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第二章 旅は道連れ
56 東の山から国々は始まったそうです
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『ブルースさん、ブルースさん、聞こえていますか?どうぞ」
『聞こえておる』
『この【念話】の有効範囲はどれくらいなのですか?どうぞ』
『大陸の中なら伝わる筈だぞ』
『ブルースは私達3人に一度に話しかけていましたけれど、今はブルースにしか聞こえていないのですか?どうぞ』
『お前が【俺】に話しかけているからな。
ここにいる皆に話しかけると他の奴らにも伝わるぞ』
『そうなのですか?どうぞ』
『…………その語尾はなんだ?』
あ、昔トランシーバーで遊んでいた時の感覚でしたから、ついつい…。
『気にしないでください。
では皆に話しかけてみますね』
私は部屋の中を見回して、頭の中で皆に向かって話しかけます。
『聞こえていますか?』
『ええ、ちゃんと聞こえますよ』
『へえ、早速スキルを使いこなせているようだね。
これなら転移も覚えるの早いんじゃないの?』
アインとコニーが【念話】で返してきます。
アインも【念話】を使えたのですね。
「うわっ!父ちゃんの声が頭の中にしたよ、ブルースのおっちゃんみたいだね」
「…普通さ、こんなにも次々とスキルや魔法、覚えないんだからね」
凄い凄いと言ってくれるシナトラと、規格外だとため息をつくチャック、そしてその肩に止まったリンも、首を傾げながら、私に向かって「チュン」と鳴きます。
「リンも返事をしたのでしょうか?」
つい口に出してしまった呟きに、アインが答えをくれます。
「動物にも言葉を伝える事はできます。
難しい言葉は無理でも、簡単な言葉なら、ほぼ確実に伝わりますよ。
例えば『その先に行くな』とか、『小屋に戻れ』などね。
短い指示を【念話】で飛ばして放牧をする牧場主や畜産家は多いですよ」
「逆に家畜を育てるのを楽にするために覚えるの奴も居るからね。
そうすれば、自分は家の中に居ながら、家畜を集められるからね」
【念話】の新たな使い方を、アインとコニーが教えてくれました。
妻と家族と小さな畑をやりながら、牛を飼うのも良いですね。
搾りたてミルクや、出来立てチーズ、アイスキャンディーやキャラメルなど甘い物も妻は好きでしたから。
牛が遠くまで草を食べに行っても、念話で戻る事を促せば良いのなら、かなり楽だと思われます。
夢が膨らみますねえ。
「【念話】で話しかけて来るのは良いけど、こっちも仕事があるんだから、しょっちゅう話しかけて来るのは辞めてよ。
用事がない、近情報告や雑談は……うん、5日に一回10分まで迄だね」
「えー、少なくないですか?」
「だってジョニーさん、制限なく話しかけてきそうだし」
視界の隅でブルース達が頷いています。
「なんなら10日に……」
「5日に一度でいいです。
でも用事のある時は声をかけてもいいですよね?」
「それなら仕方ないかな」
コニーが許可してくれているのに、ひそひそと「大した用事でなくても話しかけると思うぞ」とか「珍しい花が咲いてるとかでも話しかけそうだね」「それを見越して5日に一度と言っているのだと思いますよ」など話しているのは聞こえなかった方向で。
お茶をいただきながら、コニーが話してくれるこの国の成り立ちを聞きました。
元は別の大陸で国を治めていた魔王が、分裂した事で新たな土地を求めて、腹心の部下を連れて、この大陸へと渡ってきたそうです。
この大陸はまだ若く(若い大陸と言うのがわかりませんが)住んでいる住民も少なかったので、彼は高い山から見下ろした一帯を縄張りとすることにしました。
強い魔族の元、集まった色々な種族を保護しているうちに国になっていたそうです(え?国ってそんなにふんわりできる物なのですか?)
年月が流れ、大陸に住む住人も増え、沢山の国家も興されていき、次第に領地を奪い合う戦いも起こるようになりました。
東からは契約により侵略者は来ませんが、西や北からの侵略は止まりません。
そこで魔王は力押しでくる北の侵略者に対して、獣人の中で力と統率力のあるオオヤマイヌの亜人(どうやら狼のことのようです)を頭に、北の地を獣人達に任せました。
珍しい武器や魔法を使って新略して来る西の対処に、腹心の中でも自分の右腕と言われる魔族の一人に西の地を任せる事にしました。
(それがヨルゼルの前の魔王だそうです)
対抗する術のない弱い人属は平原に集められ、やがてその場所を人族の国として、平原の王国を築きましたけど、それはつい最近のことです。(つい最近と言っても二百年は経っているそうです)
強力な戦力を持つこの地は侵略不可能だと気づいた周辺の国は、和平を申し込んできます。
好んで戦っていたわけではないですし、自分の土地以外に興味のない魔王はそれを受け入れました。
そうして数百年の時が流れ、魔王や獣人の王も数度代替わりをして今に至るそうです。
『聞こえておる』
『この【念話】の有効範囲はどれくらいなのですか?どうぞ』
『大陸の中なら伝わる筈だぞ』
『ブルースは私達3人に一度に話しかけていましたけれど、今はブルースにしか聞こえていないのですか?どうぞ』
『お前が【俺】に話しかけているからな。
ここにいる皆に話しかけると他の奴らにも伝わるぞ』
『そうなのですか?どうぞ』
『…………その語尾はなんだ?』
あ、昔トランシーバーで遊んでいた時の感覚でしたから、ついつい…。
『気にしないでください。
では皆に話しかけてみますね』
私は部屋の中を見回して、頭の中で皆に向かって話しかけます。
『聞こえていますか?』
『ええ、ちゃんと聞こえますよ』
『へえ、早速スキルを使いこなせているようだね。
これなら転移も覚えるの早いんじゃないの?』
アインとコニーが【念話】で返してきます。
アインも【念話】を使えたのですね。
「うわっ!父ちゃんの声が頭の中にしたよ、ブルースのおっちゃんみたいだね」
「…普通さ、こんなにも次々とスキルや魔法、覚えないんだからね」
凄い凄いと言ってくれるシナトラと、規格外だとため息をつくチャック、そしてその肩に止まったリンも、首を傾げながら、私に向かって「チュン」と鳴きます。
「リンも返事をしたのでしょうか?」
つい口に出してしまった呟きに、アインが答えをくれます。
「動物にも言葉を伝える事はできます。
難しい言葉は無理でも、簡単な言葉なら、ほぼ確実に伝わりますよ。
例えば『その先に行くな』とか、『小屋に戻れ』などね。
短い指示を【念話】で飛ばして放牧をする牧場主や畜産家は多いですよ」
「逆に家畜を育てるのを楽にするために覚えるの奴も居るからね。
そうすれば、自分は家の中に居ながら、家畜を集められるからね」
【念話】の新たな使い方を、アインとコニーが教えてくれました。
妻と家族と小さな畑をやりながら、牛を飼うのも良いですね。
搾りたてミルクや、出来立てチーズ、アイスキャンディーやキャラメルなど甘い物も妻は好きでしたから。
牛が遠くまで草を食べに行っても、念話で戻る事を促せば良いのなら、かなり楽だと思われます。
夢が膨らみますねえ。
「【念話】で話しかけて来るのは良いけど、こっちも仕事があるんだから、しょっちゅう話しかけて来るのは辞めてよ。
用事がない、近情報告や雑談は……うん、5日に一回10分まで迄だね」
「えー、少なくないですか?」
「だってジョニーさん、制限なく話しかけてきそうだし」
視界の隅でブルース達が頷いています。
「なんなら10日に……」
「5日に一度でいいです。
でも用事のある時は声をかけてもいいですよね?」
「それなら仕方ないかな」
コニーが許可してくれているのに、ひそひそと「大した用事でなくても話しかけると思うぞ」とか「珍しい花が咲いてるとかでも話しかけそうだね」「それを見越して5日に一度と言っているのだと思いますよ」など話しているのは聞こえなかった方向で。
お茶をいただきながら、コニーが話してくれるこの国の成り立ちを聞きました。
元は別の大陸で国を治めていた魔王が、分裂した事で新たな土地を求めて、腹心の部下を連れて、この大陸へと渡ってきたそうです。
この大陸はまだ若く(若い大陸と言うのがわかりませんが)住んでいる住民も少なかったので、彼は高い山から見下ろした一帯を縄張りとすることにしました。
強い魔族の元、集まった色々な種族を保護しているうちに国になっていたそうです(え?国ってそんなにふんわりできる物なのですか?)
年月が流れ、大陸に住む住人も増え、沢山の国家も興されていき、次第に領地を奪い合う戦いも起こるようになりました。
東からは契約により侵略者は来ませんが、西や北からの侵略は止まりません。
そこで魔王は力押しでくる北の侵略者に対して、獣人の中で力と統率力のあるオオヤマイヌの亜人(どうやら狼のことのようです)を頭に、北の地を獣人達に任せました。
珍しい武器や魔法を使って新略して来る西の対処に、腹心の中でも自分の右腕と言われる魔族の一人に西の地を任せる事にしました。
(それがヨルゼルの前の魔王だそうです)
対抗する術のない弱い人属は平原に集められ、やがてその場所を人族の国として、平原の王国を築きましたけど、それはつい最近のことです。(つい最近と言っても二百年は経っているそうです)
強力な戦力を持つこの地は侵略不可能だと気づいた周辺の国は、和平を申し込んできます。
好んで戦っていたわけではないですし、自分の土地以外に興味のない魔王はそれを受け入れました。
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