【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
72 / 206
第二章 旅は道連れ

72 ブルースの新しい魔法

しおりを挟む

〈【魔素】って私のイメージでは【気】のような物で、体の中を巡るのと、呼吸として大気から取り入れて循環させ、吐き出す…そんなイメージなんですけど…それで合ってますか? 〉

私はティちゃんに話しかけました。

〈うん、そんな感じかな 〉

〈なら【外気功】もできるのでは無いのですか? 〉

気功には、体内で巡らせる【内気功】と外に出す【外気功】が有り、その【外気功】を漫画などでは【気功砲】みたいにして使っていますけど、本来は癒しのヒーリング効果があると言われています。
【魔素】が【気】のような物なら、同じような効果が無いのでしょうか?

〈あるよ、って言うか、魔素を外に出して回復魔法使うんだから。
厳密に言うと【魔素】と【魔力】は別物だよ。  

わかりやすく言うと【魔素】は血中の酸素?外から取り入れて体内を巡っているモノかな。
その【魔素】をエネルギーとしたのが【魔力】…で通じるかな? 〉

〈何となく言いたい事はわかりました 〉

本当に感覚的になので、これを他の人に説明などはできませんけど、細かく言うと別物なのだと言うのがわかりました…よ?


〈体内の不調の殆どが、魔素が滞ったり濁ったりして起こるのだから、外から綺麗な魔素を入れたり、強制的に魔素を動かすことで治るんだよ。  

外傷も、体内の魔素を活性化させる事で、新陳代謝を促して治すんだ。
でも皆んな理屈は知らずにやってるけどね 〉

回復魔法とはそんな仕組みなんですね。
そして魔素も体内の血液みたいな役割なんですね。
でも皆さん知らないのですか?
知らずに出来るのですか?

〈本能でやってるよね。
だって魔素や魔力や魔法を研究している人なんて、この世界には居ないもん。 

薬草なんかだと目に見えるから、薬関係は結構研究開発されてきたけど、目に見えない物はなかなかね。

大体生きることでいっぱいいっぱいになってて、色んな物が大雑把な世界なんだもん、ジョニーの居た世界まで発展するまでこの星の寿命があるかどうか…って感じだよね 〉

そこまでなんですか……、話が逸れましたね。

〈では私も知らずに、体内の魔素を使って回復魔法をかけていたのですね 〉

〈そうだよ。
ジョニーは魔力多いから、バンバン使う方が良いよ。
あのドラゴン…王様トカゲも使うといいよ。 

取り入れちゃった魔素を循環させて、意識して外に出すと、魔化する事もないんじゃないかな 〉

〈わかりました、言ってみます。
ありがとう、ティちゃん 〉

〈どういたしまして、お安い御用だよ 〉

さすが神様…では無いですね、案内人?の方達のくださった機能、良い仕事をしてくれます。
さて、ブルースにこの事を告げなければいけませんね。



「は?我が回復魔法?
そんなもの使えぬぞ」
案の定『何言ってんだコイツ』みたいな反応をされてしまいました。

私は事細かく説明して、納得したブルースに、イメージの浮かべ方を教えます。

「…………わからぬ」
「えええ……ブルース魔法得意で使えるじゃないですか。
例えば風魔法で魔獣を倒す時何を考えているのですか?」
「うぬ、『消し飛べ!』だな」
「ブレスを吐くときは?」
「『薙ぎ払え!』だな」
「結界魔法……」
「『近寄るでない!』」
「……………………」

なんでそんなに得意満面な顔をしているのかわかりません。
こう言うのって確か『ドヤ顔』とか言うんでしたっけ?
言葉はどんどん変わっていきますよね。
新人さんとかとのコミュニケーションで、言葉のジェネレーションギャップを感じていましたよ。
なぜズボンや寝巻きや背広ではいけないのかわかりませんでしたけど。


………逃避していてはいけませんね。
なんでそんなに大雑把なのでしょう。
ここは一つ……。

「「「!!!!!!!!!!」」」
私はナイフで自分の掌を縦に斬りました。
「結構痛いです」
掌から流れ落ちる血が、テーブルの上に収まり切らず、床まで汚します。

「な…何やってんだよあんた!!」
「父ちゃん…え?……なに?……なんで?」
怒鳴りながら自分の服で私の傷を押さえるチャックと、パニックになっているシナトラ。
肝心のブルースは、呆然と私をみて固まっています。

「この傷を治して下さい。
傷が塞がった後を思い浮かべて。
血が止まり、傷口がくっつき、傷跡が綺麗に消える。
頭の中に思い浮かべながら、魔素を私の掌に注いでください。
呪文は……『塞げ』でも、『治れ』でも大丈夫だと思いますよ」

チャックに放してもらい、掌をブルースに差し出すと、ようやく動き出したブルースが、両手で私の手に触れない様に囲み込みました。
ほんのり温かなナニかがブルースから流れ込んできます。

「……………【塞がれ】」

呪文と同時に、温かなナニかがぐっと押し寄せて来る感じがしました。
これが魔素ですね。
傷はみるみる塞がって、やがて跡形もなく消えてしまいました。

「大成功、ですね」
私の言葉にチャックとシナトラがふっと息を吐きました。
ブルースは、自分の両手を見て
「我に回復魔法が使えるのか…、この歳になって新たな魔法が使えるとは…」
などと独り言を呟いていたと思ったら、いきなり顔を上げてこちらを睨んできました。

「いくら魔法を使わせるためと言えども。こんな事は二度とするではない!」
「もうしませんよ、痛いですから」

手を洗って来ますねと、私は部屋を出て、手洗い場へ向かいます。
手を洗い、乾燥で手を乾かした後、周囲に誰もいないのを確認して、魔法を一つ。

「痛いの痛いの、飛んでいけ」

いや、痛いんですよ、本当に。
傷は塞がりましたけど、塞がっただけで、痛みはそのまま。
あの場では我慢しましたけど、傷を塞ぐだけでは痛みは取れないんですね。

小さな切り傷などではあまり感じないかもしれませんけど、大きな傷は塞ぐだけではダメですね。
一つ学びましたわ。
これから傷を治す時は痛みも治るようにイメージしましょう。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...