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第二章 旅は道連れ

47 念話に夢が膨らみます

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「と言うわけで、次に交換ができる時に【念話】と言うものを手に入れれば、独り言にならなくて済む様なのです」
「そうですか、それなら次に交換するのは【念話】が良いかもしれませんね」

アインが詳しく説明してくれます。

相手も【念話】が使えると会話になりますし、こちらだけしか使えなくても、このスキルが有れば、会話はできなくても、こちらの言いたいことは、一方的にですけど、伝える事が出来るのだとか。

どうやらブルースが、王様トカゲの時に頭の中に話しかけて来たのが【念話】だった様です。
ブルースは【念話】が使えるので、頭の中に話しかけてきましたけど、私はあの時【念話】は使えなかったので、声に出して応答していました。

ブルースは王様トカゲの姿で人の言葉は喋れなかったので、念話で話しかけ、人の言葉が理解できるから、声に出して答えた私との会話が成り立ったと言うことです。

つまり、【念話】と言っても何でもありと言うわけではなく、言語を理解していないと、一方通行で言葉を伝えて、返答は受け取れない、お互いに【念話】が使えるのなら、発する言葉は違っても会話になる、と。

今の時点で会話が出来ないリンにでも、『これはしてはいけない』とか『これをやってくれ』などの言葉を伝える事が出来る様になるので、旅に連れて行く時の安全性が上がるとか。

ただ、まだ幼いので、簡単な指示くらいしか通じないとのことです。
赤ちゃんですからねぇ。
成長すれば、それなりに伝えることはできるそうなので、先が楽しみでもあります。


【念話】が使える同士ですと、テレパシーみたいになるのですよね。
ふふふ、なんだかとてもワクワクします。

それに声に出して言い辛い事でも、【念話】なら伝えられるかもしれませんね。
これは是非にも妻に再開したら、なかなか口にし難い感謝の気持ちを伝えるのも良いかもしれません。

他にも…ホラ、ねぇ……好き。だとかね。

「父ちゃんがなんだか楽しそうだね」
「いや、あれはニヤけてるって言うんだぞ」
シナトラとブルースに言われてしまいました。
顔に出ていましたか、恥ずかしいですね。
話を変えましょう。


「そうだ、【調理】もレベルアップしましたので、食事ももっと美味しい物が食べられますよ」
「おお、それは良い。
早速明日の朝からでもお願いしよう」
「美味しいもの、楽しみ」
「……………大丈夫なの?」

ブルースとシナトラは素直に喜んでくれるのに、チャックは不安そうな顔です。
「任せて下さい」
私はドンと、胸を叩きました。



「……………」
「………………………………」
「………………こんな事だと思ったよ」
「可笑しいですねえ」

翌朝、早速料理に取り掛かりました。
調理スキルの赴くままに、昨夜の残りの肉をスライスして、柔らかくするためにナイフの背の部分で肉を叩きます。
……そこまでは順調だったのですけど、油も調味料も無い、有るのは岩塩とハーブだけの状態です。
結果的に岩塩をまぶして焼いただけに終わりました。

……つまり、今までとなんの変わりもない、肉を柔らかくして焼いただけ、の朝食に、ブルースとシナトラの落ちた肩が………。

〈ジョニーさんの作ろうと考える色んな料理を作ろうと思うなら、塩以外をざっと上げると…

胡椒、砂糖、油、唐辛子、わさび、辛子、味噌、醤油、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、小麦粉、片栗粉、味醂、料理酒、バター、昆布、鰹節、いりこ、その他出汁系、etc………

塩や香辛料は有るし、ハーブ系はたくさん有るけど、それ以外が色々要るよね。
調味料を作るところから始めないとダメだと思うよ。
今のところこの世界に、顆粒だしやカレー粉、とんかつソースなんて無いからね。
味噌と醤油とマヨネーズは手に入らないことも無いけど、この国には無いよ。

後は塩も岩塩ではなく、ミネラルたっぷりの海水の塩がいいかな 〉

一言で調味料とは奥が深いものなのですね。
生姜焼きのタレや焼肉のタレ、麺つゆ、コンソメなどの調味料を合わせると、一体どれだけの種類になるのやら。
奥が深いものです。

……本音を正直に言っても良いですかねえ……。

面倒臭い!

料理を作ってくれる仲間を募集したいですよ。
それか誰かにこのスキルあげたいです。
料理スキルは私には宝の持ち腐れですね。
調理スキルだけで良かった様ですよ、本当に。


気を取り直して、先へと進みます。

ブルースが魔獣を感知し、それを追い立てて、私達の元へ誘導します。
そしてその魔獣を、チャックが麻痺の魔法で身動きを止めて、シナトラが剣でトドメを刺すか、私がタコ殴りにして息の根を止めるかして、倒していきます。
そうすれば、共同で倒したと判断されて、パーティメンバーそれぞれの実績となる様なのです。

勿論素材は回収して、食べられる獲物ですと、美味しくいただきました。

ギルドカードとは不思議な物です。
見た目は普通のカードですのに、倒した魔獣や、狩った動物の種類と数が、魔法の力で登録されるのです。
ギルドに有る魔法の道具で、ギルド職員がそれをチェックできるそうでして、その記録をもとにランクアップの判定をするそうなのです。

これが商業ギルドなら、取引きの内容、薬師ギルドなら、作った薬の種類と質と量などが記載されるそうです。
それを元にギルドが色々斡旋したり、ランクアップしたり、大きな依頼をしたりと、何だかんだとあるそうです。

生産ギルドは自動的にカードに登録されるものはなく、ギルド職員がが完成品の武器や防具、服や靴や鞄などを見て(鑑定して?審査して?)その結果をカードに記載するそうです。

兎に角情報満載なのですよ、この小さなカードに。
マイクロチップの様な物でも入っているのでしょうか?
と尋ねると、「魔道具ですよ」と返されました。

この世界では、魔法の道具(魔道具)の開発に力を入れている様です。
生物学者や歴史研究家などは殆ど居ないみたいですので、ドラゴンをトカゲと言ったり、虎を猫と一緒にしたりするんでしょうね。
ところ変われば常識も変わる物なのですね。


2泊の野宿中、結構な数の動物や魔獣を倒しました。
アイテムボックスが有って良かったです。
素材もお肉も無駄なく回収できています。
お肉だけではなく、果物や木の実、ハーブや薬草なども、どんどんチルド箱に入れて行きます。
食料のストックが増えると、安心感が有りますね。

そして2泊とも、朝目覚めると、チャックとシナトラに挟まれていました。
チャックの懐にはリンの姿もあります。
リンは熱魔法を常時発動していて(まだコントロールが効かなくて、いつでも暖かいそうです)その魔素の補充だよ!とチャックは言います。

どんな理由でも、この世界に来てから一緒に寝ていたチャックと、別々に寝るのが少し寂しかったので、私としては歓迎です。

シナトラに関しては、
「町とか他の人が居たらダメだけど、僕達だけなら良いんだよね?
仲間はずれされないんだよね?」
なんて言われたら、断ることはできません。

ふふふ、これからも野宿する時は皆で一緒に寝ましょうね。


そして私達は、昼過ぎに目的の町へ到着しました。






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