【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
89 / 206
第二章 旅は道連れ

89 合流

しおりを挟む
「この場で彼女に常識を教えるのは難しいですので、連れていく事にしました」
アインに告げられて了解しましたけど、一つ懸念が…。

アインを連れて少し離れます。
「連れていくのは良いんですけど、ブルースで飛んで行くのはやめた方が良く無いですか?」

もし同じ王様トカゲであるブルースが、人の姿と元の姿を行ったり来たりしてるのを知ったら、自分もそうするとごねそうな………。

「ええ、ですから歩いていくしか無いんですよね。
水や食料は貴方の転送魔法に頼るしか無いのですけど…」
申し訳なさそうに言うアインにある事を相談してみました。



オアシスでそのまま昼を取り、暫くその場に留まります。
そして日暮れ前、待っていた姿が見えました。

《早かったですねポニー、夜になるかと思っていました》

《うちらそんな鈍足とちゃうよ》

騎獣屋に預けていたポニー達ですが、どうにか合流出来ないかと相談したところ、アインの知り合い(部下?)がホルノーンに居るので、事情を伝えて料金を支払ってもらい、ホルノーンの待ちの外まで連れて行ってもらいました。

ポニー達には念話で説明して、人の少ない場所を見繕って進んでもらい、砂漠の途中のオアシスで合流しようと伝えたのです。

どうやら、【人の乗る動物】が蛇を踏み殺すと処罰の対象になるのですけど、動物が誤って踏んでしまっても、それは【仕方のない事】となるそうです。
野生動物まで処罰の対象にしていたらキリが無いですからね。

なのでポニー達単体で、その上なるべく人目の少ない場所を通って移動をしてもらいました。

砂漠を超えて東での用件が片付いた後の帰りも助かりますし、おおよその場所が判れば、人の気配を探して見つけると仰ったので、オアシスで休憩をしつつ待っていました。

人の気配をある程度察知できると言っても、町中や人の多い場所だと、個別判断ができるわけではないので無理ですけど、砂漠の中を移動している人は少ないので、見つける事ができたそうです。



《トカゲさんで飛んどったんやろ?
思ったより進んどらんかったんやね》

《思った以上に砂漠の上を飛ぶのがキツくて、休憩を長く取っていたんですよ》

《それやったら最初からうちが乗せとけば良かったね。
快適な移動やったらうちらに敵うものはおらんよ》

《そうですね、ブルースも早いし凄いですけど、乗り心地でポニーに敵うものなんていないですよ》

そやろそやろと、嬉しそうに頷くポニー。

《それではまた移動をお願いしますね。
一先ず朝まで休みますか》

《いや、夜の移動でもかまへんよ。
アンタらは寝とってくれれば良いし》

《夜の移動は危なく無いですか?
それに疲れていませんか?》

《ははは、こんな見通しのいい場所で何が危ないん?
せいぜい砂の中から虫やら蛇やらが出てくるだけやろ?
そんなん踏み潰すだけやし。
もうここやったら蛇踏んでも問題無いんやろ?
それにちょっと歩いたくらいで疲れるほど柔なヤツはバスを名乗れんわ》

頼もしい台詞です。
それに砂漠はホルノーンの領地の外ですから、蛇を踏ん付けて死なせてしまっても、捕まることは無いですから、ここはお言葉に甘えましょうか。

《ドドさんの方は良いのですか?》

《あっちはあっちで『王様トカゲを二匹も乗せるバスなんて俺しかいない』って逆に張り切っとるわ》

二匹とも頼もしい限りです。

言葉に甘えて、私達はすぐに移動を開始しました。
相変わらずとても素晴らしい乗り心地です。
日が暮れて寒くなって来たら、花弁を閉じてくれたので、寒さが和らぎました。
それにチャックを抱えていますし、そのチャックの胸元にはリンが居ますから、防寒対策はバッチリです。

ゾゾの方を見てみれば、四人は頭まで毛布をぐるぐる巻きにして、くっついています。
ああ、ポニーで良かったと思いながら、眠りにつきました。


翌朝、快適に目覚め、チャックにクリーンをかけてもらい、サッパリしたところで、ポニーから砂漠を抜けたと念話が伝わってきました。

私達は一旦降りて朝食に。
ポニー達にも果物を渡します。

《やっぱり餌用の草や果物より新鮮なんが美味しいわ。
見た事ない果物も有るし、見たことあるやつだって、なんか知らんけど美味しいわ》

《それって山の向こうの果物なんだって。
土地によって魔素が変わるから、味も変わるとか聞いたことあるんだけど、それなんじゃない?》

ゾゾも会話に加わって来ます。

「それはあるかも知れませんね。
私は食事をしないので、味の違いはよくわかりませんけど、同じ原材料のお酒の味が違うのは、使う水が違うからと聞いた事がありますね。
だから果物なども土地によって味が変わるのでしょう」

実は私も味の違いはあまりよくわからないです。
味がわからないんじゃないですよ?
微々たる差をわかるほどの舌を持っていないだけです。

「あっちの果物の方が味がぎゅっと詰まってるっていうか、味が濃い気がする」
チャックが言いますけど、
「そうか?変わらんと思うけどな」
と大雑把なブルースが答えます。
「果物なんてどれも同じじゃん。
でも肉はあっちの方が美味しいと思うよ」
ああ、大雑把と言うより、ブルースとシナトラは果物の味に興味がないのですね。

そんな会話を少し離れた場所で眺めながらルシーは、
「手掴みで食べてるじゃないの。
道具を使って食べてないじゃない、話が違わない?」
と、ブツブツ言っています。
臨機応変などはまだ無理なんでしょうね。
頑張れ、アインとブルース。



砂漠を出て平原、林、小高い山と越えた先に農業国家のべルージュが有るそうです。

砂漠の東にある国は二つ。
農業国家のベルージュと、交易国家のリアンスです。
広さは二国合わせても、アイン達の連合国の五分の一もない広さです。

ベルージュの国民は、半数以上が農業従事者で、二割ほどが狩人だと言う話です。
東側の食糧庫ですね。

リアンスは漁業と交易ですから、役割が分かれていて、国同士の繋がりも強く、争いなど起こることがないそうです。


ティちゃんの地図によると、砂漠を出た辺りからベルージュの領地のようです。
さて、ダイズスキーはどの辺りでしょうね。



陽が完全に昇って、暑くなってきましたけど、やはりポニーは最高ですね。
花弁を大きくしてくれて、日陰を作り、さらには花びらからほんのり涼しい冷気が。

《そう言えば、見た目の色は使える魔法の種類になると聞いたのですけど、ポニー達は土魔法ではないのですか?》

ポニーはベージュで、ドドは赤茶色ですから、土魔法だと思ったのですけど、座るイス…花を大きくしたりするのは、シナトラと同じ植物魔法なのでは?
それなら緑色系統の筈でしょうから、ふと疑問に思ったのです。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
魔族の幼子ルンは、突然両親と引き離されてしまった。掴まった先で暴行され、殺されかけたところを救われる。圧倒的な強さを持つが、見た目の恐ろしい竜王は保護した子の両親を探す。その先にある不幸な現実を受け入れ、幼子は竜王の養子となった。が、子育て経験のない竜王は混乱しまくり。日常が騒動続きで、配下を含めて大騒ぎが始まる。幼子は魔族としか分からなかったが、実は将来の魔王で?! 異種族同士の親子が紡ぐ絆の物語――ハッピーエンド確定。 #日常系、ほのぼの、ハッピーエンド 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/08/13……完結 2024/07/02……エブリスタ、ファンタジー1位 2024/07/02……アルファポリス、女性向けHOT 63位 2024/07/01……連載開始

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...