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第二章 旅は道連れ

83 クルトゥスさん 5

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「僕は耐えられなかったけど、ジョニーなら強いから大丈夫かな。
家族をどんどん作って、ずーっと家族に囲まれて生きて行くのがいいんじゃない」

夕食の後、お茶を飲みながらクルトゥスさんと二人で話をしています。

「ええ、以前は妻と二人だけでしたから、今回の人生は沢山の家族が欲しいんです。
寿命でなくとも、病気や事故で若くして亡くなることもありますし、生きている限り別離は避けられません。
それでも、一緒にいる間は楽しく、仲良く、沢山の思い出が作れる様な関係を築きたいです」

「僕も…今の問題が片付いたら、もう一度家族を作ってみようかな」

今この城を管理しているのは、クルトゥスさんの弟さんの子供だそうです。
あまり関係がよろしくない様で、生活環境は城を西と東で分けて、別に暮らしている様です。

16歳の時、家を出され20年以上経ったころ、呼び戻され、その頃には弟さんとの関係がギクシャクしていて、その息子さんとは更に難しい関係なのだそうです。

「詳しい話はそのうち聞いてくれると嬉しいな。
今はやらなきゃならない……やるべきことがあって、そっちでいっぱいいっぱいなんだ」

だからその後に第三の人生を、と自分に言い聞かせる様に呟いています。

「私は家族にこだわっていますけど、そこにこだわる必要がないのなら、恋人や友人をたくさん作るのはどうですか?
趣味の仲間とかも良いのではないでしょうか」
親との関係が上手くいかなかった私は、家族にこだわってしまっています。

同じように家族と上手く行っていないクルトゥスさんですけど、私とは逆に、家族に拘らない、家族を無理に作らなくてもいいのでは?
と思い、言ってみたのですけど、噴き出されてしまいました。
なぜ?

「恋人や友人をたくさん作るって、恋人は一人でいいと思うな」
あ、揚げ足を取られてしまいました。

「でもそうだね。
僕に家族は重荷すぎるから、たくさんの友達の方がいいかな」
「それなら今でもライラヒルラさん達が居ますしね」
私が言うとクルトゥスさんは俯き、少し考えてから顔を上げました。

「そうだね、利害関係だと思っていたけど、彼女達とはそれだけではなかったみたいだし」
「あまり難しく考えなくてもいいと思いますよ」
私が言うと、少しおかしそうにクルトゥスが言います。

「若いのに随分悟ったような言い方だよね」
「伊達に56年生きていませんから」
「えー、それでも僕より年下だよ」
「56年の間にグレたり駆け落ちしたり、就職して結婚して、大人を装ったり、挫折したり、妻に先立たれたり、波瀾万丈な人生送って来ましたからね」
「うわっ、何それ、詳しく聞きたい」
「別に面白い話でもないですよ」
「いや、十分面白そう、聞かせて」
「それじゃあどこから話しましょうか……」

その夜は二人で長い時間話をしました。
私の話の後、彼の話も聞かせてもらいました。


彼の母親は、ホルノーンの第27姫で、ホルノーン王家では珍しく地味な顔をしていたそうです。
ルーライオの国は濃い顔の人ばかりで、地味な顔は癒されると大人気、クルトゥスさんのお父さん(元国王)も一目惚れで妻に迎え、ご成婚。

結婚後、母親似のクルトゥスさんか生まれ、その6年後に弟さんが生まれたそうです。
クルトゥスさんが16歳になったある日、呼び出された国王(父親)から、城を出て行くように言われたそうです。
理由は
「ホルノーンの血を引いていてそのみっともない見かけてでは、とても後継にはできぬ。
第一無性だと、後(のち)の後継も作れぬではないか。
この国はお前の弟に跡を継がせるから、お前は用無しだ。
すぐさま城を出て行け」
と……。

一目惚れした母親と同じ顔のはずなのに、みっともない見かけと言われ、若かったクルトゥスさんは頭にきてすぐさま城を出て、国を捨て、船に乗り西へと向かいます。
そこで冒険者として活動しながら、名付けで仲間を増やし、ブルースと出会ってからは、楽しく冒険者生活を送っていたそうです。

それから20年の月日が過ぎ、ある日母親から一通の手紙が届きます。

そこに書かれていたのは、父親が亡くなった事、国が無くなり、ホルノーンの一部になった事、王家としてではなく、ホルノーンの領地の一つとして、弟が領主となった事、そして、助けて欲しいとの母親の言葉と母親の懺悔。

その辺りについては詳しく言えないけれど、その手紙を読み国に戻ることにしたクルトゥスさんは、ブルースと袂を分かち、帰国して母親と話し合い、母親の望みを叶えるべく、秘密裏な活動をしているそうです。

「あまり詳しくは言えないけど、ざっとこんな感じかな」
「クルトゥスさんも色々あったんだね」
お互いの話をしているうちに、普通の話し方になりました。

「うん。まあその色々のおかげで、僕にとって家族は重い物だし、親しい人が寿命を迎えるのをみて、どんどん怖くなって来て……意気地がないんだなぁ、僕って」
落ち込んだ様子の彼の肩をポンと叩きます。

「人生なんて楽しんだ者勝ちだと思うよ。
死ぬ間際に『わりと楽しい生き様だったんじゃない』と思えれば勝ちだと思う。
だからさ、考える事は大切だけど、クヨクヨするのはちょっとだけにして、前を向いて歩こうよ。
ちなみにこれ、自分にも言える事なんだけどね」

私もかなり色々考え込んでしまい、クヨクヨしてしまいます。
考え込まないのは無理、クヨクヨしないのも無理。
だから考え込み過ぎないように、クヨクヨし過ぎないように、ちょっとずつ気を抜いて、前を向いて歩ければ良いな。

「あのさ……」
いつものようにぐるぐるしていると、クルトゥスさんが伺うように話しかけて来ました。

「良ければ僕と友達になってくれないかな」
「え⁈」
「え?」
思わず驚いた私に、クルトゥスさんも驚いています。

「もう友達なんじゃないのですか?」
「え?あ……、うん、僕達友達だよね⁈」
「うん、友達、友達」

私が頷きながら肯定すると、クルトゥスさんはとても良い笑顔を返してくれました。

「今は抱えてる問題が片付いたら、話聞いてくれる?」
「勿論。
話したくなったら言って聞くよ」
「………ありがと」

何でしょうか、彼の笑顔って、周りの人が言っている癒しと言うのがとても納得できますね!
可愛いって言っていたライラヒルラさん達の言葉の意味が理解できますね!

…………妻とは会わせたくないです。







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