【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
154 / 206
三章 町をつくる様です

154 村巡り 前編

しおりを挟む
最初に訪れた村は、木こりの村でした。
村人は皆さん陽気で、私達を歓迎してくださいました。

この村に立ち寄る行商も多いらしく、入れ替わり立ち替わり、色んな行商が尋ねているのだとか。

森の中にあるこの村は、特殊な【柔木(やわき)と言う木を伐採し、その木と物々交換でいろんな商品を入手しているそうです。
私もその柔木を見せていただきました。

「コルクですね」
「こるく?」
「いえ、なんでもありません」
「変な奴やなぁ。
この木の皮は一回剥ぐと暫く採れんからな、先祖代々決まった順で順繰りに剥いでんだ」
「先祖代々って大仰な。
曾祖父さん達が見つけたんやろ」
「バカヤロ、こんなのは勿体付けるのが大事やろ」
「そりゃそうや」
はははははと笑う村人達。

この世界ではコルクは歴史が浅く、知る人ぞ知る、みたいな感じですね。
靴底や中敷き、壊物を置く時に敷物や座布団代わりとしてなど、需要があるそうです。

柔木のサンダルを試してみたところ、なかなか具合が良いです。
足にかかる負担が減るので、長距離を移動する行商人に好評だと言うのも納得できます。

私もチーズと交換して一本分の柔木を手に入れました。
何に使うかは町に戻って考えましょう。

因みに何故国に属さないのか聞いてみたところ、『北の国も東の国も遠いので、属したところで端っこ過ぎて大した援助も期待できないから』だそうです。

「曾祖父さんは元々人族の国の一番端っこの村に居たそうなんやけどな、その村伝染病で壊滅したそうなんや。
何人か生き残った若い連中と彷徨って、たまたまこの森に流れ着いたっち聞いちょるな」
「んでもって始めのうちは普通に木ぃ伐って薪にしとったけど、たまたま柔木見つけて、珍しいもんだって行商に見せたら、あっちゅう間にもっともっと言うて人気になったっつうとった」
「珍しい木が採れるからって、北の国と東の国から、領地にならんかって話は有ったっちゅうけど、どっちにせよ端っこには変わらんからな、てーねーにお断り、したっち聞いちょる」
「まぁ、自由が一番や」
そうやそうやと村人達は声を合わせます。

確かに遠方の町や村にはなかなか目も手も届かなかったりするのでしょう。
うちの町からはバスで三、四時間ですから、歩いても一日も掛からない距離です。
何かあったら頼ってくださいと言い置いてから村を出ました。


次の村に着いたのは日暮れ間近な時間でした。
村と言うより寂れた町ですね。
元鉱山の町で賑わっていた様ですけど、今では資源を取り尽くした過疎村です。

数年前に鉄を掘り尽くしてからは、人はどんどん町を離れて、今では50人弱のお年寄りがひっそりと生活しているそうです。

「いや、嬉しいね。
昔馴染みの商人さんは来てくれるけど、こうして若い人がここに来るのは珍しい」
畑を耕していた鍬を止め、腰を叩きながら微笑むご老人は、纏め役をなさっている方です。

「鉄も人も何も無くなっちまって、残ってるのはジジババだけだ。
ワシらは今更他所に行っても、後はお迎えが来るのを待つだけだからな。
こうして日々の食べ物作って静かに暮らしとるわ」

元々住人の食糧の為にやっていた畑を縮小して、残った村人の糧にしているそうです。
ここは独立した町で、四つの国のどこにも属さず、それぞれの国と均等に取引をしていたそうです。

「今でも人族の国以外からは援助は頂いておるから、なんとかなっておるんだよ。
ありがたい事だ」
人族の国が手を引いたのは、多分今残っている村人が、全員獣人や亜人の方だから…だと思われます。

最盛期は数百人が暮らしていた町だそうで、沢山の廃墟があり、もの寂しさを感じます。

行商人が来た時に使うと言う、元宿屋を借りて泊まりました。
床に入ってから、ご老人達を救う術はないかと考えていましたら、ティちゃんが語りかけて来ました。   

〈ここの人達は自分の生を受け入れてるのに、他所から来たジョニーがなんとかするって、驕りだと思うよ 〉

〈そう…なのでしょうか…… 〉

〈余生を住み慣れた場所で過ごしているのに、過疎の村だから可哀想と思うのは驕りだよ 〉

〈………厳しいですね 〉

〈本人達がここで過ごすのを望んでるんでしょ?
だからアイン達も口を出さずに金品を出してんでしょ 〉

〈………そうなんでしょうね 〉

〈ジョニーだって、わざわざ自腹切ってまで町を作んなくても、自分達の国で暮らせば良いって、アインもコニーも思ってるんだろうけど、ジョニーがしたい様にさせてくれてるでしょ?
それと同じじゃん。

自分の生き方は自分で選んで、周りがとやかく言うのはお節介なんだから、どうにかしようと思うんならさ……… 〉

〈成る程、それは良いですね 〉


翌朝出発前に、村の代表さんに渡したのは、
「これが大豆と言う植物の種で、こちらが収穫後の調理方法です。
とても体に良い豆ですから、美味しく調理して元気で長生きしてください。
但し、これは東のとある方の専売品ですから、この村から出さないようにして下さいね。
あくまでもここで食べるだけにして下さい」

大豆を使った試食品と、大豆の種、いくつかのレシピ(文字が読めなかった時のための図解)一式です。

「そんな貴重なものもらって良いのかい?」
「開発者には許可を取りましたから大丈夫です。
村で皆さんが食べる分には、了承を受けています」
夜のうちにポチさんにお願いして、許可を取り付けました。

栄養値の高い食事、程よい運動、しっかり睡眠が長生きの秘訣だと思いますから、体に良い大豆が長生きの一角を担うと良いな、と思いまして。

私に出来ることはほんの僅かです。
でも、出会った方の力になれることが有るのなら、力になりたいです。
自己満足かもしれません。
それでも何かしたいと思う気持ちは、以前の私になかった感情です。

この世界に来て、周りの方に助けられて今の私がいます。
何と言いましょうか……言葉にし辛いですけど、受けた恩を返したいと言いますか、親切にされた分、他の方にも親切にしたい。
そんな気持ちをどう表現すれば良いのでしょうね。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...