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第二章 旅は道連れ
77 いや、本当に怖い国なんですけど
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夕食後、いつもの様に部屋に皆で集まり、お茶を飲みながらまったりお話しタイムです。
私はティちゃんから聞いた話を、チャックやシナトラに聞かせるためにも話題にしました。
「ここの王族の血を引いている人達は皆美しいんですよ。
どんな種族と交わっても、蛇の血が濃いのか、生まれてくる子供の殆どが蛇の亜人で、一様に美しいんです。
美しさはそれぞれで、儚かったり、逞しかったり、嫋やかだったり、精悍だったりしますけど、とにかく皆美形なんです」
美形ばかり生まれる血筋……怖い。
「好みの異性を差し出され、国の規模も併せて考えると、拒否するより受け入れることの方が容易ですからね。
そうやって大きくなってきた……大きくなっている国なのです」
おお、現在進行形なのですね。
正に『長い物には巻かれろ』思考ですね。
怖い。
「蛇など足のないトカゲだろ」
「黙りなさい!」
ブルースの頭をアインがはたきます。
結構力が篭っていたような……。
怖い。
「この国では蛇を悪く言うと捕まることも有りますから気をつけて下さいね」
皆に言いながらも、視線はシナトラに向かっています。
ああ、そうですね。
この子が一番心配ですね。
「この国で一番重い罪は蛇を殺すことです。
蛇はどんなに強い毒持ちでも、この国の住民は襲わないそうなのです。
襲われなければ殺す必要は有りませんからね。
しかも蛇の鱗や皮を装飾品として加工をし、販売して収入を得る方が多いので、保護する事はあっても殺す事はないそうです」
蛇が収入源の一つで、危害を加える事がないのなら、排除する必要は無いですからね。
「他国から初めて来た商人や冒険者などが、知らずに蛇を殺したら、投獄、罰金の上、二度とこの地に近づかないようにさせられます。
最悪処刑される事もあります」
「我が聞いた事ある話では、馬車でうっかり轢き殺した商人の一行が、全財産取られた上、御者は馬走の刑で処された上に、一族まで投獄されたとか」
怖い!
馬走の意味を聞いて更にゾッとしました。
怖い!
本当に怖いよこの国!
チャックとシナトラも青い顔をしています。
シナトラのうっかり発言も大丈夫そうですかね。
この国の中では本当にうっかり発言を控えて欲しいです。
翌朝起きて、朝ごはんもそこそこに私達は移動しました。
ポニー達がうっかり蛇を踏み潰すと怖い事になるので、歩いて移動です。
ポニー達は私達が戻るまで申し訳ないですけど、騎獣宿舎でお留守番をお願いしました。
危険を回避するためなら、何日でも歩きますよ。
食料は肉を狩ってくれば大丈夫だし、私のアイテムボックスにも色々入っています。
野宿も慣れた物ですから、一刻も早くこの国を出るためにも、脇目も振らず川を越え、山理登り黙々と南へ進みます。
城下街を離れ3日目の夕刻、やっと目的地へ到着しました。
ホルノーンは南北に縦長の国です。
目的地であるルーライオの領地は南端の、海沿いの領地でした。
海の匂いってあるじゃないですか、磯の香りとでも言うのでしょうか、あの独特の匂い。
それが殆ど無いんですよ、ルーライオの海って。
海の色ってあるじゃないですか、日本の海なら濃紺って言いますか、ちょっと暗い感じ。
南のリゾート地ならコバルトブルーと言うのですか、透明感のある水色、どちらにせよ青系統ですよね。
緑色なんですよ、ルーライオの海は。
エメラルドグリーンと言うのでしょうけど、透明感があまり無いけど輝いているところが、私からすれば翡翠色かと思われます。
母の帯留めに付いていた、あのトロッとした様な、思わず口に入れたくなる様な色。
そんな私の知っている海とは少し様子の違うルーライオの海です。
小高い丘の上から、ルーライオの領地が一望できます。
「へー、あれが海なんだ」
「チャックは海を知っているんですか?」
「じいちゃんから話を聞いたことがあるだけ。
海は美味しいってよく言ってた」
うんうん、海は美味しいもの沢山ありますよね。
川魚とは風味が違いますし、イカやタコやカニや……よだれが出そうです。
「海って美味しいの?」
「海では魚や貝以外でも色んな食べられる物が捕れるのですよ」
「へー」
アインとシナトラがほのぼのと会話をしている隣でブルースは、
「我は肉の方が好きだ」
と呟いています。
肉食ですもんね、ブルースは。
「水の上のアレって船だよね?
大きいのとか小さいのとか色々あるね」
初めて目にするものばかりなのでしょう、シナトラがとても楽しそうにしています。
「小さな船は、漁…魚などを捕ったりする漁船でしょう。
大きな物は、他の国や大陸へ行くための人や物を運ぶ物ですよ」
「見えないけど、船で進むと行き止まりが他の大陸なの?」
「海には行き止まりはありませんよ」
「なんで?
どんなおっきな湖だって行き止まりがあるよ?」
「私たちの住む陸地は海の中に浮かぶ大きな島の様な物なのですよ」
「えーー、なんで、どうして?」
シナトラのなぜなに攻撃に、一つ一つ答えるアインに癒されます。
まるで3歳児とその母親のようです。
そして、それを素知らぬふりをしながら、聞き耳を立てているチャックも可愛いですね。
ふふふふふ。
楽しく話しながら私達はルーライオへ到着しました。
私はティちゃんから聞いた話を、チャックやシナトラに聞かせるためにも話題にしました。
「ここの王族の血を引いている人達は皆美しいんですよ。
どんな種族と交わっても、蛇の血が濃いのか、生まれてくる子供の殆どが蛇の亜人で、一様に美しいんです。
美しさはそれぞれで、儚かったり、逞しかったり、嫋やかだったり、精悍だったりしますけど、とにかく皆美形なんです」
美形ばかり生まれる血筋……怖い。
「好みの異性を差し出され、国の規模も併せて考えると、拒否するより受け入れることの方が容易ですからね。
そうやって大きくなってきた……大きくなっている国なのです」
おお、現在進行形なのですね。
正に『長い物には巻かれろ』思考ですね。
怖い。
「蛇など足のないトカゲだろ」
「黙りなさい!」
ブルースの頭をアインがはたきます。
結構力が篭っていたような……。
怖い。
「この国では蛇を悪く言うと捕まることも有りますから気をつけて下さいね」
皆に言いながらも、視線はシナトラに向かっています。
ああ、そうですね。
この子が一番心配ですね。
「この国で一番重い罪は蛇を殺すことです。
蛇はどんなに強い毒持ちでも、この国の住民は襲わないそうなのです。
襲われなければ殺す必要は有りませんからね。
しかも蛇の鱗や皮を装飾品として加工をし、販売して収入を得る方が多いので、保護する事はあっても殺す事はないそうです」
蛇が収入源の一つで、危害を加える事がないのなら、排除する必要は無いですからね。
「他国から初めて来た商人や冒険者などが、知らずに蛇を殺したら、投獄、罰金の上、二度とこの地に近づかないようにさせられます。
最悪処刑される事もあります」
「我が聞いた事ある話では、馬車でうっかり轢き殺した商人の一行が、全財産取られた上、御者は馬走の刑で処された上に、一族まで投獄されたとか」
怖い!
馬走の意味を聞いて更にゾッとしました。
怖い!
本当に怖いよこの国!
チャックとシナトラも青い顔をしています。
シナトラのうっかり発言も大丈夫そうですかね。
この国の中では本当にうっかり発言を控えて欲しいです。
翌朝起きて、朝ごはんもそこそこに私達は移動しました。
ポニー達がうっかり蛇を踏み潰すと怖い事になるので、歩いて移動です。
ポニー達は私達が戻るまで申し訳ないですけど、騎獣宿舎でお留守番をお願いしました。
危険を回避するためなら、何日でも歩きますよ。
食料は肉を狩ってくれば大丈夫だし、私のアイテムボックスにも色々入っています。
野宿も慣れた物ですから、一刻も早くこの国を出るためにも、脇目も振らず川を越え、山理登り黙々と南へ進みます。
城下街を離れ3日目の夕刻、やっと目的地へ到着しました。
ホルノーンは南北に縦長の国です。
目的地であるルーライオの領地は南端の、海沿いの領地でした。
海の匂いってあるじゃないですか、磯の香りとでも言うのでしょうか、あの独特の匂い。
それが殆ど無いんですよ、ルーライオの海って。
海の色ってあるじゃないですか、日本の海なら濃紺って言いますか、ちょっと暗い感じ。
南のリゾート地ならコバルトブルーと言うのですか、透明感のある水色、どちらにせよ青系統ですよね。
緑色なんですよ、ルーライオの海は。
エメラルドグリーンと言うのでしょうけど、透明感があまり無いけど輝いているところが、私からすれば翡翠色かと思われます。
母の帯留めに付いていた、あのトロッとした様な、思わず口に入れたくなる様な色。
そんな私の知っている海とは少し様子の違うルーライオの海です。
小高い丘の上から、ルーライオの領地が一望できます。
「へー、あれが海なんだ」
「チャックは海を知っているんですか?」
「じいちゃんから話を聞いたことがあるだけ。
海は美味しいってよく言ってた」
うんうん、海は美味しいもの沢山ありますよね。
川魚とは風味が違いますし、イカやタコやカニや……よだれが出そうです。
「海って美味しいの?」
「海では魚や貝以外でも色んな食べられる物が捕れるのですよ」
「へー」
アインとシナトラがほのぼのと会話をしている隣でブルースは、
「我は肉の方が好きだ」
と呟いています。
肉食ですもんね、ブルースは。
「水の上のアレって船だよね?
大きいのとか小さいのとか色々あるね」
初めて目にするものばかりなのでしょう、シナトラがとても楽しそうにしています。
「小さな船は、漁…魚などを捕ったりする漁船でしょう。
大きな物は、他の国や大陸へ行くための人や物を運ぶ物ですよ」
「見えないけど、船で進むと行き止まりが他の大陸なの?」
「海には行き止まりはありませんよ」
「なんで?
どんなおっきな湖だって行き止まりがあるよ?」
「私たちの住む陸地は海の中に浮かぶ大きな島の様な物なのですよ」
「えーー、なんで、どうして?」
シナトラのなぜなに攻撃に、一つ一つ答えるアインに癒されます。
まるで3歳児とその母親のようです。
そして、それを素知らぬふりをしながら、聞き耳を立てているチャックも可愛いですね。
ふふふふふ。
楽しく話しながら私達はルーライオへ到着しました。
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