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第二章 旅は道連れ
65 小さな国
しおりを挟む《そういえば念話が使えるんですね》
《今更何言っとんの?》
呆れ声で答えるのは、あの後名前を教えてくれた、ポニーです。
象のポニー……気にしたら負けですね。
因みにブルース達を乗せてくれているのが、ドドです。
ポニーはベージュ色、ドドは赤茶色の体をしています。
普通の灰色の象と違って、ゾウケシやゾウオニバスは魔力を持っているので、体の色が違うそうです。
《念話が使えんやったら、どうやって交渉するん?
決定権はこっちにあるんやから、報酬とかキッチリ決めんとアカンやん》
彼らは結構ビジネスライクのようです。
報酬は美味しい魔素と美味しい食事、身の安全の三つ。
美味し魔素は私とブルースとアインの3人がお眼鏡にかなった様で、乗せている間に魔素を補給するそうです。
美味しい食事は、基本木の実を食べるそうなのですけど、熱を通した木の実が好物なのだそうです。
味付けはせず、茹でたり焼いたりするだけで良いそうなんですけど、象に火を使って煮たり焼いたりは無理なので、人間と交渉する時には、これが第一条件なのだとか。
最後の身の安全は……象でも敵わない大型の肉食獣や魔獣が近付いても、それ以上に肉食なブルースがいる限り、襲ってきた相手が、こちらの獲物になるのですから、なんの問題もありません。
条件以上に大切なのが、相手の人となりなのだそうです。
念話って頭の中で喋っている様な物ですから、基本嘘がつけないのです。
思考を伝達するのですから、余程の嘘つきで無い限り、本性ダダ漏れなのだとか。
なので、会話をして『コイツなら』と思えた相手と、条件を提示して契約をするようです。
こうして最高の移動手段であるポニーと交渉できたのはひとえに念話を覚えていたからですね。
勧めてくれたティちゃんに感謝ですね。
ポニー達はとても足が早く、あっという間に森を抜け、世界で一番小さな国、【ユユグル国】辿り着きました。
本当に小さな国です。
国と呼んで良いのかわからない規模で、お城のある城下町と、中位の位の人が治める土地のみの、小さな国なのだそうです。
「小さい国なのにとても栄えているのですね」
道ゆく人々は様々な人種の商人です。
道沿いには各種取り揃えた商店と、食堂や酒場、宿屋に騎獣(馬や象などの人が乗る動物をそう呼ぶと教えてもらいました)の預所(あずかりどころ)、荷物預所などなど。
「ここはすべての住民が何かしらの商売をしている国ですよ。
この国はこの土地で二つしかない遊牧民族との取り引きをしている国の一つなのです」
カカルの民と交易を交わしている国の一つで、元々は今は亡き国の辺境を治める上位の家系が治める領地だそうです。
以前カカルの族長の娘が嫁入りした事で、どの交易国より優先的に良い品が集まる様になったとか。
ある時交易の権利を奪おうと、侵略され国は滅び、この地にも攻め入られたけれど、カカルの民の協力もあり、侵略を撃退したと。
『これ以上この地を攻めるのなら、すべての取引を中止する』
とのカカルの民の宣言で、他国の侵略を受けることがなくなったこの地は、なんだかんだと政治的な事が有って、独立して今に至ると。
独立してから国を興すための資金を稼げと、カカルの民が一層卸す品を増やしたので、こりゃ国を上げて品を回さないとダメじゃん、と。
まずは商業ギルド作って管理してもらわないといけないんじゃね?
品を回すだけではダメじゃん、人が集まれば泊まるとこもいるんじゃない?
人は物を食うし、乗ってきた騎獣も放置しておけないよ、それにたくさん買ってくれてもまだ買うために、荷物預かった方が良くない?
イザコザが起きた時のために、自警団もいるくない?
人が集まれば魔獣も寄ってくるし、冒険者も来てくれないと困るよね?
なら冒険者ギルドもいるし、怪我した時のために薬師ギルドもいるじゃん。
ここまでくれば生産ギルドも作っちゃえ!
ほら、武器のメンテナンスとかも必要だっしょ?
こりゃ国民皆で働かなきゃやってけるわけないじゃん!
………という感じで、気づけば一般市民のいない、国民全員交易の一端を担う仕事をしているという、珍しい国だそうです。
魔物肉以外の食料はすべて輸入だし、学校を建てるスペースもないので、子供は隣国で学ばなければならないし、国民以外の従業員は全て通いなのだそうです。
他国との交流はするし、商人や冒険者が宿に泊まったり、食堂を利用するのは大歓迎。
働き手も大いに歓迎するけど、住民は増やさない。
そうする事で、国外から来た人がお金を落とし、国の懐が潤い、国民に還元されるので、国民も頑張って働くと。
日本でも似たような考えの地方自治体が有ったよね。
そしてこの国の何よりの商品は、情報なのだそうです。
あまり闇の部分には関わり合いたくないので、私にはどの土地の野菜が美味しいとか、風光明媚な国を教えてもらうくらいしか関係ないですよね。
兎にも角にも、この世界では一風変わった国なのだそうです。
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