【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
110 / 206
第二章 旅は道連れ

110 プルプルするのはデフォルトの様です

しおりを挟む
「人が天敵なのに、なぜこんな大陸に近い場所に居るのでしょう?」
「迷子なの?」
シナトラがツンツン突きながら声をかけていましたけど、プルプル震えていた灰色アザラシの赤ちゃんは気絶してしまいました…。

「さっき美味しそうとか言ってたから怖がられたんだよ」
ため息をつきながらチャックが言います。
「美味しそうって言ったの僕じゃ無いもん、僕は美味しいのって聞いただけだもん」
あまり変わらないと思います。

「それだけではなく、元々人が天敵なのですから、私達に囲まれているこの状況が怖かったのでしょうね」
アインのフォローは最適です。
険悪な雰囲気になりかけていた空気が霧散されました。

「迷い子なら群れに返してやらねばな」
「そんなこと言って独り占めして食べるんじゃないの?」
「そんな事するわけなかろう!」
「食べないの?」
「この状況でそれを言えるお前は凄いな」
「 ? 」

私とチャックとアインの視線を感じたブルースに対して、何も気にしないルシーはある意味凄いかも知れませんね。

「食べるとかナイワー」
「なんでもかんでも食べようとしないでください」
チャックと私の言葉に続き、アインも言います。

「食べるとしても幼体はだめですよ。
幼体を食べているとそのうちその種族が滅亡してしまいますからね」
チャックも大きく頷きます。

……いや、間違っていませんけど…間違ってはいませど、アインさん?チャックさん?

可愛いから食べない、なんてのはこの世界では無い感覚なのでしょうね。
頭でわかっていても、心が付いていきません。


「あ、気付いたようですよ」
ディビッドの言葉に皆の視線が集まります。
灰色アザラシの赤ちゃんは、プルプル震えながら後退りしています。

「皆で行くとまた気を失うかも知れません。
ここはジョニーに任せて、私達は離れましょう」
「その方が良いかと思います」
常識人二人に促され、ブルース達が距離を取ります。

私は驚かせないようにゆっくりと近寄りながら声をかけました。

「怖がらなくて良いですよ、あなたを傷つけませんから、お話を聞かせてください」
1メートル程距離を取り、立ったままだと威圧感があるかも知れませんので、膝をついて話しかけます。

「言葉はわかりますか?」

プルプルしながら小さく頷きます。

「念話はできますか?」

プルプルしながら小首を傾げます。
念話がわからないようですね。

「迷い子ですか?
もしそうならあなたの居た群れまで送り届けますけど」

プルプルしていた灰色アザラシの赤ちゃんの体がピタリ止まり、ガクガクと大きく震え出しました。
なぜ?

「えっと………群れには戻りたく無い…のですか?」

ガクガク震えながら何度も頷きます。

「わかりました、無理には戻しません」

ガクガクがプルプルに戻りました。
余程群れに戻りたく無いのでしょう。

「群れに戻りたく無いと言われましても、人に見つかると酷い目に遭うかも知れませんよ」

またガクガクしだしました。

「群れには戻りたく無い、人にも見つかりたく無い……そう言う事ですか?」

プルプルに戻って頷きます。

「私達に付いてきたいと言う事で宜しいですか?」

プルプルしながら頷きます。

「連れて行くだけで良いですか?
それとも皆の様に亜人になりますか?」

プルプルがピタリと止まりました。
つぶらな瞳でこちらを見つめたまま、大きく頷きます。

「そうですか……なら一つ提案なのですけど、亜人になるだけではなく、私の家族になりませんか?」

つぶらな瞳でこちらを見つめたまま、首を傾げます。

「家族になるのなら、真名を付けさせていただきます。
真名を付けると結び付きが強くなり……難しいことはいいですね。
家族になると全力で守らせていただきます。
私だけでなく、他の家族もあなたを守りすよ」

灰色アザラシの赤ちゃんは、おずおずと近づいてきて、私の足に頭を擦り付けました。

「真名を付けても良いのですね?」

「キュー」

頭を擦り付けながら、甲高い声で鳴きます。
あざといです、可愛いです、庇護欲そそります、撫で回したいです………、落ち着け俺。

さて、名前はどうしましょう。
アザラシですから、浮かんだのはごまちゃん、たまちゃんなどですが、ピンときません。
白くてもちもちしていて、丸みがあって、冷んやりしてて………あのアイスが浮かんできましたね。

「それではあなたの名前は【白雪(大福)】でどうでしょう」

頭を撫でながら名前を呼ぶと、いつものようにほんのり光り、そこには白い髪、黒い瞳の全裸の一歳くらいの幼児が現れました。

………うん、赤ちゃんみたいですので、全裸でも仕方ないですよね。
大きめの布をマジックバッグから取り出して包みました。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...