町で店を開く気が無いか、もしくはこの町で商いをしてくれる方を紹介してくれないかと尋ねて貰っています。

正直言って人員不足なのですよ。

町の住人、250人弱は、未成年な子供と御老人や主婦の方などを除き、働き手としての住人は、男女合わせて150人前後なのです。
その内の7割は畑作や木こり、畜産(養鶏や山羊)狩人、漁師(川での漁)など。
1割は職人さん、1割は商売人、残りは冒険者(という名の便利屋さん)と言う割合です。

勿論主婦の方も、一人住まいの方の掃除や洗濯などの家事代行の様な仕事をしたり、共働きのお宅の子供を預かったり、何かしら働いています。
御老人も町の清掃や、ゴミ収集、処理、結界などの魔道具の点検など、無理のないちょっとした仕事をしています。
勿論子供もお手伝いと称して、小遣い稼ぎをしています。

………正直言って働き者ばかりなのですよね。
聞くところによると、『真面目にしていなければ町を追い出される』と言う噂があるそうです。
そんな事しませんよ。
決まりさえ守ってくだされば、多少サボっても良いんですけどね。

そう言うと、
「自分達で一から作る町ですし、自分達が選ばれたと言う思いもあるので、頑張ろうと思っているのでしょう」
とアインは言います。
確かに私が選びましたけど、もっとゆとりを持たなければ、息切れしそうです。

それに、まだやりたい事が有りますので、人手が足りないのです。


「支店を出したいと言って居るのが、食品を扱っている【クラーラル商会】と、主に雑貨を扱っている【オファド紹介】ですかね。
後はサーベラス商会と取引をしたいと言う行商人と、そちらで働きたいと申し出た者が数人居ますね」

サーベラス商会(うち)で働きたいと言う申し出は有り難いです。
ガラス商品が販売可能になった時に、私が行商に出る手間が省けますし、他にも考えている事が有るので、商会の人員が増えるのは助かります。

「食品と雑貨ですか、主な商品のラインナップは?」
尋ねるとダンゴさんが資料を見ながら答えてくれます。

「食品は、ハーブやスパイスが主ですね。
後は乾燥果物や干し肉など、保存のきくものです。
雑貨は装飾品と衣料です。
細やかな細工物の櫛やお守りなど、女性に人気がある様です」

両方とも興味が有ると言いますか、後(のち)に繋げそうです。
「申し出のあった方と面談をしたいと思います。
それぞれの都合を聞いておいて下さい」

全てを受け入れるわけにはいきませんからね。
町の方針や決まり事を理解して、納得してもらわないといけません。
私が責任を持つ私の町(本当は国らしいのですけど)ですから、出来る限りの間は、一人一人面談しますよ。

その後はこれからやろうとしている事を軽く話して、ワープで帰宅しました。







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