【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

90 思えば遠くへ来たもんです

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《植物魔法と似た感じの【樹木魔法】やよ。
元々は食べ物を確保する為に樹を生やしてたんやけど、そのうち飲み水を確保するのに桶みたいなのを生やすやつが出てきたん。

そやのに何でか知らんけど、背中に花を咲かせるのがオシャレとか言い出すゾウが出て来たんやて。
で、それを面白がった人らが乗ってみたら良い感じで、今みたいに人を乗せるようになったとかなんとか》

成る程、元々食糧と水の確保の為の魔法が、他のことに利用できたと言う事ですね。

《背中のはある程度大きくしたり小さくしたり出来るし、ゾウケシは少しばかり風の魔法も使えるから、花の水をくるくる回して風を出したら涼しくなるんやよ》

樹液を回しながら風で冷やすことで、この涼しさを提供してくれているのですか。
ありがたいし、凄いですね。

《ドドは背中の草をあったかくしたり冷たくしたりできるんやよ、ちょっとだけやけどね》

ポニーと違って遮る物は無いドドさんですけど、彼方にはブルースが居るから風を起こせますし、ルシーの氷魔法も有りますから、暑さ対策は問題無いでしょう。

《私はポニーで良かったですよ》

《そやろ、そやろ》

私の言葉に嬉しそうにするポニー。
私には涼しくて丁度良くても、膝の上のチャックには少し涼しすぎるのか、胸にリンを抱き抱えています。

《んー…ポニー、チャックが少し寒いようなので、涼しさを少し緩めてもらう事はできますか?》

《できるよ…………、これくらい?》

【クーラーの効いた部屋】から、【窓を全開させ、風通しを良くした部屋の扇風機の前】くらいに変わりましたかね。
砂漠で空気が乾燥しているから、不快感はありません。

《ありがとうございます、とても良い感じです》

礼を言うと、どうって事ないと返して来ましたけど、少し嬉しそうです。

「…………なんかした?」
抱え込んでいたリンを肩に乗せ、振り向いてくるチャックに、
「少し冷えて来ましたから、涼しさを緩めてもらったんですよ」
と、自分の為だと告げると、少し訝しげにした後、ふいっと前を向いてしまいました。

「……ありがと」
小さく呟いたそれに、私は反応を返しません。
ここで「どういたしまして」などと返してしまうと、チャックの天邪鬼が顔を出しそうですからね。



進むにつれてチラホラ草が生えていて、砂地から土へと変わって行き、その先はサボテンやヤシの木が植えられていました。
これは人の手で植樹されていますよね。
確かこのサボテンは食べられる種類だった筈です。

さらに進みヤシの木ゾーンを抜けると、そこは広大な畑作地でした。
先の方に見える建物に向かって進みながら、辺りを見渡します。
見てわかるのは麦とピーマンとネギ?後はサツマイモの茎に見えますけど、どうなんでしょう?
後はわからないですね。

建物は陽の樹で作られた大きな建物で、農具などがたくさん並べられているスペースと、椅子やテーブルの有るスペースに別れています。
休憩所でしょうか。

ポニーから降りて近付くと、胡散臭げな視線を向けられました。

「あんたら今砂漠の方から来なかったかい?」
休憩所の奥、多分厨房?から出てきた妙齢の女性が声をかけてきました。
休憩所には男性が12人ほど居ますけど、見ているだけで、誰も口を開きません。

「はい、こちらの国のダイズスキー領を訪ねて来ました」
こう言う場合はアインに一任です。


「何の用か知らないけど、帰った帰った。
ホルノーンとの取り引きは国同士でしかしてないだろ、勝手に入って来るんじゃないよ」

女性がしっしっと手を振り、男性陣の視線も鋭くなります。

「勝手に入国したのはすみません。
私達はホルノーンの西の草原地帯のさらに西の山脈を超えてきました。
決してホルノーンの者ではありません」
「は?何だって?
なんでまたわざわざそんな遠くから?」
呆れを通り越して意味がわからない、と言う表情の女性。

実際には目的地がどんどん東になっただけで、最初からこんなに遠くまで来る予定は無かったですけどね。
本当に遠くまで来てしまいましたねぇ。

「こちらのダイズスキー領の噂を聞きまして、是非とも一度来てみたいとなりましたので」
はい、私がそう言いました。

「どんな噂を聞いたのか知らないけど、上位になった元農民だからと言って抱き込もうとか、陥れようなんてしたって無駄だからね」
女性の言葉に頷く男性陣。
今まで色々あったようですね。

「いえ、そう言った事ではなく…」
頑なな女性の態度に、珍しくアインが弱腰です。
「ジョニー…彼がダイズスキーの名産品を是非購入したいと言いまして」
「品物を買うだけなら商人ギルドを通せばいいじゃないか」
ごもっともな意見です。
でも……

「話で聞いたのは【味噌】【醤油】【大豆油】【豆腐】の4つです。
でもきっとそれだけではないですよね?」
私はずずずいっと前に出ます。

「豆腐が有るならきっと【湯葉】や【厚揚げ】【凍り豆腐】、【おから】に【豆乳】【がんもどき】なども有るでしょう。
ああ、きっと【油揚げ】も有りますね。
勿論そのままの枝豆や炒り豆も有るでしょう」
私はつらつらと、大豆で作られる品をあげていきますと、男性陣と女性の目が大きく見開かれます。

「な……何故それを…。
機密として発表されていないのに…」
唖然とした表情の女性が洩らします。

「別に探ったわけでは無いですよ。
それにどうこうしようとも思っていません。
私にも少しばかり大豆に付いて知識があるのです」
それに…と続ける私に、皆の視線が集まります。

「私は【納豆】が食べたいのです!」
「な…何だって!」
私の言葉に女性が恐怖の表情を表しました。
何故?

「あの悪魔のような物を食べよう…だと……」
知ってる事より、納豆を食べたいと言う方が重要ですか?
そこですか?
耐えきれないとばかりに、額に手をやった女性はよろけて反対の手をテーブルに付きました。

「あんな悍ましい物を食べようだなんて奴が弟以外に居るだなんて、信じられない」
あ、この方例の【農家の息子】さんのお姉さんでしたか。






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