【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

72 ブルースの新しい魔法

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〈【魔素】って私のイメージでは【気】のような物で、体の中を巡るのと、呼吸として大気から取り入れて循環させ、吐き出す…そんなイメージなんですけど…それで合ってますか? 〉

私はティちゃんに話しかけました。

〈うん、そんな感じかな 〉

〈なら【外気功】もできるのでは無いのですか? 〉

気功には、体内で巡らせる【内気功】と外に出す【外気功】が有り、その【外気功】を漫画などでは【気功砲】みたいにして使っていますけど、本来は癒しのヒーリング効果があると言われています。
【魔素】が【気】のような物なら、同じような効果が無いのでしょうか?

〈あるよ、って言うか、魔素を外に出して回復魔法使うんだから。
厳密に言うと【魔素】と【魔力】は別物だよ。  

わかりやすく言うと【魔素】は血中の酸素?外から取り入れて体内を巡っているモノかな。
その【魔素】をエネルギーとしたのが【魔力】…で通じるかな? 〉

〈何となく言いたい事はわかりました 〉

本当に感覚的になので、これを他の人に説明などはできませんけど、細かく言うと別物なのだと言うのがわかりました…よ?


〈体内の不調の殆どが、魔素が滞ったり濁ったりして起こるのだから、外から綺麗な魔素を入れたり、強制的に魔素を動かすことで治るんだよ。  

外傷も、体内の魔素を活性化させる事で、新陳代謝を促して治すんだ。
でも皆んな理屈は知らずにやってるけどね 〉

回復魔法とはそんな仕組みなんですね。
そして魔素も体内の血液みたいな役割なんですね。
でも皆さん知らないのですか?
知らずに出来るのですか?

〈本能でやってるよね。
だって魔素や魔力や魔法を研究している人なんて、この世界には居ないもん。 

薬草なんかだと目に見えるから、薬関係は結構研究開発されてきたけど、目に見えない物はなかなかね。

大体生きることでいっぱいいっぱいになってて、色んな物が大雑把な世界なんだもん、ジョニーの居た世界まで発展するまでこの星の寿命があるかどうか…って感じだよね 〉

そこまでなんですか……、話が逸れましたね。

〈では私も知らずに、体内の魔素を使って回復魔法をかけていたのですね 〉

〈そうだよ。
ジョニーは魔力多いから、バンバン使う方が良いよ。
あのドラゴン…王様トカゲも使うといいよ。 

取り入れちゃった魔素を循環させて、意識して外に出すと、魔化する事もないんじゃないかな 〉

〈わかりました、言ってみます。
ありがとう、ティちゃん 〉

〈どういたしまして、お安い御用だよ 〉

さすが神様…では無いですね、案内人?の方達のくださった機能、良い仕事をしてくれます。
さて、ブルースにこの事を告げなければいけませんね。



「は?我が回復魔法?
そんなもの使えぬぞ」
案の定『何言ってんだコイツ』みたいな反応をされてしまいました。

私は事細かく説明して、納得したブルースに、イメージの浮かべ方を教えます。

「…………わからぬ」
「えええ……ブルース魔法得意で使えるじゃないですか。
例えば風魔法で魔獣を倒す時何を考えているのですか?」
「うぬ、『消し飛べ!』だな」
「ブレスを吐くときは?」
「『薙ぎ払え!』だな」
「結界魔法……」
「『近寄るでない!』」
「……………………」

なんでそんなに得意満面な顔をしているのかわかりません。
こう言うのって確か『ドヤ顔』とか言うんでしたっけ?
言葉はどんどん変わっていきますよね。
新人さんとかとのコミュニケーションで、言葉のジェネレーションギャップを感じていましたよ。
なぜズボンや寝巻きや背広ではいけないのかわかりませんでしたけど。


………逃避していてはいけませんね。
なんでそんなに大雑把なのでしょう。
ここは一つ……。

「「「!!!!!!!!!!」」」
私はナイフで自分の掌を縦に斬りました。
「結構痛いです」
掌から流れ落ちる血が、テーブルの上に収まり切らず、床まで汚します。

「な…何やってんだよあんた!!」
「父ちゃん…え?……なに?……なんで?」
怒鳴りながら自分の服で私の傷を押さえるチャックと、パニックになっているシナトラ。
肝心のブルースは、呆然と私をみて固まっています。

「この傷を治して下さい。
傷が塞がった後を思い浮かべて。
血が止まり、傷口がくっつき、傷跡が綺麗に消える。
頭の中に思い浮かべながら、魔素を私の掌に注いでください。
呪文は……『塞げ』でも、『治れ』でも大丈夫だと思いますよ」

チャックに放してもらい、掌をブルースに差し出すと、ようやく動き出したブルースが、両手で私の手に触れない様に囲み込みました。
ほんのり温かなナニかがブルースから流れ込んできます。

「……………【塞がれ】」

呪文と同時に、温かなナニかがぐっと押し寄せて来る感じがしました。
これが魔素ですね。
傷はみるみる塞がって、やがて跡形もなく消えてしまいました。

「大成功、ですね」
私の言葉にチャックとシナトラがふっと息を吐きました。
ブルースは、自分の両手を見て
「我に回復魔法が使えるのか…、この歳になって新たな魔法が使えるとは…」
などと独り言を呟いていたと思ったら、いきなり顔を上げてこちらを睨んできました。

「いくら魔法を使わせるためと言えども。こんな事は二度とするではない!」
「もうしませんよ、痛いですから」

手を洗って来ますねと、私は部屋を出て、手洗い場へ向かいます。
手を洗い、乾燥で手を乾かした後、周囲に誰もいないのを確認して、魔法を一つ。

「痛いの痛いの、飛んでいけ」

いや、痛いんですよ、本当に。
傷は塞がりましたけど、塞がっただけで、痛みはそのまま。
あの場では我慢しましたけど、傷を塞ぐだけでは痛みは取れないんですね。

小さな切り傷などではあまり感じないかもしれませんけど、大きな傷は塞ぐだけではダメですね。
一つ学びましたわ。
これから傷を治す時は痛みも治るようにイメージしましょう。






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