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第二章 旅は道連れ
96 名前は覚え易いのが一番だと思います
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結構な時間二人で話をしていた様で、ランさんが呼びに来た時には陽が傾きかけていました。
「それでレシピはどうなったのかしら?」
「「あ………」」
そうでした、大豆の加工品を使ったメニューを教えるために来たのでしたよね。
「いや、姉さんごめん、まだその前の段階で、話がそこまで行ってなかった」
頭をかきながらナシメントさんが謝ったのですけど、それで許してもらえなかったようです。
「ポ~~チ~~~、何のために来てもらったと思ってんのよ!」
ポチ?
「あ、姉ちゃん!しっ!しっ!しーーーーっっ!!!」
「なんでそんなに自分の名前を嫌がるのよ、ジョン爺ちゃんが付けてくれた名前、可愛いじゃない」
ねー、アイン達の方を向きます。
「可愛い響きですね」
「あまり聞いた事の無い名前だな。
他者と被らぬ良い名前ではないか」
「覚えやすくて良いよね」
「呼び名は覚えやすいのが良いと思うわよ、多分」
アイン、ブルース、シナトラ、ルシーの順に意見を述べています。
ジョンにポチですか……もしかしてお兄様方のマックスとチャーリーも犬の名前と言っていましたね。
「この世界で犬につける名前じゃないけど、元日本人として断固として拒否したい!
この気持ちわかってくれるよね?」
元日本人を聞かれない配慮か、耳元で同意を求められました。
自分の名前が動物によく付けられる名前……確かにあまり嬉しくないですね。
もし妻にミケとかタマとか付けられたら断固拒否するでしょう。
名乗りたくない気持ちは理解できました。
しかし……
「これからも大豆を使って商売をするのでしょう?
レシピを販売したり、料理を広めたりするのでしょう?
なら覚えやすい名前が一番だと思いますよ。」
なにせ亜人化したばかりで、常識もよくわかっていないルシーが覚えやすいと言ったくらいですから、きっと覚えやすいんだと思います。
「覚えやすい上に他と被らない、それは知名度を上げるのにとても重要だと思います」
更にそう告げて耳元で囁きます。
更に、
「日本から来た人なんてそうそう居ないでしょうし、元が犬によく付けられる名前だとはわからないですよ。
それにもし他に日本からの人が居たとして、領地の名前と領主の名前、さらに取扱い品で確実に同郷者だと分かって接触して来ると思いますよ」
成る程と一旦頷きましたけど、
「言ってる事はわかるけど、それはそれ、これはこれなんだよねー。
皆さん、俺のことはナシメントと呼んで下さい」
「ナシメント様ですか?」
「ナシメント…いや、ポチで良いだろう」
「ナシメントってすぐ忘れそう。
僕もポチさんって呼ぶよ」
「確かに響きが覚えにくいから、忘れそう」
「ポチの方が良いわよ」
5人が5人ともポチを推してくるので、とうとう崩れ落ちてしまいましたよ、ポチさんは。
「いや、でも諦めないぞ、領民には徹底して領主かナシメントと呼ばせる…………」
ブツブツ言っているポチさんを軽く流したランさんが、私の肩をポンっと叩き、ニッコリ笑います。
「そんなことより大事なことが有るでしょう?」
笑顔が怖いです。
ポチさんも小刻みにうんうんうんと、頷いています。
「言葉で伝えるより実際に作ってもらっても良いかしら?」
そうですね、実際に作りながらの方が伝わるでしょう。
けれど、調理スキルがあるからと言って、実際に作れるのか心配なのですけど……。
などと杞憂していましたけど、なんとかなりました。
なんとかなったと言うより、キッチンに居た料理人はプロですから、これはこうしてとか、このくらいの焼き色でとか伝えればその通りにしてくれますので、私は分量や焼き具合、煮込み時間などを告げるだけでよかったです。
正確に言うなら、ティちゃんの言葉をそのまま伝えるだけなのですけどね。
出来上がったメニューは、チキンの照り焼き、味噌豚(豚肉ではないのですけど)冷奴、ホタテ(っぽい貝)のバター醤油、サバ(?)味噌、野菜の肉味噌炒め、お稲荷さんと後一品。
パッと思い浮かんだ物を作っていただきました。
醤油をそのまま付けて食べる刺身や、お寿司はハードルが高そうですので止めました。
個人的に食べたかった味噌汁と肉じゃがは、お出汁が無かったので諦めました。
湯豆腐や厚揚げも食べたかったですね。
「…凄い……」
テーブルに並んだ料理に、ランさんは言葉を失っています。
「この料理全部にミソやショーユが使われているの?」
「お出汁が有ればまだ幾つか作れるのですけど」
「その雄だし?はどこで手に入るのか知っているのかしら?」
「作り方は料理人の方に伝えてきました。
3、4日で出来上がりますよ」
煮干し、読んで名の如く煮て干すだけ。
これは自分も欲しいので、レシピは他所でも教えるつもりです。
他のレシピは欲しいと言われるものだけはお譲りしても良いと思ったのですけど、アインに止められました。
椎茸出汁…椎茸に近い味がてるとティちゃんが教えてくれたキノコ出汁は、一旦乾燥させないと、旨味が…とかなんとかで、こちらも乾燥待ちです。
ドライで乾燥させると風味が落ちるとかで、天日干しです。
こちらもレシピとしては保留中。
まずは商業ギルドで登録して、そこでダイズスキーにレシピを購入してもらい、商標権をどうするかはギルドと交渉してもらう、と言う事なのです。
但し、私が個人的に私的の場で作る時は、特許…商標権の範囲外扱いとする、と言うこともしっかりと契約に盛り込むとアインが言っていました。
この辺は明日ポチさんとランさんとアインが商業ギルドに行って話を詰めるそうです。
「一通り頂いたけど、そのままの物はうちの特産とするにはすぐ真似されそうだわね。
この冷奴とかミソを付けた肉とか。
でもこのテリヤキ?とサバミソ?とオイナリサン?と、このオイナリサンに似たやつはうちの特産品にしたいわ」
作り方はそんなに難しくないのですけど、そのまま付けて焼くだけのものと違って一手間(みりんや砂糖を入れるだけですから手間というほどではないのですけど)ある物は、食べただけでは真似できないでしょうから、正解だと思います。
「それでレシピはどうなったのかしら?」
「「あ………」」
そうでした、大豆の加工品を使ったメニューを教えるために来たのでしたよね。
「いや、姉さんごめん、まだその前の段階で、話がそこまで行ってなかった」
頭をかきながらナシメントさんが謝ったのですけど、それで許してもらえなかったようです。
「ポ~~チ~~~、何のために来てもらったと思ってんのよ!」
ポチ?
「あ、姉ちゃん!しっ!しっ!しーーーーっっ!!!」
「なんでそんなに自分の名前を嫌がるのよ、ジョン爺ちゃんが付けてくれた名前、可愛いじゃない」
ねー、アイン達の方を向きます。
「可愛い響きですね」
「あまり聞いた事の無い名前だな。
他者と被らぬ良い名前ではないか」
「覚えやすくて良いよね」
「呼び名は覚えやすいのが良いと思うわよ、多分」
アイン、ブルース、シナトラ、ルシーの順に意見を述べています。
ジョンにポチですか……もしかしてお兄様方のマックスとチャーリーも犬の名前と言っていましたね。
「この世界で犬につける名前じゃないけど、元日本人として断固として拒否したい!
この気持ちわかってくれるよね?」
元日本人を聞かれない配慮か、耳元で同意を求められました。
自分の名前が動物によく付けられる名前……確かにあまり嬉しくないですね。
もし妻にミケとかタマとか付けられたら断固拒否するでしょう。
名乗りたくない気持ちは理解できました。
しかし……
「これからも大豆を使って商売をするのでしょう?
レシピを販売したり、料理を広めたりするのでしょう?
なら覚えやすい名前が一番だと思いますよ。」
なにせ亜人化したばかりで、常識もよくわかっていないルシーが覚えやすいと言ったくらいですから、きっと覚えやすいんだと思います。
「覚えやすい上に他と被らない、それは知名度を上げるのにとても重要だと思います」
更にそう告げて耳元で囁きます。
更に、
「日本から来た人なんてそうそう居ないでしょうし、元が犬によく付けられる名前だとはわからないですよ。
それにもし他に日本からの人が居たとして、領地の名前と領主の名前、さらに取扱い品で確実に同郷者だと分かって接触して来ると思いますよ」
成る程と一旦頷きましたけど、
「言ってる事はわかるけど、それはそれ、これはこれなんだよねー。
皆さん、俺のことはナシメントと呼んで下さい」
「ナシメント様ですか?」
「ナシメント…いや、ポチで良いだろう」
「ナシメントってすぐ忘れそう。
僕もポチさんって呼ぶよ」
「確かに響きが覚えにくいから、忘れそう」
「ポチの方が良いわよ」
5人が5人ともポチを推してくるので、とうとう崩れ落ちてしまいましたよ、ポチさんは。
「いや、でも諦めないぞ、領民には徹底して領主かナシメントと呼ばせる…………」
ブツブツ言っているポチさんを軽く流したランさんが、私の肩をポンっと叩き、ニッコリ笑います。
「そんなことより大事なことが有るでしょう?」
笑顔が怖いです。
ポチさんも小刻みにうんうんうんと、頷いています。
「言葉で伝えるより実際に作ってもらっても良いかしら?」
そうですね、実際に作りながらの方が伝わるでしょう。
けれど、調理スキルがあるからと言って、実際に作れるのか心配なのですけど……。
などと杞憂していましたけど、なんとかなりました。
なんとかなったと言うより、キッチンに居た料理人はプロですから、これはこうしてとか、このくらいの焼き色でとか伝えればその通りにしてくれますので、私は分量や焼き具合、煮込み時間などを告げるだけでよかったです。
正確に言うなら、ティちゃんの言葉をそのまま伝えるだけなのですけどね。
出来上がったメニューは、チキンの照り焼き、味噌豚(豚肉ではないのですけど)冷奴、ホタテ(っぽい貝)のバター醤油、サバ(?)味噌、野菜の肉味噌炒め、お稲荷さんと後一品。
パッと思い浮かんだ物を作っていただきました。
醤油をそのまま付けて食べる刺身や、お寿司はハードルが高そうですので止めました。
個人的に食べたかった味噌汁と肉じゃがは、お出汁が無かったので諦めました。
湯豆腐や厚揚げも食べたかったですね。
「…凄い……」
テーブルに並んだ料理に、ランさんは言葉を失っています。
「この料理全部にミソやショーユが使われているの?」
「お出汁が有ればまだ幾つか作れるのですけど」
「その雄だし?はどこで手に入るのか知っているのかしら?」
「作り方は料理人の方に伝えてきました。
3、4日で出来上がりますよ」
煮干し、読んで名の如く煮て干すだけ。
これは自分も欲しいので、レシピは他所でも教えるつもりです。
他のレシピは欲しいと言われるものだけはお譲りしても良いと思ったのですけど、アインに止められました。
椎茸出汁…椎茸に近い味がてるとティちゃんが教えてくれたキノコ出汁は、一旦乾燥させないと、旨味が…とかなんとかで、こちらも乾燥待ちです。
ドライで乾燥させると風味が落ちるとかで、天日干しです。
こちらもレシピとしては保留中。
まずは商業ギルドで登録して、そこでダイズスキーにレシピを購入してもらい、商標権をどうするかはギルドと交渉してもらう、と言う事なのです。
但し、私が個人的に私的の場で作る時は、特許…商標権の範囲外扱いとする、と言うこともしっかりと契約に盛り込むとアインが言っていました。
この辺は明日ポチさんとランさんとアインが商業ギルドに行って話を詰めるそうです。
「一通り頂いたけど、そのままの物はうちの特産とするにはすぐ真似されそうだわね。
この冷奴とかミソを付けた肉とか。
でもこのテリヤキ?とサバミソ?とオイナリサン?と、このオイナリサンに似たやつはうちの特産品にしたいわ」
作り方はそんなに難しくないのですけど、そのまま付けて焼くだけのものと違って一手間(みりんや砂糖を入れるだけですから手間というほどではないのですけど)ある物は、食べただけでは真似できないでしょうから、正解だと思います。
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