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三章 町をつくる様です
139 マークスさんとの手合わせ
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北の国では、何かを成す為には力を示す必要がある、と。
その相手が国外の人だったとしても。
こう言うのを確か【脳筋】って言うんですよね。
脳まで筋肉、筋肉は裏切らないとか、筋肉は一日にして成らずとか……。
現実逃避している場合では無いですね。
今私は城の中庭に来ています。
そして目の前には指をバキバキ鳴らしているマークスさんがいらっしゃいます。
魔王であるアインやコニーが相手だと、空を飛べて魔法の得意なファナさんが相手をしたそうなのですけど、人族である私が相手ですから、魔法が得意では無いマークスさんが、肉弾戦オンリーと言うハンデで相手をしてくださるとかなんとか。
人族は、獣人に比べて力は無いし、魔族に比べて魔法も微妙ですから、ハンデなんですって。
しかし体格の良い熊の獣人が肉弾戦で一般人を相手にすることの、一体どこがハンデなのでしょうか。
私は武器も魔法も使っていいからですか?
それにしても……ですよね。
アイン達が言うには、こうなる事がわかっていたから、私を連れてきたとか。
私が主体で作る町ですから、私が相手をしなければならない、と。
筋は通っているかもしれませんけど、だからと言って……ですよね。
でも、ここまで来たら開き直るしか無いですよね。
私は鉄パイプを手に、頭の中でシュミレーションします。
勝たなくても良いと言われましたけど、やるからには勝たなければ…ですよ。
大丈夫、ギルドで対人戦のコツも教えてもらいました。
この世界には盗賊なども居るそうなので、襲われた時の為にラルーセンさんが教えてくれたのです。
殺さなくても無力化させれば良いのですし、昔取った杵柄……では無いですけど、タイマンですからね。
ステゴロでも無いですし、なんとかなるでしょう。
人種としてのスペックに対するハンデとして、武器も魔法も使って良いと仰るのですから、遠慮しなくて良いですよね。
「準備はよさそうね。
じゃあ、始め!」
ファナさんの合図で、マークスさんが突っ込んできます。
私は慌てず魔法を唱えます。
「サーチライト」
まずは視界を奪いましょう。
でもそれだけでは足りません。
私はマジックバッグから取り出した物を、顔面目掛けて投げつけます。
「うわっ!臭!!
なんだこれ!」
獣人さんが相手です。
視界を奪っても、優れた嗅覚で場所が分かりますよね。
なので、鼻に向かって味噌を投げつけました。
さらに追い討ちで、真横に雷を落とします。
聴覚も奪わないといけませんからね。
近づく足音で反撃されかねませんから。
目も見えず匂いもわからず耳も聞こえない、ヤルなら今です。
私はマークスさんに走り寄り、フルスイングで思いっきり、弁慶の泣き所を打ち付けます。
「うおおおおおお!」
感覚を奪ったところで、脛を力一杯打たれて蹲るマークスさん。
これが盗賊とかなら、狙う場所はアソコでしたよ。
蹲ったマークスさんの背中に馬乗りになり、首筋に短剣を突き付けます。
勝負有り、ですよね?
「そ、そこまで!」
終了を告げるファナさんの声に動揺が見られますね。
ふふふ、私が瞬殺できると思っていなかったのでしょう。
慌てて駆け寄ってきます。
短剣をしまい、マークスさんの上から降りると、土魔法で器を作り、水魔法で水を入れてマークスさんに差し出します。
「どうぞ顔を洗ってくださいね」
顔を洗いながら問いかけてきました。
「これはなんだ?
臭いし目に染みるぞ」
顔面に投げつけたので、目にも入った様ですね、すみません。
「これは味噌と言う調味料です」
「ミソ?」
「大豆と言う豆を発酵させた物ですね」
「ハッコー?」
「菌をまぶして腐らせた?」
「腐った豆を投げたのか⁈
そりゃあ臭いよな。
しかし調味料という事は、腐った豆を食べるのか?」
「食べる腐った豆ならこちらですね」
勿論取り出したのは納豆で、痛みでまだ立てないマークスさんは、尻をついたまま後退り、そばに来ていたファナさんも逃げました。
「美味しいんですよ、これ。
栄養も豊富ですし、食べ方次第で誰でも食べられると思うんですけどね」
独特な匂いなのは違いありませんので、納豆をしまった後、風魔法で匂いを飛ばします。
「ジョニー、話がずれていませんか?」
「あ、そうでした、大豆の布教は置いといて、私の勝ちで良いんですよね?
魔法や道具を使っても良いと言う話でしたから」
確認を取る私に、大きく頷くマークスさん。
「ああ、俺の負けだ。
視覚を奪われるところまでは想定内だったが、まさか鼻とミミまでやられるとはな」
マークスさんは、視界を奪いにくるだろうと、薄目にしていたそうです。
そこに聞こえた初めて聞く『サーチライト』の言葉…呪文?に気を取られ、目を閉じるタイミングが間に合わなかったと。
しかも目を閉じても眩しさを感じるところに、臭い匂いのする味噌が目に入り、痛みに慌てていたそのすぐ側で雷の大音量。
半ばパニックになった所に脛に強烈な一撃………やり過ぎましたか?
「獣人の方は嗅覚や聴覚が優れますからね。
視界を奪ったところで安心はできません」
脛をさするマークスさんに回復魔法をかけながら言うと、
「まあな、俺らは見えなくても匂いで獲物を見つけられるぞ」
得意顔をするマークスさん。
近くで聞いているアインとコニーも、予定通りと笑顔です。
でも、残りの一人、ファナさんは納得いかない顔(鳥なのに表情がわかるって凄いですよね)で口…嘴を開きます。
「ちょっと待ってよ!」
その相手が国外の人だったとしても。
こう言うのを確か【脳筋】って言うんですよね。
脳まで筋肉、筋肉は裏切らないとか、筋肉は一日にして成らずとか……。
現実逃避している場合では無いですね。
今私は城の中庭に来ています。
そして目の前には指をバキバキ鳴らしているマークスさんがいらっしゃいます。
魔王であるアインやコニーが相手だと、空を飛べて魔法の得意なファナさんが相手をしたそうなのですけど、人族である私が相手ですから、魔法が得意では無いマークスさんが、肉弾戦オンリーと言うハンデで相手をしてくださるとかなんとか。
人族は、獣人に比べて力は無いし、魔族に比べて魔法も微妙ですから、ハンデなんですって。
しかし体格の良い熊の獣人が肉弾戦で一般人を相手にすることの、一体どこがハンデなのでしょうか。
私は武器も魔法も使っていいからですか?
それにしても……ですよね。
アイン達が言うには、こうなる事がわかっていたから、私を連れてきたとか。
私が主体で作る町ですから、私が相手をしなければならない、と。
筋は通っているかもしれませんけど、だからと言って……ですよね。
でも、ここまで来たら開き直るしか無いですよね。
私は鉄パイプを手に、頭の中でシュミレーションします。
勝たなくても良いと言われましたけど、やるからには勝たなければ…ですよ。
大丈夫、ギルドで対人戦のコツも教えてもらいました。
この世界には盗賊なども居るそうなので、襲われた時の為にラルーセンさんが教えてくれたのです。
殺さなくても無力化させれば良いのですし、昔取った杵柄……では無いですけど、タイマンですからね。
ステゴロでも無いですし、なんとかなるでしょう。
人種としてのスペックに対するハンデとして、武器も魔法も使って良いと仰るのですから、遠慮しなくて良いですよね。
「準備はよさそうね。
じゃあ、始め!」
ファナさんの合図で、マークスさんが突っ込んできます。
私は慌てず魔法を唱えます。
「サーチライト」
まずは視界を奪いましょう。
でもそれだけでは足りません。
私はマジックバッグから取り出した物を、顔面目掛けて投げつけます。
「うわっ!臭!!
なんだこれ!」
獣人さんが相手です。
視界を奪っても、優れた嗅覚で場所が分かりますよね。
なので、鼻に向かって味噌を投げつけました。
さらに追い討ちで、真横に雷を落とします。
聴覚も奪わないといけませんからね。
近づく足音で反撃されかねませんから。
目も見えず匂いもわからず耳も聞こえない、ヤルなら今です。
私はマークスさんに走り寄り、フルスイングで思いっきり、弁慶の泣き所を打ち付けます。
「うおおおおおお!」
感覚を奪ったところで、脛を力一杯打たれて蹲るマークスさん。
これが盗賊とかなら、狙う場所はアソコでしたよ。
蹲ったマークスさんの背中に馬乗りになり、首筋に短剣を突き付けます。
勝負有り、ですよね?
「そ、そこまで!」
終了を告げるファナさんの声に動揺が見られますね。
ふふふ、私が瞬殺できると思っていなかったのでしょう。
慌てて駆け寄ってきます。
短剣をしまい、マークスさんの上から降りると、土魔法で器を作り、水魔法で水を入れてマークスさんに差し出します。
「どうぞ顔を洗ってくださいね」
顔を洗いながら問いかけてきました。
「これはなんだ?
臭いし目に染みるぞ」
顔面に投げつけたので、目にも入った様ですね、すみません。
「これは味噌と言う調味料です」
「ミソ?」
「大豆と言う豆を発酵させた物ですね」
「ハッコー?」
「菌をまぶして腐らせた?」
「腐った豆を投げたのか⁈
そりゃあ臭いよな。
しかし調味料という事は、腐った豆を食べるのか?」
「食べる腐った豆ならこちらですね」
勿論取り出したのは納豆で、痛みでまだ立てないマークスさんは、尻をついたまま後退り、そばに来ていたファナさんも逃げました。
「美味しいんですよ、これ。
栄養も豊富ですし、食べ方次第で誰でも食べられると思うんですけどね」
独特な匂いなのは違いありませんので、納豆をしまった後、風魔法で匂いを飛ばします。
「ジョニー、話がずれていませんか?」
「あ、そうでした、大豆の布教は置いといて、私の勝ちで良いんですよね?
魔法や道具を使っても良いと言う話でしたから」
確認を取る私に、大きく頷くマークスさん。
「ああ、俺の負けだ。
視覚を奪われるところまでは想定内だったが、まさか鼻とミミまでやられるとはな」
マークスさんは、視界を奪いにくるだろうと、薄目にしていたそうです。
そこに聞こえた初めて聞く『サーチライト』の言葉…呪文?に気を取られ、目を閉じるタイミングが間に合わなかったと。
しかも目を閉じても眩しさを感じるところに、臭い匂いのする味噌が目に入り、痛みに慌てていたそのすぐ側で雷の大音量。
半ばパニックになった所に脛に強烈な一撃………やり過ぎましたか?
「獣人の方は嗅覚や聴覚が優れますからね。
視界を奪ったところで安心はできません」
脛をさするマークスさんに回復魔法をかけながら言うと、
「まあな、俺らは見えなくても匂いで獲物を見つけられるぞ」
得意顔をするマークスさん。
近くで聞いているアインとコニーも、予定通りと笑顔です。
でも、残りの一人、ファナさんは納得いかない顔(鳥なのに表情がわかるって凄いですよね)で口…嘴を開きます。
「ちょっと待ってよ!」
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