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三章 町をつくる様です
155 村巡り 後編
しおりを挟むチャックとデイビッドに、空から探してもらい、いくつか村を巡りました。
北の方の村の方などは、狩りや採取の都合で、国に戻るのが面倒で住み着いていたら、いつの間にか村になってたとか。
大草原の村の方は、景観が良く、元は別荘地としていたのだけれど、生活の基盤を国から移し、気付けば他の国からも人が集まり、いつの間にやら集落の様になっていた、などと、いい加……大雑…………大らかな方々の暮らす村や集落が多かったです。
特殊だったのは、シルクを生産している村ですね。
正確に言うと、蚕ではなく、魔虫の糸から作られている【光布】と言う物で、魔虫の繁殖力が弱いため、生産量が少ない希少品です。
希少過ぎて取引は無理でしたけど、布を一枚購入させていただく事は出来ました。
ハンカチ程の大きさで、最新のスマホ一台分でした……足元を見られましたね。
南方へ行くと、東からの亡命者の村や、人族の国から出た方の村や集落が増えてきました。
亡命者の村は、立ち入ることを拒否される事も有ります。
いきなり攻撃されたこともありました。
盗賊の村かと間違えて、あわや一般の方々の村を殲滅してしまうところでした。
人族の国から出た方は、亜人の方や、伴侶が亜人の方ばかりでなく、差別をする最近の風潮に嫌悪した方や、閉塞感に嫌気のさした方などもおられました。
そう言った方々は、いずれどこかの国の保護下にとは考えている様です。
盗賊の村も3つ程行き当たりましたよ。
勿論全て捕縛しました。
縛って落とし穴に落としたり、木に縛り付け、チャックの魔法で眠らせたり。
コニーに念話で場所を伝え、一番近い国から兵を向かわせ、捕らえる事になっています。
褒賞金は後でまとめて精算です。
半月かけてのんびりと各地を回りました。
16の村と、同数程の廃村、それからダンジョンを二つ見つけてしまいました。
入り口近辺を探索し、ダンジョンであるとブルースが判断したので、アインに報告しました。
新発見のダンジョンに、下準備もなしに挑むなど、自殺行為だとブルースも言いますし、今回の目的は行商がメインですので、後のことはいつもの如くアインにお任せです。
盗賊との戦闘以外では、凶暴な獣や魔獣にも行き当たらず、安全な旅でした。
……まあ、いきなり攻撃されたことも4回ほど有りましたけどね。
帰路に着きながら、今回の戦利品を確認しました。
コルクに光布、ダンジョンの発見に酒の木の群生地の発見、後はとある鉱物の発見ですね。
未開の土地が多いですから、発見も多かったです。
或いは、【それが何に使えるか】が分からない為、見逃していると言うのが正解なのでしょう。
アイテムボックスから光布を出して眺めていると、ブルースが話しかけて来ました。
「その布は足元を見られたな」
「ええ、ぼったくりですよね」
「ぼ……?」
「足元を見られたって意味です(多分)」
「そんな小さな布、どうすんの?」
チャックも会話に混ざります。
「この布、と言うより、【この布の織り方】が重要なのです。
普通の布と折り方が違う(とティちゃんが言ってます)ので、資料として購入しました。
全く同じものを作るのは憚れますけど、原材料を変えて新しい布を作るのはアリかな、と」
製法を真似するのはいかがなものかと思いましたけど、ここでは禁止されていることでもないし、材料を変え、名前を変えたら問題ないとティちゃんが言うので、見本品として購入したのです。
「まあ、お前なりに考えて手にしたのなら良いが、金を稼ぐための旅で金を使い過ぎると、戻ったら煩く言われるぞ」
「そこは先行投資とでも言っておきます」
「拾っていた石は何なの?」
「石というか鉱物ですね。
これは町に戻ってからどうにかする予定です」
採取できた場所は、必要になればいつでも行ける様に、キチンとマッピングしています。
原材料は手に入りましたから、上手く出来ると良いのですが。
「それより気になった事が有るのですけど…」
今回私達は、【国に属していない村(或いは集落)】を巡っていたのですけど……、
「うちの町…リーガルリリーも国に属していませんよね?
はぐれの町になるのでしょうか」
「…あ……」
私の言葉に、チャックも今気づいた様です。
「何を言っておる、あそこは【町】ではなく【国】だろう」
「…………はっ?……」
ブルースの発言にビックリです。
「え…?町ですよね?
国ではなく、町ですよ?」
「ああ、町をつくる予定だったがな、お前がどの国の下にも付かず、自由にやりたいと言っておったろう」
「ええ…それは言いましたけど」
「メンバーを考えても、これから大きくなるであろうことを考えても、町では収まらぬだろうから、他国の中ではあの町は【五つ目の国】の認識だ」
「はぁあー⁈」
国に属していない=はぐれの町になります。
はぐれの町にギルドの支部は誘致できないそうです。
第一はぐれの町で税金なんて発生するわけないそうです。
各国が認めて、ギルドも誘致して、税収で発展させていく予定で、住人が魔王二人と王様トカゲと異世界人……【町】と言う概念に収まりきらないので、「もう国で良くね?」となったそうです。
「聞いてないよ」
「聞いてなかったのか?」
「初耳です」
「難しく考えるな」
「…………誰が国のトップなんです?」
「お前以外居らぬな」
「そんな無茶な」
「町長(まちおさ)も国王も大差ないだろう。
難しく考えるな」
「全く違いますよね⁉︎」
「はっはっはっはっは」
「笑い事⁈⁈」
詳しく聞こうと念話で話しかけましたけど、アインもコニーも無反応です。
着拒ですよね、これ。
町に戻ったら着拒の件も合わせて問いたださないといけませんね。
「無茶振りが酷い……」
思わず漏らした私の肩を、話を聞いていたチャックがポンと叩きます。
「あー……えーと…………ドンマイ」
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