【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
153 / 206
三章 町をつくる様です

153 行商に向かいます

しおりを挟む
この世界では、国に属していない小さ村が複数あるそうです。

国に属さないのですから、加護は受けられません。
何かあっても自分たちの手で解決しなければなりません。

例えば、暴走した魔獣が襲って来ても、軍や兵を派遣される事は有りません。
旱魃や洪水や嵐などの自然災害に遭っても、援助も食糧が支援される事も有りません。
盗賊が村に入り込んでも、伝染病が猛威を振るっても救助されません。

全て自分達で対処しなければならないのです。

メリットと言えば、国の決まり事を守る必要は有りませんし、税金を納める必要も有りません。
自分達の好きなように采配できます。

何かあった時に助けがないと、生活を続けて行くのは難しいですから、近くの国へ属する事を申し立てる村はあります。

それでもやはり、自由を失いたく無いと、細々と生活を続ける村の方が多いそうです。
自由とは自己責任、問題さえ発生しなければ、好き勝手のできる暮らしを手放せない人もいます。

そんな村(はぐれと呼ばれているそうです)を廻って行商をしながら、食材や素材集めの狩りをする予定です。

余程腕に覚えのある護衛を雇っていないと、こうした村に行商に行く商人は居ません。

何故かって……、【国に属さない】理由とは、逆に言うと【国に属せないから】と言うこともあるのです。
つまり、脛に傷持つ集団であったりします。

「え?じゃあ盗賊の村とかだったりすんの?」
「そう言う場合も有るな」
「盗賊に物資を売るのは不味いんじゃ無いの?」

パーティメンバーのチャックとブルースとデイビッドが、ドドの上で話している声が聞こえて来ます。
シナトラは獲物がいないかと身を乗り出して辺りを見ています。

「全てがそうだとは言っておらん。
中には為政者に嵌められて国を出された者や、圧制に耐えかね国を捨てた者。
そう言う輩は大体が東から流れて来るのだがな」

国を追放された方々でには、家族だけではなく、使用人達も付いて行くそうです。
追放されるような家で働いていたのかと、次の勤め先が決まらなかったりする事もあるそうです。
逆に信頼関係が築けていて、連れて行ってくれと言う場合が多いそうです。
殆どが不正を断罪して、逆に罪をでっち上げられて追放されたり、間違いを指摘して逆恨みを買ったり。
そう言う方々は人柄的に真面目だったりするので、策略に嵌って追放されてしまうと。

酷い場合ですと、口封じなどで追っ手をかけられますから、海を渡り密入国して密かに暮らしているのだとか。

「国に保護を求めれば良いと思うのだけど」
「こちらの国に迷惑かけたく無いと言うのと、国と言う枠に嵌りたくないと思うのだろう」
「でもなんで東の人なの?」

デイビッドの問いに答えたブルースに、シナトラが尋ねた事は、私も聞きたかった事です。

「ははは、アインやコニーの治める国に、不満や不正が出ると思うか?」

そうですよね、あの二人だと、不正を行ったり、他人を嵌めたりする人の方を追い出すか、更生させるでしょうね。

「まあ、あのノリに付いていけないなど、北から出る輩はおるが」
「あー…力が全てって、非力だとやってけないよね」
「それと酒を飲めない方も辛いのでは?」
「デイビッド兄ちゃんもお酒あまり強くないもんね」

確かに、力を示さなければ発言も受け入れられない風習のある北の森の国では、力のない人や酒豪でないと居心地悪いでしょうね。

「人族の国から出る奴らは、閉塞感に辟易した輩や亜人だな」
「…あそこあんまり行きたくない」
「居心地悪いよね、確かに」

確かにシナトラ達の言う通りですね。
これから変わって行くと思いますけど、逃げ出した方達が戻るかどうかはわかりません。

「自衛の手段を持たぬ村などは、盗賊に乗っ取られたりする。
前回は普通の村で、次に行くと盗賊の村だった、などと言う事は良くある事だ。
だからはぐれの村に行く行商人は限られておる。
その限られた行商人以外だと受け入れぬ所もあるだろう」
なのに物好きな、とブルースに笑われました。

今回はぐれの村を行商先に選んだのは、話を聞いた私です。
元々は普通に北の国や東の国、人族の国へ行商へ行くつもりでしたけど、アインに
「街道から外れた小さな村には、あまり立ち寄らない方が良いですよ」
と言われたので理由を聞き、逆に訪れる事にしました。

だって、ツッパって生きていた私には、自由を求める気持ちもわかります。
縛られずに生きていけるなら、たとえ自己責任でも好きに生きていきたい。
そんな気持ちが理解できない人もいるでしょうけど、私はわかります。

駆け落ちをした私には、見つからないようにひっそりと生きていきたいと言う気持ち、わかります。
私だって当時、妻と二人だけで山奥で、あるいは無人島で、自給自足で二人だけで生きていきたい、なんて思ったりもしていました。
現実問題として無理なんですけど。

ここではそれが出来ます。
逃げ出した家族や仲間(使用人)達と家を建て、畑を耕し、穏やかに生きて行く。
そんな生活ができるのなら、不便でも、その生活を捨てたくないでしょう。

そういった方々に、生活の助けになる商品を届けて、少しでも生活が楽になれば…と思いまして。

勿論門前払いをされたりもするでしょう。
その時はその時です。
押し売りに行くわけでは有りません。
町や村で売れなければ、普通に他の国の町で売れば良い事です。

「ジョニーは人助けが趣味なのか?」
「そうかも知れぬな」
「そうなんじゃないの」
「そうだと思うよ」

デイビッドの言葉に3人とも同意しました。
え?そうですか?そんな事ないと思いますよ。

〈そうだと思う 〉

ティちゃんにまで同意されました。
そんなお人好しじゃないと思うんですけどね。

今回、盗賊の住処に行きあたったら、討伐して良いとブルースが言います。

見分けるのは鑑定です。
村に立ち寄り、さりげなく会話の中で、
「そう言えばこの近くに盗賊が出ると噂を聞いたのですけど、大丈夫ですか?」
と尋ねて、その時の反応(オーラ?)で、盗賊以外、元盗賊、現在絶賛盗賊活動満喫中(言い方……)を判断して、アタリ だったら殲滅です。

それでも元盗賊だけど、足を洗って更生中ならそのまま見逃す事に。
これには
「一度犯罪に手を染めたら、再犯する」
と言われがちですけど、全てがそうだとは私は思いません。
罪を犯しても、周りの助けなどで立ち直る事は有ります。

罪を憎んで人を憎まず、とは言いませんけど、立ち直ろうとしているのなら、見逃すのもアリだと思うのです。

その代わり、現役盗賊の村だったら容赦はしませんよ。
あ、殺しはしません。
ボコ殴りの上に土魔法で大きな穴を掘り、兵が来るまで落としておきます。

壁はツルツルになるまで押し固めて、登れないようにして、丸太を倒して蓋もしましょう。
空気穴を忘れない様にしなければいけませんね。
さらに結界でも張っておけば、逃げ出すこともできないでしょうね。

ほーら、お人好しじゃないでしょう。
お人好しなツッパリなんて……恥ずかしいじゃないですか!

「父ちゃん、村が見えて来たよ」

シナトラが指さす方を見ると、三十軒程の家が建ち並ぶ村…集落?が見えて来ました。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...