【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

95 少しは学んでいますよ

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「そっかー、やっぱりガラスの作り方わかんないか。
こう…薄らとね、砂と何かを混ぜて高熱でって言うのはわかるんだけど、食べ物じゃ無いから詳しいことまで思い出せないんだよね」
「そうなんですか。
私は食べたことのある物は再現できますけど、ガラスは食べたことないですからね」

と、言うことにしておきましょう。
こっそりと頭の中でティちゃんに尋ねると、キチンとした答えは返って来ましたけど、黒服の方が敢えて【食べ物以外の知識は持ち込ませない様】にしている気がしますので、とぼけておきます。

「そりゃそうだ。
ナビゲーションが有るのなら、農耕機作ったり、車やバイクとか、狩りのためにライフルとか、いろいろ便利なもの作れたりはしないの?」
「そうですね、あくまでもこの世界についての基礎知識を教えてくれる物ですから」
「あー、やっぱりチートっても、色々制限が有るんだね」

黒服の方もちゃんと考えて能力…スキルを与えているのですね。
きっと農業に関しては素晴らしい才能を持った若者だったのかも知れませんけど、才能と人格は別物ですからね。

実際に、記憶が蘇ってから十年ちょっとで、色々な大豆加工品を再現して、気候も土壌も違うこの世界で、安定して収穫できるまでにしたのですから、やる気や才能は有るのでしょう。
けれど必要以上の知識を与えるのは、余り良いことだと言えないのかもしれませんね。

もし必要なことだしたら、魔法のあるこの世界ですから、いずれはバイクや自動車みたいなものも、開発されるかも知れません。
正直言ってバイクは欲しいです。
でも、それは今ではないと思います。
この世界に排気ガスは似合いません。

反動が激しくて、命中率があまりよくないと聞く銃より、攻撃魔法の方が広範囲でダメージを与えるから、より物騒だとは思います。
それでも銃を持ち込むのはよろしくない事に感じます。
この世界に科学の武器は似合わないと思いますから。

それでも大豆加工品は欲しいので、深い付き合いは辞退したいのですけど、繋がりは持っておきたいですね。
ずるい大人で結構です。

ティちゃんが、大豆加工品なら自分で作れるよ、と言って来ます。
自分でも作れると思いますけど、私は農業をする為にこの世界に居るわけでは無いですからね。

後々家族で畑や酪農をしながら、自給自足の生活もいいかも知れませんけど、今はまだその時ではありません。
購入できる物は購入して、その分の時間で家族を増やしたり、色んな場所を回って、永住地を決めたりと、やりたい事や、やらなければならない事はまだまだ有るのです。

ですから彼とは、付かず離れずな関係で居ようと思います。

しかし不思議なのは、なぜこうまでも彼を警戒するのでしょう?

いえ、元々の性格を思い出してみますと、私って結構人見知りで人嫌いでした。
親と不仲になってからは特に周りの人間に対して壁を作っていたような。

一度身内判定すると、反動もあって懐いてしまうとでも言うのでしょうか、チームのメンバーからよく
『ジョニーって最初はハリネズミみたいに、寄るな触るな近づくな!って感じだったのに、一旦懐くとスキンシップの激しい子犬みたいな奴だな』
とか、ダ○コちゃんとか言われてましたよね。
思春期真っ盛りの男子高校生だったのに、例えが酷いですよね。

ふと思い起こせば、この世界へやって来てから今までが、初対面の方とでもスムーズに関係を築けていますね。
私に何が有ったのでしょう。

〈今更かよ!
家族を増やすのに、初対面で人見知りしてたらいつまで経っても家族増やせないよね。
だからそこはちょっとだけ性格改善してんだよ。

でもホントにちょっとだけだし、ジョニーに合うっていうのか、害のない奴に対してだけだから。
つまり家族になれそうな人に対しては、警戒心が薄くなるって感じかな。

それよりずっと考え込んでるから、相手が不審に思ってるよ 〉

色々考えて黙り込んでいましたね。
いつもなら私がグダグダと考え込んでいても、アインが話しを進めてくれたり、シナトラがぶち壊したりしてくれるのですけど、今は私一人でした。
私が話しをしないとどうにもらならないのですよね。

それじゃあ彼との話を進めましょうか…………彼?

「そう言えばまだお名前をお伺いしていませんね…日本での名前しか」
失礼しましたと謝り、改めて名前を伺ったのですけど、彼は思いっきり眉間に皺を寄せました。 

‭何故‬(なにゆえ)?

「名前か……名前ねぇ……………」

何やらブツブツ言っています。

「上の兄はマックス、下の兄はチャーリー。
これって偶然にも海外でペットに付ける人気の名前なんだよね。

いや、普通に人名で使われるから全然違和感ないよ?
姉貴も普通の名前なのにさ…」
「嫌な名前なら改名するのはどうですか?」

余りにも今の自分の名前が嫌そうでしたから提案してみましたけど、
「家名や領地名は自分で決めれたよ。
でも改名は許可が降りなかったんだよね」
と苦笑いしています。

「周りには領主か家名で呼ばせてんだよね。
家名だけじゃダメかなぁ」
「家名はなんと言うのですか?」
あまりにも名前を言うのを嫌がるので、無理に聞き出すこともないですよね。
呼びかける時に本人だと分かればいいのですから。

「ふふふふふ、家名は好きにつけていいって国王に言われたからね。
俺のことは ナシメント と呼んでくれ」
得意満面な顔…ドヤ顔でしたっけ?で告げられました。

「わかりました、ナシメントさんとお呼びさせていただきますね」
私が言うと、何故かナシメントさんはショックを受けています。

「ええええ~……日本人だよね?
現代人だよね?
なんで通じないのかなぁ…、テレビ見てた?」
肩を落としたナシメントさんが尋ねて来ます。
「ええ、普通に見ていましたよ。
旅番組や動物の番組や不思議モノはよく見ていましたよ。
ミステリーと言うのですかね、UMAとか心霊モノも好んで見ていました」
後は任侠モノとかヤンキーモノですね。

私の言葉に更に肩が落ちます。
「スポーツ見ようよ、スポーツをさ……」
なんだかとてもダメージを与えてしまった様ですね。

「スポーツですか…すみません、全く興味がありませんでしたね。
野球選手か何かですか?」

あ、とうとう机に突っ伏してしまいました。
なんだか悪い事をした気分ですね。





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