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第二章 旅は道連れ
75 人手不足のようです
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シーシャムさんから書類を預かった次の日、私達はユユグル国を出立しました。
隣の国も、そのまた隣の国も、問題なく通過して、4日目の午前中ホルノーンの王都に到着しました。
ホルノーン帝国は元は小さな国だったそうなのですけど、近隣諸国と婚姻関係を結び、いつの間にかその国を取り入れ、血を流す事なく大国になったそうです。
吸収された国は、そのまま元王族が領主として治めているのだとか。
「よく問題が起きませんねえ」
「物騒な話は聞くがな」
私の呟きにブルースが返します。
洗脳でもしているのでしょうか。
「上が変わっても悪政でさえなければ、民は問題ないですからね。
戦って領土を増やせば、人が死に、土地が荒れ、人心が離れる事もあるでしょう。
穏やかに、密やかに、気付けばいつの間にか…ですからね。
余所者の私達は深入りしない事です」
そんな恐ろしい事に深入りなんてしませんよ。
宿の手配をアインに頼み、他の3人は商業地区へ向かいました。
どうやら武器や防具の店が充実しているので、じっくり見たいそうです。
書類を届けるだけなので、ギルドへは一人で向かいました。
ギルドの職員に呼んでもらいお会いしたタクワサさんは、四十代後半のモヒカンでした。
……突っ込みむせんよ、私は。
「おお、あんたらが変異種を退治してくれた奴らか。
ぜひウチでも大きな依頼受けてくれな」
「お受けしたいのは山々なのですけど、明日にでも移動しますので、依頼は無理かと」
「急ぐのかい?そうでなければ是非受けて欲しいものが20個程あるんだけどな」
………多いよ!
「町外れのダンジョンも珍しい属性の魔石が出るぞ」
「いえ、メンバーが暫くダンジョンには行きたく無いと言ってますし」
ブルースとチャックがですね…。
「北側の湖で大量発生してる魔魚の討伐はどうだ?
あれは食えば美味いし、金にもなるぞ」
「水に得意なメンバーが居ませんから」
「盗賊狩りなんかは報酬が破格だぞ」
「そこまでお金に苦労していませんので」
「なら、なんなら受けてくれるんだよ」
「何も受けません」
私がきっぱりと断ると、
「無理強いは出来んが、人手不足なんだよ」
と、ガックリと肩を落としました。
「そんなにも人手不足なんですか?」
「ああ、最近若い連中が、こぞって南に行きやがってよ」
「南とは、ルーライオですか?」
「ああ。あそこにはこの国一番のパーティが居るから、若い奴らがどんどんあっちへ行っちまうんだ」
どうやらブルースの元いたパーティがとても人気で、会って話をしたいとか、腕試しをしたいとかで、冒険者以外でもルーライオへ活動拠点を移す人が多発していて、色々なものが滞っているそうです。
「人が集まるから、近辺にガラの悪い奴らも集まっているみたいでな、冒険者以外を狙った盗賊などが出やがる。
普通の依頼も溜まってきているのに、盗賊まで手が回らないしよ」
盗賊ですか、物騒ですね。
ポニー達に載っている私達が襲われる事はないでしょうけど、もし見かけたらお仕置きですね。
ふふふふ。
「そしたら倅が『良い冒険者をそっちに行くようにした』って連絡きたから待ってたのに」
どうやらシーシャムさんに図られた様ですね。
「先ほども言いましたけど、私達は人に会うためにこの国へ来たので、依頼を受けている暇がないのです」
「そうか…じゃあ人と会った後、気が向いたら依頼を受けてくれるとありがたいんだが」
「約束は出来ませんけど、気にかけておきます」
私の微妙な返答に、こりゃ無理だと分かってくれた様です。
すみませんが、まだ色んな場所へ行きたいので、一箇所にとどまるつもりはないんですよ。
ギルドを出て、商業区画へ向かいます。
新しい場所へ来たら、どんな物が売っているかのチェックは欠かせません。
色んな店を覗きながら3人のいる場所へ向かいます。
何処あたりにいるか何となくわかりますから、のんびりと向かうのですが、どうやら二手に分かれている様ですね。
チャックは珍しい果物や木の実を扱っているお店にいました。
私もいくつか買います。
シナトラとブルースはお酒を取り扱っている店で買い込んでいました。
あまりたくさん買うとまたアインに叱られますよ。
「3人とも武器や防具を買うのではなかったのですか?」
「おう、見て回ったが装飾過多で実戦向きではなかったな」
「キラキラしてたよ」
「実際に使うって感じじゃなくて、飾り用って物がほとんどだったよ」
どうやら【武器や防具が充実】の【充実】の部分の意味が違った様ですね。
彼らの求める物は、実戦で使える物ですから、飾って眺める武器などは、見ても面白くも何ともないでしょう。
だから、早々に好きなものを見て回っていたそうです。
取り敢えず、一服でもしてから、他のものを見て回る事にしました。
隣の国も、そのまた隣の国も、問題なく通過して、4日目の午前中ホルノーンの王都に到着しました。
ホルノーン帝国は元は小さな国だったそうなのですけど、近隣諸国と婚姻関係を結び、いつの間にかその国を取り入れ、血を流す事なく大国になったそうです。
吸収された国は、そのまま元王族が領主として治めているのだとか。
「よく問題が起きませんねえ」
「物騒な話は聞くがな」
私の呟きにブルースが返します。
洗脳でもしているのでしょうか。
「上が変わっても悪政でさえなければ、民は問題ないですからね。
戦って領土を増やせば、人が死に、土地が荒れ、人心が離れる事もあるでしょう。
穏やかに、密やかに、気付けばいつの間にか…ですからね。
余所者の私達は深入りしない事です」
そんな恐ろしい事に深入りなんてしませんよ。
宿の手配をアインに頼み、他の3人は商業地区へ向かいました。
どうやら武器や防具の店が充実しているので、じっくり見たいそうです。
書類を届けるだけなので、ギルドへは一人で向かいました。
ギルドの職員に呼んでもらいお会いしたタクワサさんは、四十代後半のモヒカンでした。
……突っ込みむせんよ、私は。
「おお、あんたらが変異種を退治してくれた奴らか。
ぜひウチでも大きな依頼受けてくれな」
「お受けしたいのは山々なのですけど、明日にでも移動しますので、依頼は無理かと」
「急ぐのかい?そうでなければ是非受けて欲しいものが20個程あるんだけどな」
………多いよ!
「町外れのダンジョンも珍しい属性の魔石が出るぞ」
「いえ、メンバーが暫くダンジョンには行きたく無いと言ってますし」
ブルースとチャックがですね…。
「北側の湖で大量発生してる魔魚の討伐はどうだ?
あれは食えば美味いし、金にもなるぞ」
「水に得意なメンバーが居ませんから」
「盗賊狩りなんかは報酬が破格だぞ」
「そこまでお金に苦労していませんので」
「なら、なんなら受けてくれるんだよ」
「何も受けません」
私がきっぱりと断ると、
「無理強いは出来んが、人手不足なんだよ」
と、ガックリと肩を落としました。
「そんなにも人手不足なんですか?」
「ああ、最近若い連中が、こぞって南に行きやがってよ」
「南とは、ルーライオですか?」
「ああ。あそこにはこの国一番のパーティが居るから、若い奴らがどんどんあっちへ行っちまうんだ」
どうやらブルースの元いたパーティがとても人気で、会って話をしたいとか、腕試しをしたいとかで、冒険者以外でもルーライオへ活動拠点を移す人が多発していて、色々なものが滞っているそうです。
「人が集まるから、近辺にガラの悪い奴らも集まっているみたいでな、冒険者以外を狙った盗賊などが出やがる。
普通の依頼も溜まってきているのに、盗賊まで手が回らないしよ」
盗賊ですか、物騒ですね。
ポニー達に載っている私達が襲われる事はないでしょうけど、もし見かけたらお仕置きですね。
ふふふふ。
「そしたら倅が『良い冒険者をそっちに行くようにした』って連絡きたから待ってたのに」
どうやらシーシャムさんに図られた様ですね。
「先ほども言いましたけど、私達は人に会うためにこの国へ来たので、依頼を受けている暇がないのです」
「そうか…じゃあ人と会った後、気が向いたら依頼を受けてくれるとありがたいんだが」
「約束は出来ませんけど、気にかけておきます」
私の微妙な返答に、こりゃ無理だと分かってくれた様です。
すみませんが、まだ色んな場所へ行きたいので、一箇所にとどまるつもりはないんですよ。
ギルドを出て、商業区画へ向かいます。
新しい場所へ来たら、どんな物が売っているかのチェックは欠かせません。
色んな店を覗きながら3人のいる場所へ向かいます。
何処あたりにいるか何となくわかりますから、のんびりと向かうのですが、どうやら二手に分かれている様ですね。
チャックは珍しい果物や木の実を扱っているお店にいました。
私もいくつか買います。
シナトラとブルースはお酒を取り扱っている店で買い込んでいました。
あまりたくさん買うとまたアインに叱られますよ。
「3人とも武器や防具を買うのではなかったのですか?」
「おう、見て回ったが装飾過多で実戦向きではなかったな」
「キラキラしてたよ」
「実際に使うって感じじゃなくて、飾り用って物がほとんどだったよ」
どうやら【武器や防具が充実】の【充実】の部分の意味が違った様ですね。
彼らの求める物は、実戦で使える物ですから、飾って眺める武器などは、見ても面白くも何ともないでしょう。
だから、早々に好きなものを見て回っていたそうです。
取り敢えず、一服でもしてから、他のものを見て回る事にしました。
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