【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

112 白雪の記憶・前編

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えーと、複写のイメージですね…どんなもんでしょう。
複写と言えばコピーですけど、コピー機に挟んで蓋して……イメージが違いますね。

スキャナーでスキャンして、それをプリンターで出力する……これならどうでしょう?

記憶の全部を読んだり、全ての魔法やスキルを複写しないようにしないといけませんね。

〈あ、因みに物の記憶も読めるからね 〉

サイコメトリーとか言うやつですね………ティちゃん…ティちゃんは私にどうなって欲しいんですか?
このスキル獲得するの辞めようかな……。

〈白雪の記憶、読まないといけないんじゃ無い?
だって迷い子なら一度群れに行って、家族にしました報告しなきゃジョニーは誘拐犯だよ 〉

それは先に言って欲しかった……。
そうですよね、こんな幼児(おさなご)を、本人が良いようだったからと言って、勝手に亜人化してしまったのですから、一言ご家族に挨拶しないと、誘拐犯と思われても仕方ないですよね。

〈それに言葉が通じないんだから、群れの居た場所なんて記憶を探るしか無いんじゃ無いの? 〉

それも有りますよね。
言葉が通じたとしても、こんな小さな子が、大海原の何処から来たのかなんて、言葉で伝えてもらうのは無理でしょう。
海に目印なんてそうそう無いのですから。

〈後は多分……記憶を読んだ方が良いと思うんだよね。
言ってる事はわかんなくても、伝わって来たものが有ったんじゃ無いの? 〉

ああ……うん…はい………、なんとはなしにそんな感じがします。

スキルのイメージはスキャナーで、ですけど、全てを見るのはダメな気がします。
知りたい記憶は、白雪が居た群れの場所、白雪の両親、群、なぜ人里…人の住む陸地の近くに居たのか、です。
知りたいのは、先程白雪が伝えようとした言葉です。

〈んー、相手の記憶が年代やジャンルでファイルされてる、とか思うのはどう? 〉

おお、ティちゃんのアドバイスが的確です。

よく『記憶の引き出し』とか聞きますけど(え?私だけですか?)その引き出しが年代で、中にファイルが詰まっている。
必要な引き出しのファイルを取り出し、その中で必要な書類だけをスキャンする、これでどうでしょう。

白雪は生まれて間もない様ですから、引き出しは一つしかないでしょう。
その中から、【群】【両親】の見出しのものを取り出して……

「じゃあちょっと記憶を複写するね。
怖くないから大丈夫だよ」

白雪の額に当てた右手がスキャナーで、目を閉じ該当書類をスキャンする感じで…………。




『なんなの、この異常な色は』

目の前はモヤがかかってはっきりと見えないけど、怒りを含んだ女性の声ははっきりと聞こえて来る。

『こんな目立つ色なんだから、直ぐに他の生き物に食べられちゃうわよ』

別の女性のあざける様な言葉。

『コレの側にいると何だか寒くないか?』

男の声。

『色からして、魔法を使っておるのじゃろう』

年配の男性の声。

『気持ち悪い、こんなのは俺の子じゃ無い』

先程の男の声、父親のようだ。

『何で私からこんなのが生まれて来たのよ!
長老に言われなきゃお乳だってあげたくないわ!』

いつでも怒りを含ませた声の女性は母親のようだ。

『海に捨てるとしても、ある程度泳げる様にならなければ、サメやらが寄って来る。
しばらく辛抱して乳を与えろ』

年配の男性の声…長老のようだ。

『何だコイツは!
色だけじゃなくてバケモノか!』

父親の声

『オスとメスの両方のシルシが有るなんて、気持ち悪いわね』

母親では無い女性の声。

『いつまでこの群れに置いとくんだ』

男の声……少し目が見えて来た。

『ここまで育てたんだからもう良いでしょ!』

怒ってばかりの母親。

『近づくな!このバケモノ!』

シッポで弾き飛ばす父親
近づくと口を開けて威嚇する母親
遠巻きにしてヒソヒソ話している群の大人達。

『泳げるようになったろう、ここまで大きくしてやったんだ、そろそろ出て行ってもらおう』

やってきた長老の言葉。

『近くで襲われると困るから、うんと遠くまで泳いで行け。
ここまで育てた恩を感じるなら、うんとうんと遠くまで行け』

生まれて二週間目の事だ。

シッポで海に落とされて、群れの大人達から追いやられ、どんどん住処から離れていく。

『ここまで来ればいいだろう』

『そろそろ戻ろうか』

『サメに食われるか、魔物に食われるか、人に食われるか、どれも悲惨だな』

『バケモノだから仕方ないさ』


  サメってなんだろう
  魔物ってなんだろう
  人ってなんだろう…


追ってきた大人達は居なくなったけど、戻るわけにはいかない。
そのままずっと泳いでいく。
日が暮れても泳ぐ。
お腹すいても泳ぐ。
何処に行けば良いのか、どうすれば良いのかわからない。
とにかく遠くへ行けと言われたから、ひたすらに泳ぎ続ける。


三度目の朝日が空の真ん中に有る。

  疲れた
  お腹がすいた
  疲れた
  眠い
  疲れた…………

  もうそろそろ泳ぐのをやめていいかな…

泳ぐのをやめて波に漂っていると、何だか温かいモノを感じた。

  なんだろう?
  死ぬのなら温かいモノの近くが良いかな。

最後の力を振り絞ってまた泳ぐ。

大きなものと少し小さなものから温かいモノが流れてくる。
大きなものの上に載っているのは……魔物?人?
あの温かいモノになら食べられても良いや。

大きなもののシッポに捕まった。





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