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第二章 旅は道連れ
52 王都は予想外でした
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ブルースが武器を引き取りに行っているので、特にやることのない私達は町を散策しています。
換気って素晴らしい。
我ながら良い魔法を作ったものです。
屋台で売っている見たことのない果物を食べたり、串焼肉を食べたり、シナトラがお酒を買ったり、アインに見つかって取り上げられたり、チャックが、迷子と間違えられて保護されそうになったり……。
ブルースと合流した後、そのまま次の町へと移動を始めました。
まだ昼前ですけど、昼食はブルースが新しい武器を試したいから、獲物を獲りに行くと息巻いていますので、道行はお任せです。
平原の王国へ近づくに従って、町と町の距離は近いらしく、途中でゆっくり休憩をとっても、日が傾く前に次の町などへ着くそうです。
急ぐ旅でもないですし、そこで一泊し、その先も、移動速度に合わせて町を素通りするか、泊まるかを決めながらの移動となるそうです。
町に泊まる時は、珍しい物があれば購入し、野宿の時は魔獣を多めに狩り、肉や素材を確保したりしながらのんびりと進み、平原の王国の王都へ着いたのは、アインの神殿を出て20日ほど過ぎての事でした。
これまでの町は、木、石、レンガ、漆喰、土饅頭など、統一性のない雑多なイメージでしたけど、王都はレンガの建物で統一されています。
建物の形状からして、私から見れば王都と言うより【港の倉庫街】なんですよね。
色合いも、茶系統な色ですし、大きさに多少の大小はあっても、皆同じ形の建物なんです。
道は真っ直ぐ伸びていて、十字路で真っ直ぐ仕切っている、京都の街並みの様に、碁盤の目になっている様ですね。
町の中央に見えるのがお城なんでしょうけど……倉庫街に突如現れたアラビアンナイトの城、という感じですね。
白いレンガの建物で、上に玉ねぎが乗っているような、チグハグさがなんとも微妙です。
「王都は随分整然としているのですね」
それ以外の言葉が出てこなかったです。
「王都以外の町は、個人で家を建てますけど、王都では国が作った家を個人が借りて暮らしていますから、差が出ない様にみな同じ建物なのですよ」
「同じにしないと文句を言う奴が出てくるからな。
先に家を建てて、居住権を手にした人族が、中央から順に借りていってるそうだ」
家を自分で建てなくても、国から住居を借りれるのは良いかもしれませんが、確かに同じ建物なら『あっちが良かった』などの文句も出にくいでしょうけど……けど
「お店とかも同じ建物なんですね」
どうやら、入り口を閉めているのが一般家庭、大きく開けているのが商店のようです。
入り口の上や横に、看板が取り付けられていて、ドアを開け放つことにより、中が見えて、どんなお店かわかるようになってはいますけど…。
どうも私には奇妙な雰囲気を感じてしまいます。
「まぁレンガで同じ形の家を量産しているのは、人族以外住まわせないぞと言っているところも有るのだろうけどな」
「種族によっては温かみのないレンガの建物は、心安らかな生活を送れないですからね」
「僕もこの町に住むのは嫌だな」
「オレも好きじゃない」
4人には不評です。
「中はそれぞれカスタマイズしていますでしょうけど、安らげる感じはしませんよね」
窓にはやはりガラスははまっていず、サイズもあまり大きくありません。
アインの神殿は石造りでしたけど、窓は大きく風通しもよく、居心地は悪くなかったです。
でもこの町はなんと言いますか、人族が住んでいるはずなのに、【人の住む場所じゃない感】が漂っています。
「なぜこのような町並みになっているんでしょうね」
思わず呟いたら、アインが説明してくれました。
人族は、魔族と比べて魔力や魔法の威力は弱いですし、獣人と比べると体力に劣ります。
そんな人族を保護する目的もあり、山や森より過ごしやすい平原に、人族の王国を作ったのですけど、食糧や戦力を他の種族から提供してもらわないと、生活を送ることができないそうなのです。
自分達で狩をしようにも、人族が多い場所ですから魔獣が多い。
獣人や魔族なら一人で倒せる魔獣でも、人族だと複数で挑まないと倒せないですし、農作業も力のない人族だと効率が悪い。
だから他の種族の力を借りるために国庫を使わないとならない。
つまり貧乏な国なので、衣食住のどこを削るかと言うと、住む場所は雨風が防げれば良いとなり、安価で作れるレンガで定型の建物を量産するのが一番安価で済む……と。
「そうまでして国の形を取らないといけないのですか?
他の国の庇護下に置けば良いと思うのですけど…」
「現状、ヨルゼル達魔王や、獣王が面倒見ているのだが、名目上でも【人族の国】と言う物があれば、人族の心の拠り所になるだろ」
ブルースが私の疑問に答えてくれます。
多種族居るのなら、その種族だけが集まった国が有るのと無いのとでは、心の安寧が違いますよね。
ましてやこの世界では人族は他の種族より上回る物が無いようですし。
「体力に自信が有ったり、何か能力がある人族は、王都以外の町や村に住んでいますけど、王都は自分だけで生きていく術(すべ)の無い者たちの集まりなのです」
シェルターのような物なのですかね。
私のイメージする人の国の王都とは全く違う場所だと言う事がわかりました。
「ここで暮らす人族は力や体力は無いが、得てして器用だからな。
王都では糸を紡いだり柄の入った布を織ったり、小間物を作っさたりしておるぞ」
またもや勝手なイメージですけど、そう言った【家内制手工業】的な物は王都などの都会でなく、田舎で農業の閑散期などにやるイメージなのですけど。
……やはり世界が違うと色々イメージ外なことが多いですね。
私達は王都に一泊だけして、名産品の織物をいくつか入手したあと、早々と旅立ちました。
換気って素晴らしい。
我ながら良い魔法を作ったものです。
屋台で売っている見たことのない果物を食べたり、串焼肉を食べたり、シナトラがお酒を買ったり、アインに見つかって取り上げられたり、チャックが、迷子と間違えられて保護されそうになったり……。
ブルースと合流した後、そのまま次の町へと移動を始めました。
まだ昼前ですけど、昼食はブルースが新しい武器を試したいから、獲物を獲りに行くと息巻いていますので、道行はお任せです。
平原の王国へ近づくに従って、町と町の距離は近いらしく、途中でゆっくり休憩をとっても、日が傾く前に次の町などへ着くそうです。
急ぐ旅でもないですし、そこで一泊し、その先も、移動速度に合わせて町を素通りするか、泊まるかを決めながらの移動となるそうです。
町に泊まる時は、珍しい物があれば購入し、野宿の時は魔獣を多めに狩り、肉や素材を確保したりしながらのんびりと進み、平原の王国の王都へ着いたのは、アインの神殿を出て20日ほど過ぎての事でした。
これまでの町は、木、石、レンガ、漆喰、土饅頭など、統一性のない雑多なイメージでしたけど、王都はレンガの建物で統一されています。
建物の形状からして、私から見れば王都と言うより【港の倉庫街】なんですよね。
色合いも、茶系統な色ですし、大きさに多少の大小はあっても、皆同じ形の建物なんです。
道は真っ直ぐ伸びていて、十字路で真っ直ぐ仕切っている、京都の街並みの様に、碁盤の目になっている様ですね。
町の中央に見えるのがお城なんでしょうけど……倉庫街に突如現れたアラビアンナイトの城、という感じですね。
白いレンガの建物で、上に玉ねぎが乗っているような、チグハグさがなんとも微妙です。
「王都は随分整然としているのですね」
それ以外の言葉が出てこなかったです。
「王都以外の町は、個人で家を建てますけど、王都では国が作った家を個人が借りて暮らしていますから、差が出ない様にみな同じ建物なのですよ」
「同じにしないと文句を言う奴が出てくるからな。
先に家を建てて、居住権を手にした人族が、中央から順に借りていってるそうだ」
家を自分で建てなくても、国から住居を借りれるのは良いかもしれませんが、確かに同じ建物なら『あっちが良かった』などの文句も出にくいでしょうけど……けど
「お店とかも同じ建物なんですね」
どうやら、入り口を閉めているのが一般家庭、大きく開けているのが商店のようです。
入り口の上や横に、看板が取り付けられていて、ドアを開け放つことにより、中が見えて、どんなお店かわかるようになってはいますけど…。
どうも私には奇妙な雰囲気を感じてしまいます。
「まぁレンガで同じ形の家を量産しているのは、人族以外住まわせないぞと言っているところも有るのだろうけどな」
「種族によっては温かみのないレンガの建物は、心安らかな生活を送れないですからね」
「僕もこの町に住むのは嫌だな」
「オレも好きじゃない」
4人には不評です。
「中はそれぞれカスタマイズしていますでしょうけど、安らげる感じはしませんよね」
窓にはやはりガラスははまっていず、サイズもあまり大きくありません。
アインの神殿は石造りでしたけど、窓は大きく風通しもよく、居心地は悪くなかったです。
でもこの町はなんと言いますか、人族が住んでいるはずなのに、【人の住む場所じゃない感】が漂っています。
「なぜこのような町並みになっているんでしょうね」
思わず呟いたら、アインが説明してくれました。
人族は、魔族と比べて魔力や魔法の威力は弱いですし、獣人と比べると体力に劣ります。
そんな人族を保護する目的もあり、山や森より過ごしやすい平原に、人族の王国を作ったのですけど、食糧や戦力を他の種族から提供してもらわないと、生活を送ることができないそうなのです。
自分達で狩をしようにも、人族が多い場所ですから魔獣が多い。
獣人や魔族なら一人で倒せる魔獣でも、人族だと複数で挑まないと倒せないですし、農作業も力のない人族だと効率が悪い。
だから他の種族の力を借りるために国庫を使わないとならない。
つまり貧乏な国なので、衣食住のどこを削るかと言うと、住む場所は雨風が防げれば良いとなり、安価で作れるレンガで定型の建物を量産するのが一番安価で済む……と。
「そうまでして国の形を取らないといけないのですか?
他の国の庇護下に置けば良いと思うのですけど…」
「現状、ヨルゼル達魔王や、獣王が面倒見ているのだが、名目上でも【人族の国】と言う物があれば、人族の心の拠り所になるだろ」
ブルースが私の疑問に答えてくれます。
多種族居るのなら、その種族だけが集まった国が有るのと無いのとでは、心の安寧が違いますよね。
ましてやこの世界では人族は他の種族より上回る物が無いようですし。
「体力に自信が有ったり、何か能力がある人族は、王都以外の町や村に住んでいますけど、王都は自分だけで生きていく術(すべ)の無い者たちの集まりなのです」
シェルターのような物なのですかね。
私のイメージする人の国の王都とは全く違う場所だと言う事がわかりました。
「ここで暮らす人族は力や体力は無いが、得てして器用だからな。
王都では糸を紡いだり柄の入った布を織ったり、小間物を作っさたりしておるぞ」
またもや勝手なイメージですけど、そう言った【家内制手工業】的な物は王都などの都会でなく、田舎で農業の閑散期などにやるイメージなのですけど。
……やはり世界が違うと色々イメージ外なことが多いですね。
私達は王都に一泊だけして、名産品の織物をいくつか入手したあと、早々と旅立ちました。
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