【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

154 村巡り 前編

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最初に訪れた村は、木こりの村でした。
村人は皆さん陽気で、私達を歓迎してくださいました。

この村に立ち寄る行商も多いらしく、入れ替わり立ち替わり、色んな行商が尋ねているのだとか。

森の中にあるこの村は、特殊な【柔木(やわき)と言う木を伐採し、その木と物々交換でいろんな商品を入手しているそうです。
私もその柔木を見せていただきました。

「コルクですね」
「こるく?」
「いえ、なんでもありません」
「変な奴やなぁ。
この木の皮は一回剥ぐと暫く採れんからな、先祖代々決まった順で順繰りに剥いでんだ」
「先祖代々って大仰な。
曾祖父さん達が見つけたんやろ」
「バカヤロ、こんなのは勿体付けるのが大事やろ」
「そりゃそうや」
はははははと笑う村人達。

この世界ではコルクは歴史が浅く、知る人ぞ知る、みたいな感じですね。
靴底や中敷き、壊物を置く時に敷物や座布団代わりとしてなど、需要があるそうです。

柔木のサンダルを試してみたところ、なかなか具合が良いです。
足にかかる負担が減るので、長距離を移動する行商人に好評だと言うのも納得できます。

私もチーズと交換して一本分の柔木を手に入れました。
何に使うかは町に戻って考えましょう。

因みに何故国に属さないのか聞いてみたところ、『北の国も東の国も遠いので、属したところで端っこ過ぎて大した援助も期待できないから』だそうです。

「曾祖父さんは元々人族の国の一番端っこの村に居たそうなんやけどな、その村伝染病で壊滅したそうなんや。
何人か生き残った若い連中と彷徨って、たまたまこの森に流れ着いたっち聞いちょるな」
「んでもって始めのうちは普通に木ぃ伐って薪にしとったけど、たまたま柔木見つけて、珍しいもんだって行商に見せたら、あっちゅう間にもっともっと言うて人気になったっつうとった」
「珍しい木が採れるからって、北の国と東の国から、領地にならんかって話は有ったっちゅうけど、どっちにせよ端っこには変わらんからな、てーねーにお断り、したっち聞いちょる」
「まぁ、自由が一番や」
そうやそうやと村人達は声を合わせます。

確かに遠方の町や村にはなかなか目も手も届かなかったりするのでしょう。
うちの町からはバスで三、四時間ですから、歩いても一日も掛からない距離です。
何かあったら頼ってくださいと言い置いてから村を出ました。


次の村に着いたのは日暮れ間近な時間でした。
村と言うより寂れた町ですね。
元鉱山の町で賑わっていた様ですけど、今では資源を取り尽くした過疎村です。

数年前に鉄を掘り尽くしてからは、人はどんどん町を離れて、今では50人弱のお年寄りがひっそりと生活しているそうです。

「いや、嬉しいね。
昔馴染みの商人さんは来てくれるけど、こうして若い人がここに来るのは珍しい」
畑を耕していた鍬を止め、腰を叩きながら微笑むご老人は、纏め役をなさっている方です。

「鉄も人も何も無くなっちまって、残ってるのはジジババだけだ。
ワシらは今更他所に行っても、後はお迎えが来るのを待つだけだからな。
こうして日々の食べ物作って静かに暮らしとるわ」

元々住人の食糧の為にやっていた畑を縮小して、残った村人の糧にしているそうです。
ここは独立した町で、四つの国のどこにも属さず、それぞれの国と均等に取引をしていたそうです。

「今でも人族の国以外からは援助は頂いておるから、なんとかなっておるんだよ。
ありがたい事だ」
人族の国が手を引いたのは、多分今残っている村人が、全員獣人や亜人の方だから…だと思われます。

最盛期は数百人が暮らしていた町だそうで、沢山の廃墟があり、もの寂しさを感じます。

行商人が来た時に使うと言う、元宿屋を借りて泊まりました。
床に入ってから、ご老人達を救う術はないかと考えていましたら、ティちゃんが語りかけて来ました。   

〈ここの人達は自分の生を受け入れてるのに、他所から来たジョニーがなんとかするって、驕りだと思うよ 〉

〈そう…なのでしょうか…… 〉

〈余生を住み慣れた場所で過ごしているのに、過疎の村だから可哀想と思うのは驕りだよ 〉

〈………厳しいですね 〉

〈本人達がここで過ごすのを望んでるんでしょ?
だからアイン達も口を出さずに金品を出してんでしょ 〉

〈………そうなんでしょうね 〉

〈ジョニーだって、わざわざ自腹切ってまで町を作んなくても、自分達の国で暮らせば良いって、アインもコニーも思ってるんだろうけど、ジョニーがしたい様にさせてくれてるでしょ?
それと同じじゃん。

自分の生き方は自分で選んで、周りがとやかく言うのはお節介なんだから、どうにかしようと思うんならさ……… 〉

〈成る程、それは良いですね 〉


翌朝出発前に、村の代表さんに渡したのは、
「これが大豆と言う植物の種で、こちらが収穫後の調理方法です。
とても体に良い豆ですから、美味しく調理して元気で長生きしてください。
但し、これは東のとある方の専売品ですから、この村から出さないようにして下さいね。
あくまでもここで食べるだけにして下さい」

大豆を使った試食品と、大豆の種、いくつかのレシピ(文字が読めなかった時のための図解)一式です。

「そんな貴重なものもらって良いのかい?」
「開発者には許可を取りましたから大丈夫です。
村で皆さんが食べる分には、了承を受けています」
夜のうちにポチさんにお願いして、許可を取り付けました。

栄養値の高い食事、程よい運動、しっかり睡眠が長生きの秘訣だと思いますから、体に良い大豆が長生きの一角を担うと良いな、と思いまして。

私に出来ることはほんの僅かです。
でも、出会った方の力になれることが有るのなら、力になりたいです。
自己満足かもしれません。
それでも何かしたいと思う気持ちは、以前の私になかった感情です。

この世界に来て、周りの方に助けられて今の私がいます。
何と言いましょうか……言葉にし辛いですけど、受けた恩を返したいと言いますか、親切にされた分、他の方にも親切にしたい。
そんな気持ちをどう表現すれば良いのでしょうね。





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