【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

93 農家の息子さん

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農家の息子さん視点です。

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俺の前の名前は 佐藤 耕太。
大学を卒業して、家業の手伝いをしていた享年24歳。

北海道で生まれ育った俺の実家は、名前でわかるかもしれないけど、農業をやっていた。
親は豊と稲、兄の名は大地……豆太とか麦雄とかじゃなくて良かったよ、いやマジに。

家では代々親戚一同を含め、主に大豆や小豆や黒豆などの豆類を作っている農家だ。
親戚の一部では、自家製の味噌や醤を作って、近所のスーパーに卸したりしていた。
豆腐屋をやっている親戚も居る。

やっぱり農家一筋だと厳しいのよ。

小さい頃から畑の手伝いして来たけど、このままじゃあダメだと、高校や大学の頃から色々頑張ったんだ。

自家製の味噌や醤油などをブランド化して、通販で全国へ売ってやる!
との野望を持って、パッケージやラベルをサークルの絵の上手い先輩に頼んでみたり、ブランドキャラ作ってみたり、色々頑張っていた訳なのですよ。

キャッチコピーの一つは、【サトウの醤油は砂糖醤油では有りません、自家製有機大豆100%の醤油です】だよ。
勿論味も改良して、どこに出しても恥ずかしくないとこまで持って来たよ。

あと、兄に食料品を取り扱うために、関係あるような免許や許可を取ってもらったりもしたよ。
ちゃんと食の安全も確保しておかないとね。
カロリー表示とかの細かいことも兄に投げちゃったけどね。
俺は他にやることあったし、まだ学生だったから。

大学在学中になんとか通販サイト開設して、snsやTwittooで拡散したよ。
ボチボチ売れ出して、さらに販路を広げようと、伝手を辿って物産展や、お土産物屋さんにも置いてもらおうとしていた矢先、流行り病で死んでしまいましたとさ。

チャンチャン。


で、ここからなのよ、俺のストーリーは。


気がついたら漫画や小説でよく聞く【白い部屋】に居てさ、目の前に現れた女神様は、黒スーツで黒いショートボブの知的眼鏡美女!
本人は【案内人】とか言ってたけど、男子生徒ホイホイな女教師って感じ。
しかもタイトスカート!
後ろのスリットがセクスゥイ~!
椅子に座って足を組んで欲しい!
あ、白衣を羽織っても良いかも!!


………あ、すんません、脱線しました。


で、その女神が言うには、条件がなんちゃらかんちゃらで、こちらの頼みを聞いてくれるのなら、異世界に転載させてくれるとか。

頼みと言うのが、色々発展していない世界での食事事情改善に力を貸して欲しいと。
でも俺飯テロなんて出来ないよって言ったら、とりあえず食材を広げてくれればいいって言うんだ。

異世界ものなら米、味噌、醤油を広げるのがセオリーでしょう、ならば俺がぴったりじゃん?
大豆って色々作れるし、そこから広がる和食ワールド!
異世界には和食でしょう!


てな訳で、お約束展開の、好きなスキルを3つ選んでとなった訳なんどけど、なんで3つなんだろうね?

転生だから言葉や文字は問題なし、魔法も使える、そうなると残るのは、【インベントリ】と【鑑定】後は悩んで【幸運】の3つにしたね。
リアルな俺って、実は不運体質かよってくらい、ツキが無いからこれは必須なのですよ。

でもね、話は甘いばかりじゃなかったのよ。

まずは前世記憶を持って転生するけど、内容が【農業と食品加工について】はバッチリなんだけど、他は少し曖昧。
まあ良くあるよね、その世界のバランスを壊さないため、進んだ文明は禍の元ってやつだから、それは仕方なし。

但し!バッチリと言っても【元々の自分が知っている知識のみ】なんだよね。
ネット検索とかで一度でも目を通したことがあれば、ギリなんとかなるけど、うっすらと『あんな事もあるよね』くらいの曖昧な知識はわからないままって、不便だよ。

検索機能プリーズ!!

【鑑定】のスキルも、農作業に関することと、食べ物に関することは問題ないけど、人に使うと種族しかわからないし、農業や食品に関するもの以外だと、見てわかることしかわからない。

例えば椅子を鑑定すると、【椅子・座る道具。稀に高い所のものを取る時などの踏み台がわりになる】だよ?
んなもん鑑定せんでもわかるわい!って感じ。

【インベントリ】と【幸運】は普通に働いてくれてるけどね。
あと、チート能力として、農作業と加工に関する事は、チャチャっとできる。
発酵時間や寝かせる時間を短縮とかはできないけど、その作業はなんか知らんけどできる。


記憶が戻ったのは8歳の時。
高熱を出したショックで思い出したの。
死んだ時も高熱なら、思い出す時も高熱がトリガーだなんて、同じにしなくても良いと思うんだけどね。
最初から農作業のできる年になったら記憶が戻るようにするって言われてたのも、その時に思い出したんだ。

でだ、思い出してから頑張ったよ。
だって、豆だけじゃ味噌も醤油も豆腐も作れないんだよ?
麹やニガリを手に入れる所からなんだけど、子供だから遠出も出来ないし、色々作ろうにも材料が手に入らない。
だからと言っていきなり家族に
「味噌作るために麹を作るから、蒸し器を作って」
とか言ってもスルーだし。

しかも大豆って家畜の餌が主で、あまり美味しくないからって人は食べないの。
だからまず家族に枝豆食わしたね。
もやし炒めも食わしたね。
揚げパンにきな粉をまぶして食わしたね。

そうして少しずつ食べ物として広げていって、同時進行で麹を作る為に蒸し器やら湯たんぽなんか作ったり、隣の国へ行って海水でニガリを作ったり。
その辺りの工程は、チートでちゃちゃっと出来たんだけどね。

基礎ができたら後は作りたい放題だよ。
豆腐を作ったら、副産物っぽい湯葉に豆乳に厚揚げ、油揚げ、凍り豆腐におからとがんもどき。
色々作ったさ。

13歳の頃には城に呼び出されて、王様に披露もしたよ。
新たな食文化を拓いたと絶賛されて、16歳の成人と同時に【食位】と言う位と領地ももらったよ。
きっと【幸運】が仕事してくれたんだよね。

それまでは家の畑の隅っこで大豆を作ってたんだけど、一面の大豆畑を作る事が出来た……なんてことは無いんだよね。

だってこの国高温多湿なんだもん。
でも俺は頑張った!
魔道具を開発してもらって、除湿と涼しさを領地に行き渡るようにした。
これは農業の知識としてOKだったみたいで、趣味で読んでたファンタジー小説なんかの知識を総動員したよ。
【幸運】も働いてたんだと思う。
おっと、これ以上は企業秘密だよ。


位を貰ってから5年、やっとの思いで大量の大豆を収穫できるようになったわけ。
どうよ、俺ってすごくない?頑張ってない?


でもね、でも……俺料理スキル持ってないんだよ!
家では母さんがご飯作ってたから、料理できないんだよ。

ダチとよく
「異世界転生したら、味噌、醤油で和食テロだよね、後はカレー作るのは鉄板でしょ」
とか言って、カレーのスパイス調合は覚えてたよ。
カレーはスパイスが無くて断念したし、肝心の和食も作れないし、作り方知らないから広げられないという…。

そこで俺、また閃いちゃったね!

『知らないなら知ってる人に作って貰えばいい!』

だからちょい前から少しずつ、味噌や醤油や大豆油を国外に出してんの。
領地の名前もわかり易くしたし。
そうすれば俺みたいな転生者が釣られるでしょ?
その転生者に色々レシピ教えて貰えばいいじゃん!ってね。

それで釣られたのが君だよ!



ようこそ、俺の領地、ダイズスキーへ!!



  

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