【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

109 海は怖いんです

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何だかんだあった大陸の東側から、只今バスに乗って海を移動中です。
結構豪快に泳いでいますけど、流石の乗り心地で、揺れはあまり感じません。

ただ!

ただ、私カナヅチなのですよ。
ほぼ揺れない、最高の乗り心地と言えど、揺れるのは揺れます。
落とされない様に、体に力が入ります。

「ジョニーさん、すごい顔色だけど大丈夫か?」
空を飛んでいるディビットが声をかけてきます。

「大丈夫ですよ~、ポニーが私を落とすわけないですし、大丈夫ですよ~」

《落とす様な事せんよ。
安全運転やから安心しとき》

ポニーもそう言ってくれますし、チャックが膝の上で重石になってくれています。
そうそう落ちることはないでしょう。

「落ちないと分かっていても、周りが水だらけだから、どうしても体に力が入ってしまうんですよね」

水が怖いわけでは有りません。
風呂も入るし、若い頃仲間と川やプールでも遊んでいました。

ただ!

海って足がつかないじゃないですか!
足さえつけば溺れないけど、足がつかないと溺れるじゃないですか!
それが怖いんですよ。

プールは大きくてもサイズは限られていますし、人がうじゃうじゃ居るから、万が一溺れても大丈夫じゃないですか。

川は流れがあるけど、水遊びする様な場所は深さもたかが知れてますので怖くないです。

でも海はダメです。
足がつかないし、海水浴場でもない限り、人は密集していません。
それに引き潮に乗ってしまうと、どこまで流されるか分かったもんじゃないんですよ?

更に海の中にはサメだっているし、ダイオウイカに絡まれたらどうするんですか?
ジンベイザメや鯨に丸呑みされるかも知れないんですよ?
泳いで逃げられない私には、本物が出るお化け屋敷より怖いです。

〈考え過ぎだと思う…… 
変なテレビ番組の見過ぎだとも思う 〉

ティちゃんが何か言っていますけど、怖いもんは怖いんです。

「なんなら、俺がジョニーさんを抱えて飛ぼうか?」
気の利くディビッドの言葉ですけど、抱えて飛んでもらったとしても、海の上ですから、万が一落ちてしまったら…………。

「ありがとうございます。
気持ちだけ受け取りますね。
それより、私の事はさん付けせずに、ジョニーと呼んでください。
家族なんですから」

お礼とついでに、気になってた事も伝えました。
さん付けって、他人行儀ですもんね。
「……わかった、ジョニーと呼ばせて貰う。
それと気が変わったらいつでも言ってくれ」

気遣いの出来る方ですけど、見た目中年男性に抱かれて空を飛ぶ、見た目未成年の男性………ちょっとシュールですよね。

「…………オレだってもっと大きかったら抱えて飛べるのに……」
チャックが可愛いことを言っているので、頭を撫でてあげました。


私達は一気に目的地を目指すのではなく、空からディビッドが島を見つけたら、そちらで休憩を取りながら進んでいます。
ポニー達を休ませないといけませんからね。

島は無人島だったり、人が住んでいたりと色々です。
夜に海を行くのは危ないので、無人島ならそのまま泊まりますし、島民が居れば、ついでに商売もします。

カカルの民の乳製品は何処でも大人気ですよ。
それに内陸部の魔化した動物の肉も、島の住民の口にはなかなか入らない様で、こちらも人気です。

現金や宝石の支払いではなく、島特有の植物や果物、海産物との物々交換です。
意外と特殊進化した果物や、内陸部では滅多に目にすることが無くなった、珍しい植物なども有りました。
アインが大喜びです。



そろそろロスフォータ南の港町へ到着というところで問題が起きました。

《ええーと……あんな、ジョニー………ちょっとディビッドに後ろ見てもろおてよい?》

《後ろ、ですか?》

《なんか知らんけど、シッポになんか食いついとるみたいやねん》

《は?》

ディビッドに頼んで後ろを見てもらったのですけど、
「確かに何か居る。
白くて丸い……魚じゃない生き物。
…すまん、俺は海の生き物のことはよくわからないんだ」

荒野に住む鳥ですからね、海の生物に詳しくないのは当然ですね。

《シッポを振っても取れそうにないですか?》

《さっきからパタパタ動かしとるんやけど、離れそうにないんよ。
近くに陸地無いかな?》

一先ず近くの島へ上陸し、その生き物をどうにかする事にしました。

「こ……これは………」
「珍しいですね」
「……可愛いね」
私、アイン、チャックの反応に対して、

「丸々として美味そうだな」
「柔らかくて美味しそうね」
「これ美味しいの?」
肉食の3人!それは無い!

シッポに食いついていたのは、ゴマフアザラシの赤ちゃんでした。
これは卑怯です、トキメキます。
つぶらな黒い瞳がウルウルしています。
キューキュー鳴いてプルプルしています。
卑怯です、あざといとか言うんでしたっけ?
庇護欲を駆り立てます。

「灰色アザラシの幼体ですね。
白い体なのは珍しいですから、魔力持ちなのでしょう。
本来ならもっと沖合の、人の住まない場所に生息する生き物です」

ゴマフアザラシでは無い様です。
本来なら全身黒色なのだそうです。
地球とは生態系が違うようですね。

生息地は岩礁地帯で、人(獣人含む)が住まない、分け入らない場所だそうです。
濡れた岩が黒く見えるので、体が黒くなったけど、元々の体の色はグレーだったので、黒アザラシではなく、灰色アザラシと呼ばれるそうです。

私の中でアザラシは、寒い地域に住んでいるイメージですけど、こちらでは人の居ない場所なら何処にでも居るそうです。

「人が天敵なのですか?」
「そうですね、皮は水を弾くので、装飾品で重宝されますし、油はよく燃えるので燃料に、肉は美味しいですし、骨は軽くて丈夫なので、加工品に使われます。
つまり余すところなく利用できるので、乱獲されてしまい、絶滅の危機に晒されたそうです」

余すとこなく使えて乱獲されたとは、地球のクジラみたいですね。
この世界の造船技術ですと、岩礁地帯に生息していれば、乱獲されることもないでしょう。
絶滅しなくてよかったですね。






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