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三章 町をつくる様です
151 町の完成……完成?
しおりを挟む移住してきた方々は、面談の時に前もって【新しい町でどんな仕事をしたいか】を全員に聞いています。
その希望に合わせ秋の間に建物を増やしました。
宿屋をやりたい方は5人以上居ましたけど、町に5軒も宿屋は要らないですから、話した時の雰囲気や、今までどんな仕事をしていたかで、二軒建てる事にしました。
どちらも家族経営です。
お店は、食堂、酒場、酒屋、雑貨屋(インクや櫛や紐などの日用品)道具屋(ザルやカゴ、桶や箒、洗濯板など)、金物屋、肉や魚の食料品(仕入れは冒険者やギルド)、他の国からの出店でスパイス屋、魔道具屋、繕い屋(お針子さんが、代金をもらい独身者や冒険者の服を作ったり繕ったり)などなど。
後、この世界独特なのでしょうか粉挽き屋。
「小麦などの粉挽きって、水車でやるのでは?」
と尋ねたところ、
「水車とは?」
と逆に尋ねられました。
どうやら粉挽きは、足を悪くした冒険者や、木こりのサイドビジネスの様です。
これらは本人の希望で、経験者優遇ですけど、未経験でもやる気があり、『あ、この人ならできそう』と思った方には出資しました。
『自分で店をやるのはちょっと…できれば雇われたい』
と言う方は、どの様な場所で働きたいか(接客、製造、農作業など)希望を聞いて、人手が欲しい方へ面接の斡旋……と言うほどではないですね、顔合わせの場を設けました。
八百屋は、農家さんから産地直送採れたて野菜と言いますか、畑で収穫した物を、自分たちの店で売る形式です。
各ギルド職員の方は、一先ず寮住まいになりますので、寮の管理人さんと食堂の料理人、冒険者ギルドには酒場併設がセオリーらしく、酒場の主人と配膳さんも手配しました。
職人さんは、鍛治師、薬師、町づくりで活躍された大工に石師(土や石で色々作る方々)木材師(木で色々作る方)などなど。
お店をなされる方や、職人の方々の家は、注文住宅です。
使いやすさや拘りは本人しか分かりませんからね。
秋も終わり冬になり、今年の作業の終わった農家の方々の移住も始まりました。
今までどんな作物を作っていたのか、これからどんな物を作りたいのか、それを作るための適した土壌やらなんやらを聞き、町の四方や少し離れた場所で農地を作り、家を建て、従業員の手配や寮を建てたりなど、細かい打ち合わせをしているうちに、年の瀬も迫ってきました。
冒険者へ依頼を出したりして、何とか年内にはひと段落つけることが出来ました。
………え?
町ってそんなに早くできる物?
上夏(5月)の下旬から始めて雨季(6月)を挟み、下夏(7月)、秋(8月)、冬(9月、10月)。
ひと月40日だとしても200日くらいですよ?
「魔法って便利だね」
で済ませられるこの世界がちょっと怖いですね。
「えー、皆さんのお陰で、この町【リーガルリリー】は完成して、新しい年を迎えることが出来ます。
区切りもいいですし、覚えやすいですから、年末のこの日を町のできた記念日としようと思います。
今日は無礼講です。
お好きなだけ飲んで、好きなだけ食べて、一緒に新しい町で新しい年を迎えましょう。
乾杯!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
住民の移住も全て終わり、それぞれの生活もある程度落ち着いたので、町の設立記念日を作ってみました。
忘年会感覚で、年末のこの日を毎年町の方々と祝えると良いなと思いまして。
町の広場(そのうち噴水でも作りましょうか)に、土魔法でテーブルを沢山作り、ヨーコーや宿屋、食堂の方々や主婦の方に手伝ってもらい、沢山の食べ物を用意しました。
勿論お酒も準備万端です。
寒さ対策にあちらこちらで焚き火をしています。
今現在仕事をしている方も居ますので、宴はこのまま夜まで続けるつもりですから、焚き火は夜には灯り代わりにもなりますね。
安全対策に土魔法で柵を作ってますよ。
町づくりに協力して下さった方も招いて、とても賑わっています。
そこでふと目の端に捉えたのですが、頭の上のトサカ?と黒い羽毛が特徴の、世界一凶暴な鳥…ヒクイドリがいるじゃ無いですか!
え?マジで?
こんな沢山の人の中に何でいるの?
人死ひとしに出ちゃうんじゃない?
これ騒いだらヤバい?
内心焦って居ると、危険な鳥に気付いたのか、ブルースがヒクイドリに向かって歩いています。
ブルースなら勝てるか?
……え?なんか喋ってる?
もしかして知り合い?
恐る恐る近づいて行くと、ヒクイドリと目が合いました。
逃げた方が良いのか?動くと危険か?
体が強張って動けないでいると、ヒクイドリがどんどん近づいて来ます。
ちょっと、俺の身長より大きくない?
それにあの爪なに?10センチ以上有るよね?
あんなので蹴られたら抉れるだけで済まないよね?
ブルース、何見送ってんだよ、取り押さえろよ!
あ、マジヤバい、射程距離入ってるよ、なのに動かない俺の足。
え?設立記念日が命日ナノデスカ?
パニックになっている私の目の前で止まったヒクイドリが嘴を開けました……。
「町長、今日は大盤振る舞いですのね。
どれもこれも美味しいですの。
これって毎年やるんですの?
………予算は大丈夫なんですの?」
…………この声、この喋り方……
「え?ひょっとしてマリリンさん?」
「え?陽の出てる時に会ったこと無かったでしたっけ?」
「え…っと……日が暮れてからしかお会いしたこと無かったかもしれません」
マリリンさんが言うには、北の国の王は昼と夜で人型と元の獣型になる人…二つの姿を持つ獣人さんが王になるのだそうです。
つまり、現在王のファナさんは、夜は人の女性に、マークスさんは夜になると熊になると。
「元の獣の姿の方が能力高いですの。
でも半日しか高能力じゃないから、昼と夜に別れて王様してるんですの」
「そう言った二つの姿を行き来する方は、北の国に多いんですか?」
「二、三十年に一人か二人ですの」
能力(戦闘力)が上がる時間帯を王として治めるそうなのですけど、マリリンさんは今は書類仕事が多いですから、夜にギルドに居て、昼間は外で文字通り羽を伸ばして狩りをし、その収入をギルドの運営資金の一部に充てているそうです。
「運営資金が足りないのなら、私がどうにかしますよ」
「大丈夫ですの。
趣味と実益兼ねてますし……ジョニーさんのギルドカードの残高知っちゃうと………ねぇ」
曖昧な表情で笑われました。
個人情報ー!!
年が明けたら頑張って働きますよ。
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