【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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三章 町をつくる様です

133 閑話 人族の王の国の国王・後編

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暫くして、第二王妃が王女を、その後に第三王妃が、第二王子を出産し、文位と交位の両家は、他の位の家とも手を合わせ、王女と第二王子を教育しました。

第二王妃の文位の者達は、国の正しい軌跡を主観を交えず教え、この国の長き繁栄を王女と、第一王子の補佐になるであろう第二王子に教えています。

第三王妃の家の者達は、外の国の現状、東の山のさらに先にある国々や、大渓谷の先の国の動向などを、隠すことなく二人に教えています。

子供には少々難しいのでは、と思わなくも無い教えです。
正直私も知らない事柄も有ります。
今までどれだけ私が目隠しされていたか、気づく出来事が多く有ります。

かと言って、結界を保っている魔位の家系を蔑ろにできないのが現状です。
第一王子という立場と、魔位の血筋、たまに顔を合わせると、とても健やかに成長しているようで、跡取りは第一王子だと考えています。

そんなある日、祖父の言葉をふと思い出したのです。
あれはまだ、先代が亡くなって間もない頃、寂しくて泣いている私を膝に乗せて語った言葉。

『我が国は、今は王族と、魔位の張る結界で平和が成り立っておる。
だからこそ、王族の者は国のバランスを保つ為、魔位の家系の者を迎えてはならぬのだ。
まあ、お前の家族になる者は余が探すから、幸せになれ。
家族が守れぬ様な者に国は守れぬからな。
ははは、まだ難しいか』

確かあれは、私の妃候補として魔位の当主の娘、今の第一王妃と顔合わせをした日の事だったと思う。
祖父の「勝手な事をするな」と言う大きな声が、執務室から聞こえて来たのを覚えています。

小さな頃のことだから、記憶違いかも知れませんが、祖父に言われたのは、夢などでは無いと思います。
私はどんな方が家族になってくれるのだろうと、心弾ませたのを覚えています。

しかしいつの間にかすっかり忘れていました。
子供だった私が忘れたのは有り得ますが、なぜ祖父の言葉が覆ったのでしょう?

これはこのままにしておいて良いとは思えませんけど、祖父は亡く、当時の側近達も今は残っていません。
調べるにしても、時間のかかることでしょう。
それでも、このままではいけないと、私の中の何かが告げています。


跡取り問題や祖父の事以外にも、最近気づいた事なのですが、王城内で人族以外を見かけなくなった気がします。
人位の部署の者に聞いても、明確な答えが有りません。
ただ暇乞いを受けただけとの報告です。

いくら人族の国とは言え、全てが人族だけで回るわけではないのです。
位のトップは人族だとしても、部下に少数ですが亜人や魔族の者が居たはずです。
力仕事や魔法を使う仕事だと、人族だけでは足りない事が出て来ますから。

なのに、全ての者が辞職するのはおかしいです。

城下町でも、魔族や亜人の冒険者を見かけなくなって来たと報告が有りました。
商人も同様です。

何かが起こっている様なのですが、それが何なのかがわかりません。
それなのに、私の周りに信頼して相談できる相手が居ないという現実に気づいてしまいました。

今の私の側近や従者の全てが、あの一族に連なる者だと、なぜ気づかなかったのでしょう?
なぜ疑問に思うことがなかったのでしょう?

私は私が信じられなくなって来ました。


そんな頭を悩ます私の元に、西の王と東の王の連名で、先触れが届きました。

新しい町をつくる為に、その町を治める者の紹介を兼ねて、候補地を知らせる為に、お二方がわざわざ出向いて来られるとの事。

お二方に縁のある方がつくる町、きっとこれから先付き合いも出てくるでしょう。
後の世代とも長い付き合いになるでしょう。
私は第一王子も同席させることに決めました。


………その結果、奢った魔位の家系の思想と、その教育に染まり切った息子の姿が浮き彫りになることに……。


人族以外を排除すかの様な思想は危険です。
きっと姿の見えなくなった人族以外の種族の件も、第一王妃の一族と、人位の部署が結託しているのでしょう。

結界の問題はお二方が何とかして下さるそうなので、私は国内の滞った空気を、風通しの良い国にする為に動きましょう。

第一王子が生まれて、第一王妃の者達の気が王子に向かった事により、私は遅まきながら正しい道筋を学びました。
もうあの者達の言葉を聞くだけの操り人形では有りません。

それに今の私の後ろには、第二王妃と第三王妃、王女と第二王子も居ます。
その家系の者達、そして国民を守らなければなりません。
私は強く、賢くならなければなりません。

二人の王も力を貸してくれると仰って下さいました。
霧が晴れた様に色々思い出したり気付いたこのタイミング、今動かずにいつ動くというのでしょう。

私は魔位の一族をすべて捕獲する様命じました。




私は今第一王子を閉じ込めている牢から執務室へ戻って来たところです。
息子とは年に数回顔を合わせるだけでしたが、顔を合わせている時には、後継の教育も万全に施された王太子として振舞っていましたけど、それは私が本質を見抜けなかっただけなのでしょうね。

第一王妃はその母親、魔位の当主の妻とそっくりです。
母親の血筋の見た目を継いだ息子は、牢の中で今まで身につけたことのないであろう、庶民の服を着ていました。

襟の空いたシャツと、ズボン。

その空いた襟元から見えた、首の付け根に鱗が有ったのは、見間違えではなかったでしょう。
以前にも一度だけ見たことのあるそれは、何故か今まで記憶の中に沈んでいました。

一度だけ見た、第一王妃の背中の中程。
交わる時も決して夜着を脱がなかった彼女の背中。
偶然着替え中に入室してしまい見てしまった、その背中にあった物と同じです。

なぜ忘れていたのでしょう。
彼女は人族では有りません。
人族にしか見えませんが、その隠し続けたウロコが物語っています。
魔族や亜人を排除しようとしていたかの一族は………。







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