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第二章 旅は道連れ
81 クルトゥスさん 3
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クルトゥスさんの言葉に、頭に血が上りました。
「…それはどう言う事でしょう」
怒鳴り出しそうになるのを抑えて、クルトゥスさんに問いかけます。
「だって、どうやったって先に死んじゃうじゃん」
「!!………………」
「好きな人や親しい人が周りからどんどんいなくなっちゃうんだよ…。
とても……、辛い」
言葉通りに辛そうな、泣きそうな顔をしたクルトゥスさんに、私は何も言えませんでした。
「亜人の人達は、普通の人族より寿命が短いから…。
僕は僕以外の無性の人に一人だけ会ったこと有るけど、その人、300歳を迎える前に、自分の命を絶ってしまったよ。
友が、仲間が、親が、兄弟が、甥や姪が、その子や孫が……全ての愛する人が自分を置いていくのに耐えられなくなってね。
だから無性の寿命は不明なんだよ。
寿命が尽きる前に、自分で絶ってしまうからね」
私にはその辛さがわかります。
私だって妻に先立たれて、生きる気力を無くした一人なんですから。
生きていけなくなると言うのは、とてもよくわかります。
「………お前もなのか?」
ブルースが聞くと、
「そうだね、僕も両親は亡くなったし、弟もそろそろお迎えが来そうだ。
正直言って寂しいよ」
「パーティメンバーが居るではないか」
「うん、今は彼らと協力体制で、なすべき事をなす為に、寂しいなんて言ってる暇ないから良いんだけどね」
彼らは私達の様に家族という関係ではないようですね。
名付けをしたわけでもなさそうで、何か目的があって集まっている様です。
「だからね、余り深入りせずにいた方がいいと思うよ。
心を預けなければ、傷は深くないし」
なんでしょう、笑っているのに目が虚ろです。
「私もかつて妻を亡くした時に、生きる気力を無くして、体を壊し亡くなってしまいました。
別れが辛いのは承知しています。
好きにならなければ痛手が少ないと言うのもわかります」
無くすくらいなら、置いていかれるくらいなら、好きにならず、愛さなければ傷は浅いでしょう。
でも、それでも……。
「それでも私は家族と過ごしたいです。
置いていかれるのは辛いです。
置いていってしまう方も辛いでしょう。
それでも私は心を寄り添わせたいです。
家族を愛したいです。
亡くした妻を愛さなければ良かったとは絶対に思えません。
…そりゃあヤケになったりもしましたけど、今でも妻は私の中にいますし、この先もずっと一緒です。
もし……万が一、妻と再び会えなかったとしても、私は妻を愛しています。
この世界で出会えた家族も、別れが来ても私の中からいなくなる事はありません。
だから私は…私からは家族との縁を切る事はないですし、好きにならずにいる事はできません」
感情が昂って来て、何を言っているのかわからなくなって来ました。
それでも言葉は止まりません。
「クルトゥスさんの話しもわかります。
考え方も否定できません。
あなたが私の心のことを思って言ってくれたのだともわかります。
ありがとうございます。
それでも私は家族と心を通わせて生きていきます」
しんと静まり返る室内に、周りを見回すと、アインは笑って頷いていますし、シナトラも嬉しそうです。
チャックは目に涙が浮かんでいますけど、見なかったことにしましょう。
そして何故かブルースが得意満面な顔をしています。
クルトゥスさんのパーティメンバーの3人は、ちょっとビックリとした表情です。
そしてクルトゥスさんは、なぜか痛そうな顔をしています。
「貴方は強いんですね」
小さく息を吐き、俯いて話し出します。
「僕はは別れが辛いです。
だから深く気を許さない様にして来ました。
最初のうちは名付けもしていましたけど、深入りする前に気まずくなったらすぐに名前も回収して、出会いと別れを繰り返すうちに、名付け自体しなくなりました。
冒険者としての活動も、気晴らし程度にたまに依頼を受けるくらいです。
最近事情があって活動を再開していますけど、この3人とも利害関係で繋がっているだけです。
利害関係なら、心を預けなければ、別れが来ても傷付かないですから」
クルトゥスさんの言葉に、彼のパーティメンバーは、少し傷ついた顔をしています。
「……でも………やっぱり……寂しいですね……………」
クルトゥスさんが漏らした呟きに、ライラヒルラさんが椅子を倒して立ち上がります。
「何言ってんの?
利害関係?最初のきっかけはそうだけど、今は違うでしょ⁈」
「そうだよね、最初はお互い利用してたかもしれないけど、今もそうだと思ってるのってちょっと酷いよね」
椅子に座ったまま、ファラスさんが続けます。
「そうだよ、ボク、クーさん大好きだよ。
優しいし、怒らないし、叩かないし、蹴らないし、色々教えてくれるし、優しいし、大好きだよ」
立ち上がったホラハさん…ホラハ君?がクルトゥスさんに後ろから抱きつきます。
……襲いかかっている様にしか見えないのですけど。
「な、何言ってんの?
僕は君たちを利用しようとしてんだよ。
好かれる様なことなんて何もしてないでしょ」
「え?いや可愛いし?
悪ぶってても結局は人のために動いてばかりだし?」
「うん、見てて面白いし。
たまに空回ったりするけど、基本お人好しだしね」
「優しいよ!」
「な!…な……ナニを……」
赤くなるクルトゥスさんに、笑いながらブルースが言います。
「相変わらず自分のことをわかっておらぬな。
何を言おうとも、お前は人の為に尽力を尽くすお人好しの優しい奴だ」
「ふ、ふ…ふざけんな、バーーーカ!!!」
あ、逃げ出した。
「…それはどう言う事でしょう」
怒鳴り出しそうになるのを抑えて、クルトゥスさんに問いかけます。
「だって、どうやったって先に死んじゃうじゃん」
「!!………………」
「好きな人や親しい人が周りからどんどんいなくなっちゃうんだよ…。
とても……、辛い」
言葉通りに辛そうな、泣きそうな顔をしたクルトゥスさんに、私は何も言えませんでした。
「亜人の人達は、普通の人族より寿命が短いから…。
僕は僕以外の無性の人に一人だけ会ったこと有るけど、その人、300歳を迎える前に、自分の命を絶ってしまったよ。
友が、仲間が、親が、兄弟が、甥や姪が、その子や孫が……全ての愛する人が自分を置いていくのに耐えられなくなってね。
だから無性の寿命は不明なんだよ。
寿命が尽きる前に、自分で絶ってしまうからね」
私にはその辛さがわかります。
私だって妻に先立たれて、生きる気力を無くした一人なんですから。
生きていけなくなると言うのは、とてもよくわかります。
「………お前もなのか?」
ブルースが聞くと、
「そうだね、僕も両親は亡くなったし、弟もそろそろお迎えが来そうだ。
正直言って寂しいよ」
「パーティメンバーが居るではないか」
「うん、今は彼らと協力体制で、なすべき事をなす為に、寂しいなんて言ってる暇ないから良いんだけどね」
彼らは私達の様に家族という関係ではないようですね。
名付けをしたわけでもなさそうで、何か目的があって集まっている様です。
「だからね、余り深入りせずにいた方がいいと思うよ。
心を預けなければ、傷は深くないし」
なんでしょう、笑っているのに目が虚ろです。
「私もかつて妻を亡くした時に、生きる気力を無くして、体を壊し亡くなってしまいました。
別れが辛いのは承知しています。
好きにならなければ痛手が少ないと言うのもわかります」
無くすくらいなら、置いていかれるくらいなら、好きにならず、愛さなければ傷は浅いでしょう。
でも、それでも……。
「それでも私は家族と過ごしたいです。
置いていかれるのは辛いです。
置いていってしまう方も辛いでしょう。
それでも私は心を寄り添わせたいです。
家族を愛したいです。
亡くした妻を愛さなければ良かったとは絶対に思えません。
…そりゃあヤケになったりもしましたけど、今でも妻は私の中にいますし、この先もずっと一緒です。
もし……万が一、妻と再び会えなかったとしても、私は妻を愛しています。
この世界で出会えた家族も、別れが来ても私の中からいなくなる事はありません。
だから私は…私からは家族との縁を切る事はないですし、好きにならずにいる事はできません」
感情が昂って来て、何を言っているのかわからなくなって来ました。
それでも言葉は止まりません。
「クルトゥスさんの話しもわかります。
考え方も否定できません。
あなたが私の心のことを思って言ってくれたのだともわかります。
ありがとうございます。
それでも私は家族と心を通わせて生きていきます」
しんと静まり返る室内に、周りを見回すと、アインは笑って頷いていますし、シナトラも嬉しそうです。
チャックは目に涙が浮かんでいますけど、見なかったことにしましょう。
そして何故かブルースが得意満面な顔をしています。
クルトゥスさんのパーティメンバーの3人は、ちょっとビックリとした表情です。
そしてクルトゥスさんは、なぜか痛そうな顔をしています。
「貴方は強いんですね」
小さく息を吐き、俯いて話し出します。
「僕はは別れが辛いです。
だから深く気を許さない様にして来ました。
最初のうちは名付けもしていましたけど、深入りする前に気まずくなったらすぐに名前も回収して、出会いと別れを繰り返すうちに、名付け自体しなくなりました。
冒険者としての活動も、気晴らし程度にたまに依頼を受けるくらいです。
最近事情があって活動を再開していますけど、この3人とも利害関係で繋がっているだけです。
利害関係なら、心を預けなければ、別れが来ても傷付かないですから」
クルトゥスさんの言葉に、彼のパーティメンバーは、少し傷ついた顔をしています。
「……でも………やっぱり……寂しいですね……………」
クルトゥスさんが漏らした呟きに、ライラヒルラさんが椅子を倒して立ち上がります。
「何言ってんの?
利害関係?最初のきっかけはそうだけど、今は違うでしょ⁈」
「そうだよね、最初はお互い利用してたかもしれないけど、今もそうだと思ってるのってちょっと酷いよね」
椅子に座ったまま、ファラスさんが続けます。
「そうだよ、ボク、クーさん大好きだよ。
優しいし、怒らないし、叩かないし、蹴らないし、色々教えてくれるし、優しいし、大好きだよ」
立ち上がったホラハさん…ホラハ君?がクルトゥスさんに後ろから抱きつきます。
……襲いかかっている様にしか見えないのですけど。
「な、何言ってんの?
僕は君たちを利用しようとしてんだよ。
好かれる様なことなんて何もしてないでしょ」
「え?いや可愛いし?
悪ぶってても結局は人のために動いてばかりだし?」
「うん、見てて面白いし。
たまに空回ったりするけど、基本お人好しだしね」
「優しいよ!」
「な!…な……ナニを……」
赤くなるクルトゥスさんに、笑いながらブルースが言います。
「相変わらず自分のことをわかっておらぬな。
何を言おうとも、お前は人の為に尽力を尽くすお人好しの優しい奴だ」
「ふ、ふ…ふざけんな、バーーーカ!!!」
あ、逃げ出した。
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