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第二章 旅は道連れ
103 新しい家族は
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「これは真名を付けて良いんですよね?」
言葉は発せていませんけれど、意思の疎通はできていると思います。
名付ける前に、アインに確認してみました。
「そうですね…それで良いかと思いますよ」
「また家族が増えるんだね」
何か諦めたようなアインとは対照的に喜んでいるシナトラ。
その横でブルースとチャックも話しています。
「三羽目の鳥か」
「あ、リンも家族に入れてくれるんだ」
「当たり前だろう、お前の妹なのだろう?」
「……………うん……ありがと」
皆も同意してくれたので、早速名前をつけましょう。
白頭鷲ですからね、名前は一つしかありませんよ。
私は白頭鷲に近寄り、そっと頭に手を伸ばすと、彼は掌に頭を擦り寄せて来ました。
「先に確認なのですけど、オスで良いのですよね?」
メスなら違う名前にしなければなりませんから。
私の問いかけに、ピュイと鳴いて答えます。
どうやらオスで良かったようですね。
それならやはり……
「君の名前は『(ハーレイ)ディビット(スン)』だよ」
見慣れた光に包まれた白頭鷲は、見た目年齢30歳程の、オレンジ色の髪をした男性の姿に変わりました。
「…あー……あー…………」
彼は何度か声を出した後、咳払いを一つして話しだしました。
「言葉も通じないのに意思を読み取っていただき、ありがとうございました」
少し掠れた低い声です。
まだ声を出すのに慣れてないから掠れているのでしょうか。
でも、とても流暢に話します。
「今更ですけど、亜人化だけでなく、真名を付けてしまったのですけど、良かったのですか?」
「…【真名】と言う物はよくわかりませんが、【家族】とは【群】の事ですよね?
俺をあなたの群に入れて欲しくて近付きました」
彼の話を聞きますと、彼はとても狩りが上手いらしく、その上火と雷の魔法を使えるそうなのです。
彼は巣立ったばかりの若い鳥や、歳を取ったり、怪我をしたりなどで上手く獲物を取れない個体に、自分の獲物を分けていたそうです。
そこに目を付けた同族の白頭鷲が、おこぼれを貰おうと集まり、いつの間にか群れをなす様になっていたのだとか。
「同族の仲間を助けようと考えたのが間違えだったのでしょうか。
気付けば俺の周りは狩りをしないものばかりになってしまいました。
我らは誇り高い『大狩り鳥』のはずなのに、弱き者の様に群れて、他者の獲物を当てにするなど、とてと嘆かわしいことです」
随分と語彙が豊富の様ですね。
話の内容より、そちらが気になってしまうのはマズイですよね。
「群れから離れようにも、交代で見張られていて、離れられません。
今も遠くからこちらの様子を伺っています。
大狩り鳥の名誉の為にも、彼ら自身の為にも、俺は群れから離れなければならないと思っていました」
確か猛禽類は群れない筈ですよね。
孤高のハンターと言うイメージですから。
それが狩りもせず、強者のはおこぼれに群がるのは、確かに何か違う感が拭えませんね。
「だが何故(なにゆえ)コイツに声をかけようと思ったのだ?
我らは普通の人族の団体に見えると思うのだが」
そうですよね、魔力の強く無い亜人の方ですと、何かしら痕跡が残るのです。
例えば獣人の方なら、ミミや尻尾が動物のそれだったり、魚人の方ですと、何処かしらに鱗が有ったりなど。
でも一定以上の魔力を持っていますと、見た目はまるっきり人族にできる様になるので、今は皆ミミも尻尾もしまっている状態です。
チャックは初めの頃は翼が出たままでしたけど、私から魔素を補給するようになってしまえる様になりました。
ブルースは元から人族そのままの見た目ですし、シナトラも普段はミミと尻尾もしまっていますけど、お酒を飲んだり、気が緩んだり昂ったりすると、無意識に出たりしする様です。
でも今は皆ミミも尻尾も出ていないので、人族の集団に見える筈です。
「この方が無性人で、貴方達を亜人化したのが見てわかったからです」
「見て分かるだと?」
そんな事があるのかと、ブルースがアインに視線を向けますが、アインも首を傾げています。
「ジョニー…彼は無性人では有りませんが、確かに名付けをして、私達を家族とし、繋がりを持ちました。
貴方は鑑定スキルをお持ちなのですか?」
鑑定スキルは魔力の流れか何かしらを感知し、繋がりが有る事が分かる場合もあるとは聞いたことがあります。
「いえ、鑑定は持っていません。
ただ目が良いだけです。
皆さんの元の姿が今の姿にダブって見えています。
ダブり具合で人となったばかりだとわかりました。
生まれながらの亜人の方ですと、ダブって見えたりしませんし、亜人化して長い時が過ぎると、姿が完全に重なりますから」
ティちゃん、そんな不思議な視界が有るの?
〈真贋の目を持っているんじゃないかな。
鑑定スキルの一部と言えば一部だけど、普通は見えない物も視覚できてるんだと思うよ 〉
〈見えない物も見える……幽霊とかも見えるのでしょうか 〉
〈幽霊と言うより、そこに思念が残っていたら見えるかもね 〉
〈おおおおお 〉
猛禽類は元々目が良いと言われていますけど、見えない物まで見てしまうとは、凄いですね。
その真贋でチャック達がほぼ同時期に亜人化したのを見抜き、私を無性人だと思ったのでしょう。
「名付けは出来ますけど、無性人では無いですよ。
その辺りの詳しい事は追々説明しますね」
私の言葉に、よろしくお願いしますと頭を下げる彼…ディビット。
「難しい話終わった?
ディビットおじさん宜しく、僕はシナトラだよ。
後チャック兄ちゃん。
緑に紫に金色に白と、おじさんのオレンジ。
目がチカチカするね」
そう言ってシナトラが笑います。
確かに。
魔力持ちの動物は、その属性の色をしていて、その色が髪の毛の色になりますから、色とりどりです。
これにルシーの白に近い水色も入るから、更にカラフルで、私とコニーの黒髪が逆に目立ちそうですね。
日本でも髪を色んな色に染めている人はいましたけど、染めたのとは違い鮮やかです。
その上私以外の皆顔が良いので、マンガやゲームに出てきそうな集団ですよね。
言葉は発せていませんけれど、意思の疎通はできていると思います。
名付ける前に、アインに確認してみました。
「そうですね…それで良いかと思いますよ」
「また家族が増えるんだね」
何か諦めたようなアインとは対照的に喜んでいるシナトラ。
その横でブルースとチャックも話しています。
「三羽目の鳥か」
「あ、リンも家族に入れてくれるんだ」
「当たり前だろう、お前の妹なのだろう?」
「……………うん……ありがと」
皆も同意してくれたので、早速名前をつけましょう。
白頭鷲ですからね、名前は一つしかありませんよ。
私は白頭鷲に近寄り、そっと頭に手を伸ばすと、彼は掌に頭を擦り寄せて来ました。
「先に確認なのですけど、オスで良いのですよね?」
メスなら違う名前にしなければなりませんから。
私の問いかけに、ピュイと鳴いて答えます。
どうやらオスで良かったようですね。
それならやはり……
「君の名前は『(ハーレイ)ディビット(スン)』だよ」
見慣れた光に包まれた白頭鷲は、見た目年齢30歳程の、オレンジ色の髪をした男性の姿に変わりました。
「…あー……あー…………」
彼は何度か声を出した後、咳払いを一つして話しだしました。
「言葉も通じないのに意思を読み取っていただき、ありがとうございました」
少し掠れた低い声です。
まだ声を出すのに慣れてないから掠れているのでしょうか。
でも、とても流暢に話します。
「今更ですけど、亜人化だけでなく、真名を付けてしまったのですけど、良かったのですか?」
「…【真名】と言う物はよくわかりませんが、【家族】とは【群】の事ですよね?
俺をあなたの群に入れて欲しくて近付きました」
彼の話を聞きますと、彼はとても狩りが上手いらしく、その上火と雷の魔法を使えるそうなのです。
彼は巣立ったばかりの若い鳥や、歳を取ったり、怪我をしたりなどで上手く獲物を取れない個体に、自分の獲物を分けていたそうです。
そこに目を付けた同族の白頭鷲が、おこぼれを貰おうと集まり、いつの間にか群れをなす様になっていたのだとか。
「同族の仲間を助けようと考えたのが間違えだったのでしょうか。
気付けば俺の周りは狩りをしないものばかりになってしまいました。
我らは誇り高い『大狩り鳥』のはずなのに、弱き者の様に群れて、他者の獲物を当てにするなど、とてと嘆かわしいことです」
随分と語彙が豊富の様ですね。
話の内容より、そちらが気になってしまうのはマズイですよね。
「群れから離れようにも、交代で見張られていて、離れられません。
今も遠くからこちらの様子を伺っています。
大狩り鳥の名誉の為にも、彼ら自身の為にも、俺は群れから離れなければならないと思っていました」
確か猛禽類は群れない筈ですよね。
孤高のハンターと言うイメージですから。
それが狩りもせず、強者のはおこぼれに群がるのは、確かに何か違う感が拭えませんね。
「だが何故(なにゆえ)コイツに声をかけようと思ったのだ?
我らは普通の人族の団体に見えると思うのだが」
そうですよね、魔力の強く無い亜人の方ですと、何かしら痕跡が残るのです。
例えば獣人の方なら、ミミや尻尾が動物のそれだったり、魚人の方ですと、何処かしらに鱗が有ったりなど。
でも一定以上の魔力を持っていますと、見た目はまるっきり人族にできる様になるので、今は皆ミミも尻尾もしまっている状態です。
チャックは初めの頃は翼が出たままでしたけど、私から魔素を補給するようになってしまえる様になりました。
ブルースは元から人族そのままの見た目ですし、シナトラも普段はミミと尻尾もしまっていますけど、お酒を飲んだり、気が緩んだり昂ったりすると、無意識に出たりしする様です。
でも今は皆ミミも尻尾も出ていないので、人族の集団に見える筈です。
「この方が無性人で、貴方達を亜人化したのが見てわかったからです」
「見て分かるだと?」
そんな事があるのかと、ブルースがアインに視線を向けますが、アインも首を傾げています。
「ジョニー…彼は無性人では有りませんが、確かに名付けをして、私達を家族とし、繋がりを持ちました。
貴方は鑑定スキルをお持ちなのですか?」
鑑定スキルは魔力の流れか何かしらを感知し、繋がりが有る事が分かる場合もあるとは聞いたことがあります。
「いえ、鑑定は持っていません。
ただ目が良いだけです。
皆さんの元の姿が今の姿にダブって見えています。
ダブり具合で人となったばかりだとわかりました。
生まれながらの亜人の方ですと、ダブって見えたりしませんし、亜人化して長い時が過ぎると、姿が完全に重なりますから」
ティちゃん、そんな不思議な視界が有るの?
〈真贋の目を持っているんじゃないかな。
鑑定スキルの一部と言えば一部だけど、普通は見えない物も視覚できてるんだと思うよ 〉
〈見えない物も見える……幽霊とかも見えるのでしょうか 〉
〈幽霊と言うより、そこに思念が残っていたら見えるかもね 〉
〈おおおおお 〉
猛禽類は元々目が良いと言われていますけど、見えない物まで見てしまうとは、凄いですね。
その真贋でチャック達がほぼ同時期に亜人化したのを見抜き、私を無性人だと思ったのでしょう。
「名付けは出来ますけど、無性人では無いですよ。
その辺りの詳しい事は追々説明しますね」
私の言葉に、よろしくお願いしますと頭を下げる彼…ディビット。
「難しい話終わった?
ディビットおじさん宜しく、僕はシナトラだよ。
後チャック兄ちゃん。
緑に紫に金色に白と、おじさんのオレンジ。
目がチカチカするね」
そう言ってシナトラが笑います。
確かに。
魔力持ちの動物は、その属性の色をしていて、その色が髪の毛の色になりますから、色とりどりです。
これにルシーの白に近い水色も入るから、更にカラフルで、私とコニーの黒髪が逆に目立ちそうですね。
日本でも髪を色んな色に染めている人はいましたけど、染めたのとは違い鮮やかです。
その上私以外の皆顔が良いので、マンガやゲームに出てきそうな集団ですよね。
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