【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

64 ダメ人間になりそうです

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《すみません、今よろしいでしょうか?》

警戒させないためにも、交渉する私一人でゾウケシさんに近付きました。

《なに?アンタ誰?》

《私はジョニーと申します。
あちらにいる家族と旅をしております。
そこで私達を乗せてくださる方を探してここへと来たのですけど、できましたら私をあなたの背に乗せていただけないでしょうか?》

私が話しかけている間に、ブルースはさっさと交渉をまとめてしまったようです。
長い鼻で握手?をしていた象が、こちらへ近寄ってきます。

《おい、お前も誘われてんのか?》

《そうやよ》

《俺はアイツら乗せてやるぜ。
なんてったってあの少し大きい奴、王様トカゲなんだってよ。
王様トカゲを乗せたゾウなんて、箔が付くじゃん?
その上もう片っぽは魔王なんだってさ。
二つ返事でOKよ》

《へー、凄いやん、王様トカゲやて》
 

強い種族を乗せるのはある種のステイタスなんでしょうか。
心なしか自慢げな顔をしています。
いえ、表情はわからないんですけど、そんな雰囲気です。

いえ、それより交渉内容は秘密とか言っていませんでしたか………?

交渉するこちら側が秘密なだけで有って、象達の間では秘密にする必要が無いのですかね?
交渉の手法を広げないため?それともマニュアル化させないためとかなのでしょうか?
頭の中でクエスチョンマークが回っている私に、ゾウケシ話しかけてきました。


《アンタも王様トカゲ?》

《いえ、私は人族です》

《アンタが乗りたいんやよね?
見えへんけど、アンタメスなん?》

《いえ、男…オスですよ》

《話し方もなよっとしとるし、綺麗な花を咲かしている俺に乗りたがるのは、どんな種族でもメスが多いのに、変わった奴やね》
 

そうでしょうね、花の中にまるで親指姫のように座りたがる成人男性なんていないでしょう。
例え派手好きでも、周りに飾るのならまだしも、花の中はちょっと遠慮したいと思いますよ。
 

《私、先日初めて馬に乗ったのですけど、とても辛くて、移動するのに馬に乗りたく無いのです。
その私に気を遣って、家族が乗り心地の良い方をと、あなた方を探してくれたのです》

多分口にしなくても、私のために馬以外の移動方法を考えてくれたのに間違いありません。
まあ、歩くのに飽きたと言うのも本当でしょうけど。


《そやね、馬より俺らの方が乗り心地のサイコーやよ。
ようわかっとるやん》

《俺らって風格からして違うよな》

二匹とも嬉しそうです。


《それに、ゾウケシさんの乗り心地はとても良いと薦められたのです》

《おっ、ようわかっとるやん!
俺の乗り心地の良さは象の中でも一番なんやよ》

ちょいと乗ってみいなや、と膝を折って、踏み台がわりに鼻を差し出してくれました。
踏んで良いのか躊躇しましたけど、遠慮するなの言葉に、鼻を足がかりに乗ってみました。

なんてことでしょう!!

中心の雄蕊や雌蕊はふぅんわふわのサラサラなクッションになっていて、これは絶対に振動を吸収しますよね!
花弁にそっと背を預けると、ジャストな角度で優しく包み込んでくれます。
勿論極上な手触りですし、ふんわりとリラックスする香りも漂っています。
アレですね、人をダメにするクッション、アレの花バージョン。
人をダメにする花………いや、この言い方は不味いですね、ひなげしですし。


《どう?》

《はい、もう凄いとしか言いようがありませんね。
こんなにも心地の良い場所は他には有りませんよ。
天にも登る心地です》

《ははは、そうやろ?
俺の花は凄いやろ。
本当はメスしか載せたく無いんやけど、アンタなら載せてやっても良いいよ》

《是非お願いします》

うっとりと言う私を、ゾウケシはブルース達の元まで乗せて歩いてくれました。

ああ、本当にダメです、これ魔性の乗り物です。
実際に歩いても、本当に振動は一切伝わってきません。
全てを花が受け止めて、体に伝わるのは心地よい揺れだけ。
まるでゆりかごの中です。
このまま眠りたいですね、きっと良い夢が見れますよ。
うん、そうしましょう、おやすみなさい。


速攻で起こされました。





ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー


★★ちょっと補足
ジョニーがティちゃんと話す時〈 〉+語尾一文字空白
その他の人との念話《 》
となっているのはわざとです。
間違えではありません。
どうでもいいこだわりですみません。





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