75 / 206
第二章 旅は道連れ
75 人手不足のようです
しおりを挟む
シーシャムさんから書類を預かった次の日、私達はユユグル国を出立しました。
隣の国も、そのまた隣の国も、問題なく通過して、4日目の午前中ホルノーンの王都に到着しました。
ホルノーン帝国は元は小さな国だったそうなのですけど、近隣諸国と婚姻関係を結び、いつの間にかその国を取り入れ、血を流す事なく大国になったそうです。
吸収された国は、そのまま元王族が領主として治めているのだとか。
「よく問題が起きませんねえ」
「物騒な話は聞くがな」
私の呟きにブルースが返します。
洗脳でもしているのでしょうか。
「上が変わっても悪政でさえなければ、民は問題ないですからね。
戦って領土を増やせば、人が死に、土地が荒れ、人心が離れる事もあるでしょう。
穏やかに、密やかに、気付けばいつの間にか…ですからね。
余所者の私達は深入りしない事です」
そんな恐ろしい事に深入りなんてしませんよ。
宿の手配をアインに頼み、他の3人は商業地区へ向かいました。
どうやら武器や防具の店が充実しているので、じっくり見たいそうです。
書類を届けるだけなので、ギルドへは一人で向かいました。
ギルドの職員に呼んでもらいお会いしたタクワサさんは、四十代後半のモヒカンでした。
……突っ込みむせんよ、私は。
「おお、あんたらが変異種を退治してくれた奴らか。
ぜひウチでも大きな依頼受けてくれな」
「お受けしたいのは山々なのですけど、明日にでも移動しますので、依頼は無理かと」
「急ぐのかい?そうでなければ是非受けて欲しいものが20個程あるんだけどな」
………多いよ!
「町外れのダンジョンも珍しい属性の魔石が出るぞ」
「いえ、メンバーが暫くダンジョンには行きたく無いと言ってますし」
ブルースとチャックがですね…。
「北側の湖で大量発生してる魔魚の討伐はどうだ?
あれは食えば美味いし、金にもなるぞ」
「水に得意なメンバーが居ませんから」
「盗賊狩りなんかは報酬が破格だぞ」
「そこまでお金に苦労していませんので」
「なら、なんなら受けてくれるんだよ」
「何も受けません」
私がきっぱりと断ると、
「無理強いは出来んが、人手不足なんだよ」
と、ガックリと肩を落としました。
「そんなにも人手不足なんですか?」
「ああ、最近若い連中が、こぞって南に行きやがってよ」
「南とは、ルーライオですか?」
「ああ。あそこにはこの国一番のパーティが居るから、若い奴らがどんどんあっちへ行っちまうんだ」
どうやらブルースの元いたパーティがとても人気で、会って話をしたいとか、腕試しをしたいとかで、冒険者以外でもルーライオへ活動拠点を移す人が多発していて、色々なものが滞っているそうです。
「人が集まるから、近辺にガラの悪い奴らも集まっているみたいでな、冒険者以外を狙った盗賊などが出やがる。
普通の依頼も溜まってきているのに、盗賊まで手が回らないしよ」
盗賊ですか、物騒ですね。
ポニー達に載っている私達が襲われる事はないでしょうけど、もし見かけたらお仕置きですね。
ふふふふ。
「そしたら倅が『良い冒険者をそっちに行くようにした』って連絡きたから待ってたのに」
どうやらシーシャムさんに図られた様ですね。
「先ほども言いましたけど、私達は人に会うためにこの国へ来たので、依頼を受けている暇がないのです」
「そうか…じゃあ人と会った後、気が向いたら依頼を受けてくれるとありがたいんだが」
「約束は出来ませんけど、気にかけておきます」
私の微妙な返答に、こりゃ無理だと分かってくれた様です。
すみませんが、まだ色んな場所へ行きたいので、一箇所にとどまるつもりはないんですよ。
ギルドを出て、商業区画へ向かいます。
新しい場所へ来たら、どんな物が売っているかのチェックは欠かせません。
色んな店を覗きながら3人のいる場所へ向かいます。
何処あたりにいるか何となくわかりますから、のんびりと向かうのですが、どうやら二手に分かれている様ですね。
チャックは珍しい果物や木の実を扱っているお店にいました。
私もいくつか買います。
シナトラとブルースはお酒を取り扱っている店で買い込んでいました。
あまりたくさん買うとまたアインに叱られますよ。
「3人とも武器や防具を買うのではなかったのですか?」
「おう、見て回ったが装飾過多で実戦向きではなかったな」
「キラキラしてたよ」
「実際に使うって感じじゃなくて、飾り用って物がほとんどだったよ」
どうやら【武器や防具が充実】の【充実】の部分の意味が違った様ですね。
彼らの求める物は、実戦で使える物ですから、飾って眺める武器などは、見ても面白くも何ともないでしょう。
だから、早々に好きなものを見て回っていたそうです。
取り敢えず、一服でもしてから、他のものを見て回る事にしました。
隣の国も、そのまた隣の国も、問題なく通過して、4日目の午前中ホルノーンの王都に到着しました。
ホルノーン帝国は元は小さな国だったそうなのですけど、近隣諸国と婚姻関係を結び、いつの間にかその国を取り入れ、血を流す事なく大国になったそうです。
吸収された国は、そのまま元王族が領主として治めているのだとか。
「よく問題が起きませんねえ」
「物騒な話は聞くがな」
私の呟きにブルースが返します。
洗脳でもしているのでしょうか。
「上が変わっても悪政でさえなければ、民は問題ないですからね。
戦って領土を増やせば、人が死に、土地が荒れ、人心が離れる事もあるでしょう。
穏やかに、密やかに、気付けばいつの間にか…ですからね。
余所者の私達は深入りしない事です」
そんな恐ろしい事に深入りなんてしませんよ。
宿の手配をアインに頼み、他の3人は商業地区へ向かいました。
どうやら武器や防具の店が充実しているので、じっくり見たいそうです。
書類を届けるだけなので、ギルドへは一人で向かいました。
ギルドの職員に呼んでもらいお会いしたタクワサさんは、四十代後半のモヒカンでした。
……突っ込みむせんよ、私は。
「おお、あんたらが変異種を退治してくれた奴らか。
ぜひウチでも大きな依頼受けてくれな」
「お受けしたいのは山々なのですけど、明日にでも移動しますので、依頼は無理かと」
「急ぐのかい?そうでなければ是非受けて欲しいものが20個程あるんだけどな」
………多いよ!
「町外れのダンジョンも珍しい属性の魔石が出るぞ」
「いえ、メンバーが暫くダンジョンには行きたく無いと言ってますし」
ブルースとチャックがですね…。
「北側の湖で大量発生してる魔魚の討伐はどうだ?
あれは食えば美味いし、金にもなるぞ」
「水に得意なメンバーが居ませんから」
「盗賊狩りなんかは報酬が破格だぞ」
「そこまでお金に苦労していませんので」
「なら、なんなら受けてくれるんだよ」
「何も受けません」
私がきっぱりと断ると、
「無理強いは出来んが、人手不足なんだよ」
と、ガックリと肩を落としました。
「そんなにも人手不足なんですか?」
「ああ、最近若い連中が、こぞって南に行きやがってよ」
「南とは、ルーライオですか?」
「ああ。あそこにはこの国一番のパーティが居るから、若い奴らがどんどんあっちへ行っちまうんだ」
どうやらブルースの元いたパーティがとても人気で、会って話をしたいとか、腕試しをしたいとかで、冒険者以外でもルーライオへ活動拠点を移す人が多発していて、色々なものが滞っているそうです。
「人が集まるから、近辺にガラの悪い奴らも集まっているみたいでな、冒険者以外を狙った盗賊などが出やがる。
普通の依頼も溜まってきているのに、盗賊まで手が回らないしよ」
盗賊ですか、物騒ですね。
ポニー達に載っている私達が襲われる事はないでしょうけど、もし見かけたらお仕置きですね。
ふふふふ。
「そしたら倅が『良い冒険者をそっちに行くようにした』って連絡きたから待ってたのに」
どうやらシーシャムさんに図られた様ですね。
「先ほども言いましたけど、私達は人に会うためにこの国へ来たので、依頼を受けている暇がないのです」
「そうか…じゃあ人と会った後、気が向いたら依頼を受けてくれるとありがたいんだが」
「約束は出来ませんけど、気にかけておきます」
私の微妙な返答に、こりゃ無理だと分かってくれた様です。
すみませんが、まだ色んな場所へ行きたいので、一箇所にとどまるつもりはないんですよ。
ギルドを出て、商業区画へ向かいます。
新しい場所へ来たら、どんな物が売っているかのチェックは欠かせません。
色んな店を覗きながら3人のいる場所へ向かいます。
何処あたりにいるか何となくわかりますから、のんびりと向かうのですが、どうやら二手に分かれている様ですね。
チャックは珍しい果物や木の実を扱っているお店にいました。
私もいくつか買います。
シナトラとブルースはお酒を取り扱っている店で買い込んでいました。
あまりたくさん買うとまたアインに叱られますよ。
「3人とも武器や防具を買うのではなかったのですか?」
「おう、見て回ったが装飾過多で実戦向きではなかったな」
「キラキラしてたよ」
「実際に使うって感じじゃなくて、飾り用って物がほとんどだったよ」
どうやら【武器や防具が充実】の【充実】の部分の意味が違った様ですね。
彼らの求める物は、実戦で使える物ですから、飾って眺める武器などは、見ても面白くも何ともないでしょう。
だから、早々に好きなものを見て回っていたそうです。
取り敢えず、一服でもしてから、他のものを見て回る事にしました。
12
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~
雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。
新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。
助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。
彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。
『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。
女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。
この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。
だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。
ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。
噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。
その資金源も目的もわからない。
不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。
その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。
だが、ジルドランは人間。娘は魔族。
血が繋がっていないことは明白。
いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる