【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

91 本当にホルノーンは何をやっているのでしょうねえ

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「私は是非あなたの弟さんとお話がしたいのです」
きっと私と同じような立場…日本から来た方でしょうから。

「いや、ちょっと待って、今混乱しているから何も考えられない」

納豆が食べたいと言うだけで、どれだけ混乱しているのでしょう。

今まで黙っていた男性陣の一番年配者(四十代半ばでしょうか)声をかけてきました。

「ランさんが混乱しているから口を挟むが、あんたら本当にホルノーンの奴らじゃ無いのかい?」
どうやらランさんが一番立場の上の方で、他の方々は今まで口を挟まなかったみたいですね。

それはそうと、ホルノーンは一体何をしでかしているのでしょうか…。

「うんとね、僕達西の山の向こうの西の森から来たの。
人の国とコニーちゃんの国と山超えて広い野原と結界通って、ずーっとずーっと動いて来たんだよ」
「は?」

シナトラが生まれて一年だと知っている私達には普通の喋り方ですけど、見た目二十歳(はたち)過ぎの青年が、子供のような喋り方をすると驚きますよね、普通。

「あ、彼はモリオオネコの亜人でまだ生まれて一年なんです」
アインのフォローに、
「獣人だって歳の取り方は変わらないだろ……ああ、そうか、名付けか」
なら納得だなと大きく頷かれました。

無性人はあまり居なくて、実際に関わることがなかったとしても、【名付け】で生き物を亜人化させることができると言う知識は、大抵の方は持っている様です。

普通の獣人なら、人族と同じ歳の取り方をするけど、【名付け】の場合は、【名前をつけられた時点のその種族の見た目】で、中身は実年齢(生まれて何年か)になるそうです。

前、シナトラの見た目と中身の違いを、こっそりとティちゃんに聞いたところ、犬なら生まれて一年で、人で16歳くらいですから、生後一年の犬が亜人化すると、見た目高校生、でも知識は生まれて一年分なので、ギャップが生じる……といった感じなのだそうです。


「しかしどうやって西まで話が行ってるんだ?」
私がよそごとを考えている間に、別の男性が訪ねて来ました。

「いえ、西には伝わっていませんよ。
ユユグル国で商人達から伺いました」
「ああ、ユユグルな。
品物だけは流してたからな…宣伝と収入のために」
「ユユグルで聞いたなら納得できるわ」
「商人達だからな」
口々に納得されてしまいました。
やはり情報を握るのは行商人なんですね。

「でも品物は流れていませんでしたよ。
農家の息子が位を貰ったと言う話だけでした。
醤油や味噌があると言うのはルーライオで、ですね」

ユユグルで味噌や醤油が手に入っていたとしたら、最初からこの国に来るのは決めていたでしょう。
それにきっとアインが色々詳しく調べていたでしょうね。
この国に来ると決めたのは、本当に突発でしたから、いつものように情報収集する暇が無かったようです。

「品物はな……使い方がイマイチわからんのだよな。
ショーユはドレッシングの代わりになるからちいとばかり売されるが、ミソはスープを作っても辛いばかりだから、肉に塗って焼くくらいか?」
「トーフもそのままヒヤヤコとか、ミソスープに入れたりするけど、どうもボリュームが無くてな」
「トーニューは好きだぞ」
「俺はオアゲを焼いたのが好きです」

わいわいと話し出す男性陣。
警戒心が少しは解けたのでしょうか。
しかし話を聞いていると、どうやら大豆で色々作り出しはしたけれど、その調理方法がわからないのか、食材だけ流通して、レシピは無いようですね。

「味噌汁……ミソスープにお出汁は入れましたか?」
「オダ市?どこだそれ?」
「お出汁を入れないと味噌汁……ミソスープは美味しく無いと思いますよ」
「オダ氏か……会った事ないな」
なんでしょう、彼らの言うお出汁はなんだか違う気がします。

「あんた、あの調味料の使い方、知ってんのかい?」
やっと復活した女性…ランさんが話に加わります。

「ええ、実際に料理をした事はないのですけど、調理スキルを持っていますから」
「私も調理スキル持ってるけど、使い方わからないよ」
確かに調理スキルだけでは上手く焼けるとか、同じ物を作っても美味しく出来上がる、くらいでしたかね。

「調理スキルの上位系…とでも言うのですか?
料理スキルも持っていますし、大豆の食品なら、いくつかわかると思います」

言いながらティちゃんに確認しました。

〈作った事ないけど大丈夫ですよね? 〉

〈大丈夫だよ、ジョニーの食べたことのある料理なら、味の記憶から必要な調味料や量、作り方も再現できるから 〉

おお、妻との食べ歩きが役に立ちそうですね。

「大豆製品を使った料理、結構作れると思います」
私が自信を持って言うと、ランさんに、ガシッと肩を掴まれました。

「是非うちへ来てください!」

こうして私達は、少しばかりゴタつきましたけど、無事にダイズスキーへ行けることになりました。






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