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第二章 旅は道連れ
57 離れ難いです
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「それで、この国の王が亡くなる気配を感じたこの土地が、【俺】を生み出したって感じかな。
前の王は分身を作らなかったし、最近は魔力豊富な魔族も減ってきたみたいだからね」
成る程、そう言った理由で【純粋な】魔族のコニーがこの地に生まれたのですね。
この国を護るには力の有る王様が必要でしょうから。
「でも何で前のオーサマは分身残さなかったの?」
……シナトラ。
聞きたかったけど聞いてはいけないのだろうと、聞かなかったのに、さすが空気を読まない子供ですね。
「……彼は一途でしたから」
察しました。
分裂する為に真名を貰う相手が、先に亡くなりでもしたのでしょう。
その相手が惚れた相手だったとしたら……無理ですよね。
心底惚れた相手以外、受け入れ難いのは分かります。
私だって妻以外を後添えにと言われた事も有りましたけど、絶対に無理でしたから。
さすがのシナトラにも通じたようで、それ以上の追求はありませんでした。
「で、これからあんたらの行く東の国だけど、和平を結んでから今でも交流はあるし、お互いの国の住民が移住したりしているから、安全っちゃあ安全なんだけど、厄介な奴らも居るから気をつけてね」
「厄介な方々ですか?」
「そうですね、この国以外の国では、自分たちにランク付けして、上位ランクの者が下の者を粗雑に扱ったり、搾取したりしていますから、厄介ごとが多いのです」
ランク付けですか……昔の貴族階級みたいなものですかねえ。
「獣人の様に力で示す訳でもなく、ましてや個人の能力でも無く、血筋だからと下らん奴らがのさばって居る、暮らすには向かない国が多いな。
故に我はこの国から出たくなかったのだ」
やはり貴族階級の様ですね。
しかも映画とかでよくある【悪徳貴族】とかですね。
関わり合いたくないです。
「悪い点ばかりではないですから、色々見て回り、良いところは取り入れて、悪いところは反面教師にすればいいのです」
アインの言う通りですね。
見もしない、知りもしないうちから先入観で否定するものではありませんから、沢山の場所を見て回らないとですね。
「とりあえず、王様トカゲの姿は見せない方が良いから、ブルースさんは気をつけてね」
「我の体は全てに価値があるからな」
大概の敵は返り討ちできるのでしょうけど、数でこられると危ないかもしれませんからね。
名残惜しいですけど、出発の時間となりました。
これから山越えなのですけど、ここはブルースの背中に乗って飛び越えることになりました。
国内では王様トカゲが居ても、他所より問題はまだ少ないそうです。
山を越えた後は、中程で降りて姿を変えれば見つかることもないだろうということです。
「国内では王様トカゲに手を出す奴は少ない。
特に魔族は魔法を使う故、武器や防具になる我の素材には興味が少ないぞ。
魔樹の方がよっぽど役に立つと言われたこともあるからな」
王様トカゲの素材だからと言って、誰もが欲しがると言う訳ではないのですね。
ブルースに問題がないのなら、山越えをお願いできるのは助かりますね。
しかし……
「あまり元の姿に戻るのは良くないのではなかったですか?」
以前アインがその様なことを言っていた気がするのですけど。
「そうですね、長時間……数日間元の姿のままでしたり、千回や二千回と頻繁に戻るのは良くないです。
けど、ほんの数時間や、百回や二百回戻ったくらいでは差し障りはありません」
私の想像と桁が違いました。
「勿論魔力の多い事と、王様トカゲだからと言う理由もありますけどね」
「戻ると良くないって、どうなるの?」
シナトラが尋ねましたけど、私も気になります。
するとアインはチラリとブルースを見て、コニーにも視線を流した後、こちらを見るとニッコリと笑いました。
「知りたいですか?」
こ、怖いです!
聞いたシナトラと私、チャックまでも、プルプルと首を横に振りました。
とりあえずとんでもないことになりそうだと、それだけ知っておけばいいでしょう。
「要らないこと聞かないでよね」
と、チャックがシナトラに腹パンしています。
でも、首を振っていたと言う事は、チャックも少しは興味があったのではないのでしょうかね。
元の姿に戻ったブルースの背中に乗り、さあ出発です。
「ねえ……下ろしてくんない?」
!! なんと言う事でしょう!
無意識のうちにコニーを抱っこしていました!
「すみません、体が勝手に動いてしまった様です」
素直にコニーを下ろす私の後ろで
「本当に無意識だったの?」
「ツッコミ待ちかと思った」
などと聞こえてきますけど、本当に無意識でしたからね。
「じゃあまたね」
「気をつけてね」
コニーと東の魔王(本体に名前はないそうです)2人並んでの見送りに、後ろ髪が引かれますが、二度と会えない訳ではありません。
転移も覚えますし、妻と再開したら一緒に暮らせるのですから、ここは涙を呑んで一時のお別れです。
ああ…妻と再開したい理由がまた増えましたね。
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
わかり辛いので補足を
東の魔王唐始まったヨルゼルの国、人族の国、獣人族の国など、東の山脈から西の大森林までを全部まとめて【国】と呼んでいます。
東から分かれているので。
東の山脈の東、北の獣人族の国のさらに北、ヨルゼルの治める更に西などを、【隣の国(東の国)】などとざっくりまとめて呼んでいます。
五つの国を併せて【ロスフォータ】と言います。
自分達と関わりの無い、または薄い国はよその国です。
東の魔王の国や、獣人族の国と呼んでいますけど、正確に言うと【東の魔王の治める領地】となりますけど、この世界では【国】となります。
おかしいとか変だと思われるでしょうけど、これがこの世界の呼び方だとご了承下さい。
前の王は分身を作らなかったし、最近は魔力豊富な魔族も減ってきたみたいだからね」
成る程、そう言った理由で【純粋な】魔族のコニーがこの地に生まれたのですね。
この国を護るには力の有る王様が必要でしょうから。
「でも何で前のオーサマは分身残さなかったの?」
……シナトラ。
聞きたかったけど聞いてはいけないのだろうと、聞かなかったのに、さすが空気を読まない子供ですね。
「……彼は一途でしたから」
察しました。
分裂する為に真名を貰う相手が、先に亡くなりでもしたのでしょう。
その相手が惚れた相手だったとしたら……無理ですよね。
心底惚れた相手以外、受け入れ難いのは分かります。
私だって妻以外を後添えにと言われた事も有りましたけど、絶対に無理でしたから。
さすがのシナトラにも通じたようで、それ以上の追求はありませんでした。
「で、これからあんたらの行く東の国だけど、和平を結んでから今でも交流はあるし、お互いの国の住民が移住したりしているから、安全っちゃあ安全なんだけど、厄介な奴らも居るから気をつけてね」
「厄介な方々ですか?」
「そうですね、この国以外の国では、自分たちにランク付けして、上位ランクの者が下の者を粗雑に扱ったり、搾取したりしていますから、厄介ごとが多いのです」
ランク付けですか……昔の貴族階級みたいなものですかねえ。
「獣人の様に力で示す訳でもなく、ましてや個人の能力でも無く、血筋だからと下らん奴らがのさばって居る、暮らすには向かない国が多いな。
故に我はこの国から出たくなかったのだ」
やはり貴族階級の様ですね。
しかも映画とかでよくある【悪徳貴族】とかですね。
関わり合いたくないです。
「悪い点ばかりではないですから、色々見て回り、良いところは取り入れて、悪いところは反面教師にすればいいのです」
アインの言う通りですね。
見もしない、知りもしないうちから先入観で否定するものではありませんから、沢山の場所を見て回らないとですね。
「とりあえず、王様トカゲの姿は見せない方が良いから、ブルースさんは気をつけてね」
「我の体は全てに価値があるからな」
大概の敵は返り討ちできるのでしょうけど、数でこられると危ないかもしれませんからね。
名残惜しいですけど、出発の時間となりました。
これから山越えなのですけど、ここはブルースの背中に乗って飛び越えることになりました。
国内では王様トカゲが居ても、他所より問題はまだ少ないそうです。
山を越えた後は、中程で降りて姿を変えれば見つかることもないだろうということです。
「国内では王様トカゲに手を出す奴は少ない。
特に魔族は魔法を使う故、武器や防具になる我の素材には興味が少ないぞ。
魔樹の方がよっぽど役に立つと言われたこともあるからな」
王様トカゲの素材だからと言って、誰もが欲しがると言う訳ではないのですね。
ブルースに問題がないのなら、山越えをお願いできるのは助かりますね。
しかし……
「あまり元の姿に戻るのは良くないのではなかったですか?」
以前アインがその様なことを言っていた気がするのですけど。
「そうですね、長時間……数日間元の姿のままでしたり、千回や二千回と頻繁に戻るのは良くないです。
けど、ほんの数時間や、百回や二百回戻ったくらいでは差し障りはありません」
私の想像と桁が違いました。
「勿論魔力の多い事と、王様トカゲだからと言う理由もありますけどね」
「戻ると良くないって、どうなるの?」
シナトラが尋ねましたけど、私も気になります。
するとアインはチラリとブルースを見て、コニーにも視線を流した後、こちらを見るとニッコリと笑いました。
「知りたいですか?」
こ、怖いです!
聞いたシナトラと私、チャックまでも、プルプルと首を横に振りました。
とりあえずとんでもないことになりそうだと、それだけ知っておけばいいでしょう。
「要らないこと聞かないでよね」
と、チャックがシナトラに腹パンしています。
でも、首を振っていたと言う事は、チャックも少しは興味があったのではないのでしょうかね。
元の姿に戻ったブルースの背中に乗り、さあ出発です。
「ねえ……下ろしてくんない?」
!! なんと言う事でしょう!
無意識のうちにコニーを抱っこしていました!
「すみません、体が勝手に動いてしまった様です」
素直にコニーを下ろす私の後ろで
「本当に無意識だったの?」
「ツッコミ待ちかと思った」
などと聞こえてきますけど、本当に無意識でしたからね。
「じゃあまたね」
「気をつけてね」
コニーと東の魔王(本体に名前はないそうです)2人並んでの見送りに、後ろ髪が引かれますが、二度と会えない訳ではありません。
転移も覚えますし、妻と再開したら一緒に暮らせるのですから、ここは涙を呑んで一時のお別れです。
ああ…妻と再開したい理由がまた増えましたね。
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
わかり辛いので補足を
東の魔王唐始まったヨルゼルの国、人族の国、獣人族の国など、東の山脈から西の大森林までを全部まとめて【国】と呼んでいます。
東から分かれているので。
東の山脈の東、北の獣人族の国のさらに北、ヨルゼルの治める更に西などを、【隣の国(東の国)】などとざっくりまとめて呼んでいます。
五つの国を併せて【ロスフォータ】と言います。
自分達と関わりの無い、または薄い国はよその国です。
東の魔王の国や、獣人族の国と呼んでいますけど、正確に言うと【東の魔王の治める領地】となりますけど、この世界では【国】となります。
おかしいとか変だと思われるでしょうけど、これがこの世界の呼び方だとご了承下さい。
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