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第二章 旅は道連れ

62 乳製品の仕入れルート確保です

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族長に礼を言い、先に進みます。

結界の境目には、数カ所見張りと交渉の場を兼ね備えた建物が建っているそうでして、そこに一泊する許可をいただきました。

見張りと言っても、常駐している人がいるわけではなく、その建物のある場所からしか、結界を行き来できないのだとか。
明日の朝にはそこから結界を越えて、東の大陸を進みます。

結界を越える為に、ホル兄弟も一緒に一泊です。
お二人には本当にお世話になっていますね。
特にホルさんは、出会ってからずっと一緒にいてくださっていて、ありがたいです。

「結界があるとは知らなかったな。
上空を飛んで通り過ぎた事しかないから。
知らずに通って結界を壊してしまうところだった」
「普通の人族や亜人の方でしたら、結界も壊れる事はないですけど、魔王様と王様トカゲの方ですから、通られただけで壊れるとこでした」

あの二人なら通るだけで結界が壊れるのですね。

ここまでの移動は、荷車に乗せられて来ました。
馬に乗りたくないと駄々をこねてしまった私に、族長が荷台を貸してくれたのです。

結果は予想つくでしょう。
馬でも激しく揺れるのに、木で作られた簡単な造りの、車輪も木の荷車が揺れないわけがない。
いや、一層揺れた。
止めてくれと叫ぼうにも、舌を噛みそうで声を出すこともできず、荷台で振り落とされないようにふちに捕まり、跳ねる私はポップコーンの様でした…。

「父ちゃん大丈夫?」
大丈夫なワケ無いじゃん?
捕まっていた腕はパンパンだし、ケツを庇おうと正座していたせいで、肘や脛をあちこちぶつけで痛いし、シェイクされて胃がひっくり返りそうだし、馬以上に最悪だよ!

「回復魔法かけたら?」
回復?
どこをどうすれば良いかイメージなんてできるかよ!
筋肉痛、打身、気分の悪さ………あ、イメージできるか。

「温泉」

少し熱めのお湯に浸かってリラックス。
は~ビバノンノ。
血行をよくして筋肉を解し、打身や捻挫にも効くし、リラックスして気分の悪いのも飛んでいく……そんな温泉をイメージして、目を瞑り暫く待つ………うん、良くなりました。

「ふー、落ち着きました。
チャック、ありがとう。
シナトラも心配してくれてありがとうね」
「別に、オレ何もしてないし」
「大丈夫になって良かったね」
二人とも良い子です。


さて、一泊お借りしたのは、レンガと漆喰で作られた二階建て?の建物です。
一階は交渉室と台所と小部屋が二つ、二階は寝泊まりできる小さな部屋が六つ(駅前ビジネスホテルのシングルという感じですね)。
そして屋上には見張り台のスペースが有ります。

見張り台は、部外者以外立ち入り禁止だそうです。
「きっと結界に関する何かがあるのだろうから、追求してはいけませんよ」
とはアインの言葉です。
上に行きたいと言っていたシナトラも、アインの言葉は素直に聞き入れます。

この建物のシルエットは、遠目に見ると、ミカンの代わりに金柑を乗せた鏡もちの様ですね。
ちょっと今まで見た建物とは違う感じの建物です。

日が暮れるまでにはまだ少し有りますけど、夕食の準備でもしましょうか。

お米を準備して、魚を入れ鯛めし風の炊き込みご飯、大量にあるし一番作り慣れているキノコのスープ、
酒の肴には色々な干物とヤギのチーズ、ドライフルーツ、魔物肉のステーキ………食い合わせ?知りません。
もしお腹が痛くなったら、セーロ○をイメージする回復魔法でどうにかなるでしょう。

ホルご兄弟に他の一族の話を聞いたり、子供の頃イタズラをしてババ様からとんでもない罰を受けた話しを聞いたり、私達の(話せる範囲での)話をしたり、とても楽しく過ごしました。

これからも彼等とは長い付き合いになるのですから、今はまだ話せないことも、そのうち話せるようになると良いですね。

なぜ長い付き合いか、ですか?
実は彼等一族と契約を結んだのですよ。
織物や乳製品を仕入れさせていただく、と言う契約を。

バターやチーズなどは私達も食べますし、これからいく先々で、需要に応じて必要な物を分けてもらい、少しのマージンをいただき、別の相手に売る。
売り上げで彼等に必要な物を購入し、こちらから送る。

私達のメリットは、少しばかりのマージンと、行商人としての商品確保。
彼等のメリットは、必要な物を地元に居て手に入れられる事と、交渉をしなくて済む事(交渉は気を使うし時間もかかりますしね)、卸先が有るのなら、家畜を増やしても色々無駄にならずに済む事。
そして何より私個人のメリットが大きいのですよ。

そう、全て転送魔法の熟練度を上げる為、なんですよね。
ホルさんの三男さんが念話を使えるので、連絡役として中継ぎしてくれるのも大きいです。

カカルの民では、部族ごとに一人念話の使える人が居るそうです。
年齢、性別に関係なく、一人だけ。
その方が亡くなったら、また新たに念話の使える人が生まれるそうです。
不思議ですね。

カカルの民は放牧した家畜を念話で集める事はないそうで(他の部族の家畜まで集まってしまうから)部族間の連絡や、迷子の家畜を呼び寄せるくらいしか、念和の使い道がないそうなのです。

だからと言って、有事に連絡手段がないと、一族の存亡に関わることもあるから、念話の使える人は、テントからほとんど出してもらえないそうなのです。
ちょっとした軟禁状態なんですよね。

だから、【一族の中で自分にしか仕事】を与えた私に、親として感謝しているのですって。

受け渡しする転送魔法のイメージは、アレですね、監獄とかの食事を受け渡しする小窓(別に三男さんの状態から連想したわけじゃないですよ)。
こちらからしか開けられず、空の食器を回収するのもこちらから……ですよね?
あれ?違う?
まあ、私のイメージではそう言う感じで、向こう側で決まった場所に置いてくださっている物を、私がこちらから回収する、です。

作りたてのバター……食パンが欲しいですね。
新鮮なチーズ……ピザが食べたいですね。
ハンバーグにインするのも良いです。
薄くスライスしてフライパンで焼くのも良い。
チーズフォンデュならブルースやシナトラも、美味しく野菜を食べられるのでは?
…………えーと、チーズって他に何に使いましたっけ?
あ、クラッカーにハムとかと一緒に載せてるのも食べた事あります。
後はフライパンで焼いてカリカリにしたものを、妻が作ってくれた事がありましたね。
後は………

……料理の得意な方なら、きっと使い道はたくさんなのでしょうね。







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