【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
86 / 206
第二章 旅は道連れ

86 二人目の王様トカゲ

しおりを挟む

「小娘、先程から何をこそこそしておる」
私が彼女に返事をする前に、ブルースが割り込んできました。

《あら、オジさんも王様トカゲなのね》

《初対面の奴にオジさん呼ばわりされたくないわ》

《あらだって、私まだ生まれて20年なんだもの。
魔素の量からみてオジさん500歳くらいかしら?》

《まだ446歳だ!》

ブルース…二十歳(はたち)から見れば、446歳も500歳もあまり変わらないと思いますよ。

《それより、何か理由があって私を探していたのですよね?》

話を戻しましょう。

《貴方を探していたというか、名付けが出来る無性人を探していたの。
南の方に一人いるって噂を聞いて、飛んできたんだけど、人の少ない場所を飛んだ方が良いじゃない?
だから砂漠の上を移動していたら、貴方達が見えて降りて来たの》

人に見られないに越したことはないなと、ブルースが頷いています。
その頷きを見て、彼女は話を続けます。

《オジさんにもわかると思うけど、王様トカゲって人に狙われるじゃない?
私、北で生まれたんだけど、北って戦闘狂が多いのよ。
いつでもどこかで国が争ってるの。
だから武器や防具になる王様トカゲって狙われるのよね》

戦争をしているのなら、強い武器や防具を手にしようと考えるのはあり得るでしょう。
そうすると爪や牙や鱗がそれらに役立ち、さらに一匹狩れば大量に素材が手に入る王様トカゲは、見つかれば問答無用で狩られるでしょうね。

《深い森に隠れ済んでたんだけど、ある国に見つかっちゃってね。
勿論追い払えるわよ?
だって私、王様トカゲなんだもの》

表情は分かりませんが、きっと得意顔なんでしょうね。

《でも、他の国にもバレちゃって。
流石の私でも幾つもの国から取り囲まれたらヤバいじょない?
だから逃げたんだけど、王様トカゲのままだとどこに行っても狙われるし。
ならば人になろうって考えるのが普通じゃない?》

彼女の考えはわかります。
どこに行っても狙われるのなら、その姿を変えようと思う事はあるでしょう。
しかし私は迷ってしまい、返事ができません。

《簡単に姿を捨てようとするな》

私の代わりにブルースが答えてくれました。

《うぬは若いからわからぬかもしれぬが、生まれ落ちたその姿に誇りを持て。
最強の生き物である王様トカゲの姿を簡単に捨てようとするな》

そうですよね、若い身空で簡単に元の姿を捨てるのはどうかと思います。

《名前を付けるのは簡単ですけど、その姿を捨てることになるのですよ?
戻りたいと思った時に私が存命なら良いですけど、もし私がその時にいなければ、二度とその姿に戻れないのですよ?》

ブルースは規格外だから姿を変えれますけど、普通は名前を返して契約を解かないと、ずっとそのままの姿です。
私が先に死んでしまったら、二度と元の姿に戻れないのです。

《我ら王様トカゲは数が少ない。
まして雌は希少だ。
お前が人となる事で更に数が減り、生まれて来たであろう子孫まで居なくなるのだぞ》

それも考えました。
王様トカゲ…ドラゴンなんてどう考えても数が少ないでしょうし、イメージ的にも男性が多い種族だと思います。
ブルースの言葉の様に女性が少ないのなら、彼女一人ではなく、彼女から生まれるであろう子供、その子孫までなくなると言うのは、少ない数が更に減ると言う事ですよね。
種族が滅びに向かう…とまでは言いませんが、簡単に名付けて良いのでしょうか、悩みます。

《そんなの…そんな事、私には関係ないわ!
なんで私が種族のために我慢しなきゃなんないの?
狙われるのが鬱陶しいから嫌なの!
ブレスで凍らせて殺せば一瞬で国を滅ぼす事はできるわ。
でもそうせずにいてあげてるのに、調子に乗って取り囲むのよ?
あそこから出ても、この姿でいる限り、どこに行っても狙われるじゃない!
なら全ての人を滅ぼすか、この姿を捨てるかしかないじゃない!》

彼女からすれば、人を殺すより、自分の姿を変える方が平和的な解決方法なのですね。
でも………。

《狙われない場所もあると思いますよ。
例えば人の住まない島もあるでしょう。
王様トカゲを守護神として祀っている国もあると思います。
それこそ、その強さとその翼で世界中を回り、安住の地を探す事も出来るのではないですか?
色々な場所を回ってみて、それからでも遅くないと思いますよ》

そう、北の地方だけで全てを捨てるのはもったいない事だと思います。

《そうだな。
現に西では結構自由だぞ。
我以外でも王様トカゲの姿のままのんびりと暮らしておる奴らは多い》

《何ですって⁈》





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...