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第二章 旅は道連れ
118 港の…………
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ベッドの陰へ戻り、ホットミルクを飲む男性に声をかけます。
「私とぶつかって倒れたのは覚えていますか?」
再びベッドの陰から顔を覗かせた男性は、小さく頷く。
「転んだ時にどこか痛めていませんか?」
「大丈夫です」
「痛いところはございませんか?」
「問題ありません」
痩せ細り、ホームレスの様に見えるのに、受け答えは随分と丁寧で、チグハグな印象ですね。
「没落した位持ちか?」
「何かから逃げているとか?」
ブルースとアインが話している声が届いたのか、男性の体がビクッと震えました。
どちらにせよ何か問題があるのでしょう。
「あ…あの、わたし、もう行きますね。
ご迷惑をおかけ致しました」
立ち上がり、ふらつく足でドアに向かう男性の肩に手を置き、視線を合わせ問いかけます。
「どこか行く場所か、戻る場所があるんですか?」
揺れた視線を伏せ、小さな声で「はい」と返事をしましたけど、嘘ですね。
「急ぐ用がないのなら、体をしっかり休めてから移動した方が良いと思いますよ」
「いえ…大丈夫です………。
えっと……あの…………急ぎますから、失礼します。
お世話になりました」
目を逸せたまま、男性は部屋から出ようとしますけど、ブルースがドアの前に立ち、出入り口を塞ぎます。
「そんなにフラフラで出て行ってどうする。
また倒れるだけではないか。
言いたくなければ理由は聞かぬ、このお節介の前で倒れたのが不運だと諦めて、体を癒せ」
ブルースの言葉にアインも
「そうですね、話したくないのなら詮索もしません。
ただ、このまま行かれると、彼が…私達もいつまでも心配です」
「規格外ばかりのお節介集団だから、逆らわない方が良いかもね」
チャックはお節介集団だと言いますけど、別に私はお節介では無いですよ。
アインが言うように、このまま別れると、私がいつまでも気になるだけです。
だから私情です。
「でも…ご迷惑を……かけると思いますので………」
「行く先が有るのなら、そこまで送らせて下さい。
そうすれば私も安心ですから」
そう言うと、男性は視線を揺らし、返事に詰まりました。
「……もし、何かから逃げているのでしたら、私達はここの住人ではありませんので、すぐに遠くへ行きますから、途中まででも一緒に行きますか?」
一見ホームレスに見える男性ですけど、言葉遣いや所作から、有る程度の教育を受けている様に見受けられます。
なら、何かから、どこかから逃げて来たのでは?と思い問いかけると、男性は驚いた様にこちらを見てきました。
「話したくないのなら何から逃げて来たのかは聞きません」
「でも……もしかすると…わたしは犯罪者かもしれませんよ」
「あなたがそうだとは思えません」
「えっと……あの……とても大きなものに追われてる…のかもしれませんよ」
「大丈夫ですよ。
私達、わりと強いんです」
私が男性の言葉に返事を返している後ろで、ブルースが「わりとどころではないわ、規格外が」とか失礼なこと言っていますけど、無視です。
「それに万が一あなたが悪人だとしても、それは私の見る目がなかっただけの事です。
だから安心して私を騙してください」
絶対に悪人だと思わないですし、悪い事を考えていたとしても、私以外の家族が気付きます。
アインもブルースも何も言わないと言うことは、彼らも悪人だと思わないと言うことですから。
もし私達全員を謀る事ができたのなら、それはそれであっぱれですよね。
「…………わたしは東から逃げて来ました。
もしかすると追っ手がかかっているかもしれません………。
……それでも……連れて行ってもらえますか?…………」
目に涙を浮かべて問いかけて来ます。
東から逃げて来たのでしたら、余程のことがない限り、山脈や海を越えてまで追ってこないとは思いますけど、私達は内陸部へ向かうのですから、この広い国内でそうそう見つかることはないでしょう。
何から逃げているのかは分かりませんけど、詳しくは彼が話したくなった時にでも聞けば良いと思います。
私はアイン達に振り返り
「そう言うわけなんですけど、彼を同行させて良いですか?」
と、尋ねます。
「連れて行くと決めておるのだろ?
我は別に構わん」
「悪い事をして逃げているのかもしれませんけど、彼が悪人だとは思えませんので、私も構いませんよ」
「……何かあってもうちの家族ならどうとでもできるだろうし、ジョニーが連れて行きたいのならいいんじゃない」
反対意見は出ませんので、彼を同行させる事に決めました。
「あ、そうだ、私達は私以外亜人なのですけど、あなたは人族ですよね?」
「はい……親は亜人と人族ですけど、私は人族です」
人族と亜人との間に子供ができると、どちらかの種族になるそうです。
亜人の能力を持った人族、人族の寿命の亜人、と言った感じのハーフになる事はあっても、種族的なハーフにはならないそうです。
「そうだ、自己紹介が遅れましたね。
私の名前はジョニー、人族です。
あちらが魔族のアインと亜人のブルース、同じく亜人でチャックです」
私が簡単に種族と名前だけ伝えると、彼も名前を教えてくれました。
「私の名前は、ヨーコーです」
……………港で出会った髪の長いヨーコ?
ヨコハ●ですか?ヨコス●ですか?
あ、男性ですね。
ヨーコーですね。
ダメだ、頭の中でエンドレスで曲が流れています。
停止スイッチはどこだーー!
「私とぶつかって倒れたのは覚えていますか?」
再びベッドの陰から顔を覗かせた男性は、小さく頷く。
「転んだ時にどこか痛めていませんか?」
「大丈夫です」
「痛いところはございませんか?」
「問題ありません」
痩せ細り、ホームレスの様に見えるのに、受け答えは随分と丁寧で、チグハグな印象ですね。
「没落した位持ちか?」
「何かから逃げているとか?」
ブルースとアインが話している声が届いたのか、男性の体がビクッと震えました。
どちらにせよ何か問題があるのでしょう。
「あ…あの、わたし、もう行きますね。
ご迷惑をおかけ致しました」
立ち上がり、ふらつく足でドアに向かう男性の肩に手を置き、視線を合わせ問いかけます。
「どこか行く場所か、戻る場所があるんですか?」
揺れた視線を伏せ、小さな声で「はい」と返事をしましたけど、嘘ですね。
「急ぐ用がないのなら、体をしっかり休めてから移動した方が良いと思いますよ」
「いえ…大丈夫です………。
えっと……あの…………急ぎますから、失礼します。
お世話になりました」
目を逸せたまま、男性は部屋から出ようとしますけど、ブルースがドアの前に立ち、出入り口を塞ぎます。
「そんなにフラフラで出て行ってどうする。
また倒れるだけではないか。
言いたくなければ理由は聞かぬ、このお節介の前で倒れたのが不運だと諦めて、体を癒せ」
ブルースの言葉にアインも
「そうですね、話したくないのなら詮索もしません。
ただ、このまま行かれると、彼が…私達もいつまでも心配です」
「規格外ばかりのお節介集団だから、逆らわない方が良いかもね」
チャックはお節介集団だと言いますけど、別に私はお節介では無いですよ。
アインが言うように、このまま別れると、私がいつまでも気になるだけです。
だから私情です。
「でも…ご迷惑を……かけると思いますので………」
「行く先が有るのなら、そこまで送らせて下さい。
そうすれば私も安心ですから」
そう言うと、男性は視線を揺らし、返事に詰まりました。
「……もし、何かから逃げているのでしたら、私達はここの住人ではありませんので、すぐに遠くへ行きますから、途中まででも一緒に行きますか?」
一見ホームレスに見える男性ですけど、言葉遣いや所作から、有る程度の教育を受けている様に見受けられます。
なら、何かから、どこかから逃げて来たのでは?と思い問いかけると、男性は驚いた様にこちらを見てきました。
「話したくないのなら何から逃げて来たのかは聞きません」
「でも……もしかすると…わたしは犯罪者かもしれませんよ」
「あなたがそうだとは思えません」
「えっと……あの……とても大きなものに追われてる…のかもしれませんよ」
「大丈夫ですよ。
私達、わりと強いんです」
私が男性の言葉に返事を返している後ろで、ブルースが「わりとどころではないわ、規格外が」とか失礼なこと言っていますけど、無視です。
「それに万が一あなたが悪人だとしても、それは私の見る目がなかっただけの事です。
だから安心して私を騙してください」
絶対に悪人だと思わないですし、悪い事を考えていたとしても、私以外の家族が気付きます。
アインもブルースも何も言わないと言うことは、彼らも悪人だと思わないと言うことですから。
もし私達全員を謀る事ができたのなら、それはそれであっぱれですよね。
「…………わたしは東から逃げて来ました。
もしかすると追っ手がかかっているかもしれません………。
……それでも……連れて行ってもらえますか?…………」
目に涙を浮かべて問いかけて来ます。
東から逃げて来たのでしたら、余程のことがない限り、山脈や海を越えてまで追ってこないとは思いますけど、私達は内陸部へ向かうのですから、この広い国内でそうそう見つかることはないでしょう。
何から逃げているのかは分かりませんけど、詳しくは彼が話したくなった時にでも聞けば良いと思います。
私はアイン達に振り返り
「そう言うわけなんですけど、彼を同行させて良いですか?」
と、尋ねます。
「連れて行くと決めておるのだろ?
我は別に構わん」
「悪い事をして逃げているのかもしれませんけど、彼が悪人だとは思えませんので、私も構いませんよ」
「……何かあってもうちの家族ならどうとでもできるだろうし、ジョニーが連れて行きたいのならいいんじゃない」
反対意見は出ませんので、彼を同行させる事に決めました。
「あ、そうだ、私達は私以外亜人なのですけど、あなたは人族ですよね?」
「はい……親は亜人と人族ですけど、私は人族です」
人族と亜人との間に子供ができると、どちらかの種族になるそうです。
亜人の能力を持った人族、人族の寿命の亜人、と言った感じのハーフになる事はあっても、種族的なハーフにはならないそうです。
「そうだ、自己紹介が遅れましたね。
私の名前はジョニー、人族です。
あちらが魔族のアインと亜人のブルース、同じく亜人でチャックです」
私が簡単に種族と名前だけ伝えると、彼も名前を教えてくれました。
「私の名前は、ヨーコーです」
……………港で出会った髪の長いヨーコ?
ヨコハ●ですか?ヨコス●ですか?
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ヨーコーですね。
ダメだ、頭の中でエンドレスで曲が流れています。
停止スイッチはどこだーー!
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