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第二章 旅は道連れ
27 くっついて寝るのは魔素にいいそうです
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「で、お前達はどの武器にするのだ」
残るは私とチャックですね。
「私は使いたい武器があるのですけど、ここには無いですねえ」
使いたい武器がどういった物か説明しましたら、
「なら鍛冶屋の有る町か村でオーダーすれば良いと思いますよ」
とのアインのアドバイスで、私の武器は一旦保留になりました。
残るチャックは…。
「オレは……剣は使えないと思う」
そうですね、チャックは元鳥の翼族ですから、その背の翼で飛ぶためにも、とても体が軽いのです。
口に出しては言えませんが、きっと体つきもこれ以上大きくならないのではないのでしょうか。
「そうですね、翼族が武器を使うとしたら、弓が多いですかね。
マネ鳥の様に体の小さな方ですと、弓を引く筋力もですけど、消耗品で数を多く持たなければならない、矢を持ち歩くのもマジックバックが無ければ辛いでしょう」
「マジックバックなら私が有りますが」
思わず口にすると、アインはゆるりと首を振りました。
「マジックバッグが有っても、彼の体つきですと殺傷能力の低い小さな弓しか使えないでしょう。
鏃を鉱物などにすれば、殺傷能力は上がりますけど、筋力的に沢山の数も撃てないでしょう。
筋力が付くと、それだけ体は重くなります。
せめて大型の鳥でないと、弓は難しいかと思いますよ」
背筋は申し分ないのですけとね、とアインは言います。
小柄なチャックは、多少筋肉が付いてもダメな様ですね。
「体の小さな翼族ですと、後はクローですかね」
「だが其奴は軽い故、クローでも致命傷を与えられぬな」
ブルースの言葉に、チャックが俯いてしまいました。
酷いです、ブルース。
「なれど其方なら、致命傷を与えねども、爪に麻痺や毒の魔法を纏わせれば、充分戦力になりえよう」
それはいいですね、麻痺させてしまえば、後はシナトラやブルースがトドメを刺してくれるでしょう。
しかしチャックはますます深く項垂れるばかりです。
そう言えば、魔素を上手く使えない……?でしたっけ?そんな事を言っていましたね。
私はアインに耳打ちして、チャックの事情を告げましたら、
「少し見て良いですか?」
と、チャックの額に手を当て、目を閉じました。
…見るのに目を閉じるのですか?
目を閉じて何を見ているのでしょう?
「…………充分魔素を蓄えていると思いますけど……一度魔法を発動してみて下さい」
アインに言われて、「できるわけない」などと呟きながらも、シナトラに向かって「麻痺」と唱えました。
すると…………。
「あわわわわ…、わわ……し…痺れ……るる…ひど……い…」
「え?かかったの?」
どうやら魔法は上手くいったようです。
「多分ですが、魔力の豊富なジョニーの側にいるから、彼の溢れ出す魔力…魔素を自然と吸収できていたのでしょう」
「私、何か放出しているのですか?
毎晩チャックとくっついて寝てるから、それが良かったんですかねえ」
何か垂れ流している様ですけど、それが役に立つなら幸いです。
「く、くっついてって……寒かったんだよ!
別にくっつきたくてくっついてたんじゃないからな!」
ふふふ、真っ赤になって何を言っても、説得力ないですよ。
「でも魔法使える様になるのなら、これからも一緒に寝ましょうね」
「ズルイー!僕も一緒に寝る~!
仲間はずれ反対ー!」
シナトラがヤキモチを焼いた様です。
二人とも可愛いですねえ。
「良いですよ、これからも3人で一緒に寝ましょうね」
私は笑顔で答えたのですが、
「いや、それはダメだろ」
「チャックならまだしも、シナトラはダメですね」
ブルースとアインから却下されてしまいました。
「いくら生まれて間もないと言え、見た目がこやつより立派なのだ。
野宿ならまだしも、人族の町などで大人の雄が一緒に寝てるとあらぬ誤解を受けるぞ」
「そうですね、昔ブルースも………」
「我のことは良い!
こやつの為に進言しておるのに、余計な茶々を入れるな」
ブルースの体験談でしょうか、確かに雑魚寝ならまだしも、一見成人を超えた男がベッドに一緒に寝ていると、あらぬ誤解を受けることも有るでしょうね。
「え~、僕一番年下なのに~」
「チャックは魔法を使える様にする為にも一緒が良いんです。
治療の一環の様なものですね。
シナトラは独り立ちした大人人でしょう?
我儘言ってジョニーを困らせたらいけませんよ」
アインの説得に渋々ながら、シナトラは納得してくれた様です。
ごめんね、シナトラ。
野宿の時は一緒に寝ましょうね。
武器は一通り決まって、防具も決めました。
チャックは軽量重視でら心臓を守るチェストプロテクターの様な物です。
いざとなれば飛んで逃げられますからね。
私は革製のチェストと革のグローブ、シナトラは私のものより分厚くて丈夫そうな革鎧と革の籠手です。
「 ? ブルース達の防具は?」
私も聞きたかった事をシナトラが聞いてくれました。
「ははは、我に防具など不要」
「私は……ふふふ、秘密です」
ブルースはドラゴン……王様トカゲですから、きっと頑丈なんでしょうけど、アインはバリアか何か張っているのでしょうか?
でも秘密にしておきたいのなら、聞かない方がいいですよね。
武器や防具が決まったら、アインが整えてくれた旅の荷物を、マジックバックに入れれば準備完了です。
いよいよ出発ですね、ワクワクします。
「ここからですと、一番近のは魔族と亜人の居る小さな村ですね。
歩くと5日ほどかかりますから、ブルースに近くまで運んでもらいましょう」
歩いて5日でも、ブルースが飛ぶと半日もかからない様です。
思わず尊敬の目で見る私とシナトラに、気を良くしたブルースは、王様トカゲの姿に戻りました。
ブルース便で移動する時の注意事項としてアインが言うには、
「王様トカゲは上位の存在なので、見つかると攻撃されたり、畏れられて祭り上げられたり、逃げられたり。
とにかくパニックになる事が有るので、あまり姿を見せない方が良いです。
なので人族や亜人の居る近くで元の姿に戻るのはお勧めできません。
町や村から半日以上離れた場所迄なら、彼…ブルースに乗って移動するのは良いですよ」
だそうです。
何でもブルースが強すぎて怖がる種族、神様の様に崇める種族、力試しの相手として戦いを挑む種族、素材として獲物として捉える種族など、様々なんだそうです。
王様トカゲも大変です。
残るは私とチャックですね。
「私は使いたい武器があるのですけど、ここには無いですねえ」
使いたい武器がどういった物か説明しましたら、
「なら鍛冶屋の有る町か村でオーダーすれば良いと思いますよ」
とのアインのアドバイスで、私の武器は一旦保留になりました。
残るチャックは…。
「オレは……剣は使えないと思う」
そうですね、チャックは元鳥の翼族ですから、その背の翼で飛ぶためにも、とても体が軽いのです。
口に出しては言えませんが、きっと体つきもこれ以上大きくならないのではないのでしょうか。
「そうですね、翼族が武器を使うとしたら、弓が多いですかね。
マネ鳥の様に体の小さな方ですと、弓を引く筋力もですけど、消耗品で数を多く持たなければならない、矢を持ち歩くのもマジックバックが無ければ辛いでしょう」
「マジックバックなら私が有りますが」
思わず口にすると、アインはゆるりと首を振りました。
「マジックバッグが有っても、彼の体つきですと殺傷能力の低い小さな弓しか使えないでしょう。
鏃を鉱物などにすれば、殺傷能力は上がりますけど、筋力的に沢山の数も撃てないでしょう。
筋力が付くと、それだけ体は重くなります。
せめて大型の鳥でないと、弓は難しいかと思いますよ」
背筋は申し分ないのですけとね、とアインは言います。
小柄なチャックは、多少筋肉が付いてもダメな様ですね。
「体の小さな翼族ですと、後はクローですかね」
「だが其奴は軽い故、クローでも致命傷を与えられぬな」
ブルースの言葉に、チャックが俯いてしまいました。
酷いです、ブルース。
「なれど其方なら、致命傷を与えねども、爪に麻痺や毒の魔法を纏わせれば、充分戦力になりえよう」
それはいいですね、麻痺させてしまえば、後はシナトラやブルースがトドメを刺してくれるでしょう。
しかしチャックはますます深く項垂れるばかりです。
そう言えば、魔素を上手く使えない……?でしたっけ?そんな事を言っていましたね。
私はアインに耳打ちして、チャックの事情を告げましたら、
「少し見て良いですか?」
と、チャックの額に手を当て、目を閉じました。
…見るのに目を閉じるのですか?
目を閉じて何を見ているのでしょう?
「…………充分魔素を蓄えていると思いますけど……一度魔法を発動してみて下さい」
アインに言われて、「できるわけない」などと呟きながらも、シナトラに向かって「麻痺」と唱えました。
すると…………。
「あわわわわ…、わわ……し…痺れ……るる…ひど……い…」
「え?かかったの?」
どうやら魔法は上手くいったようです。
「多分ですが、魔力の豊富なジョニーの側にいるから、彼の溢れ出す魔力…魔素を自然と吸収できていたのでしょう」
「私、何か放出しているのですか?
毎晩チャックとくっついて寝てるから、それが良かったんですかねえ」
何か垂れ流している様ですけど、それが役に立つなら幸いです。
「く、くっついてって……寒かったんだよ!
別にくっつきたくてくっついてたんじゃないからな!」
ふふふ、真っ赤になって何を言っても、説得力ないですよ。
「でも魔法使える様になるのなら、これからも一緒に寝ましょうね」
「ズルイー!僕も一緒に寝る~!
仲間はずれ反対ー!」
シナトラがヤキモチを焼いた様です。
二人とも可愛いですねえ。
「良いですよ、これからも3人で一緒に寝ましょうね」
私は笑顔で答えたのですが、
「いや、それはダメだろ」
「チャックならまだしも、シナトラはダメですね」
ブルースとアインから却下されてしまいました。
「いくら生まれて間もないと言え、見た目がこやつより立派なのだ。
野宿ならまだしも、人族の町などで大人の雄が一緒に寝てるとあらぬ誤解を受けるぞ」
「そうですね、昔ブルースも………」
「我のことは良い!
こやつの為に進言しておるのに、余計な茶々を入れるな」
ブルースの体験談でしょうか、確かに雑魚寝ならまだしも、一見成人を超えた男がベッドに一緒に寝ていると、あらぬ誤解を受けることも有るでしょうね。
「え~、僕一番年下なのに~」
「チャックは魔法を使える様にする為にも一緒が良いんです。
治療の一環の様なものですね。
シナトラは独り立ちした大人人でしょう?
我儘言ってジョニーを困らせたらいけませんよ」
アインの説得に渋々ながら、シナトラは納得してくれた様です。
ごめんね、シナトラ。
野宿の時は一緒に寝ましょうね。
武器は一通り決まって、防具も決めました。
チャックは軽量重視でら心臓を守るチェストプロテクターの様な物です。
いざとなれば飛んで逃げられますからね。
私は革製のチェストと革のグローブ、シナトラは私のものより分厚くて丈夫そうな革鎧と革の籠手です。
「 ? ブルース達の防具は?」
私も聞きたかった事をシナトラが聞いてくれました。
「ははは、我に防具など不要」
「私は……ふふふ、秘密です」
ブルースはドラゴン……王様トカゲですから、きっと頑丈なんでしょうけど、アインはバリアか何か張っているのでしょうか?
でも秘密にしておきたいのなら、聞かない方がいいですよね。
武器や防具が決まったら、アインが整えてくれた旅の荷物を、マジックバックに入れれば準備完了です。
いよいよ出発ですね、ワクワクします。
「ここからですと、一番近のは魔族と亜人の居る小さな村ですね。
歩くと5日ほどかかりますから、ブルースに近くまで運んでもらいましょう」
歩いて5日でも、ブルースが飛ぶと半日もかからない様です。
思わず尊敬の目で見る私とシナトラに、気を良くしたブルースは、王様トカゲの姿に戻りました。
ブルース便で移動する時の注意事項としてアインが言うには、
「王様トカゲは上位の存在なので、見つかると攻撃されたり、畏れられて祭り上げられたり、逃げられたり。
とにかくパニックになる事が有るので、あまり姿を見せない方が良いです。
なので人族や亜人の居る近くで元の姿に戻るのはお勧めできません。
町や村から半日以上離れた場所迄なら、彼…ブルースに乗って移動するのは良いですよ」
だそうです。
何でもブルースが強すぎて怖がる種族、神様の様に崇める種族、力試しの相手として戦いを挑む種族、素材として獲物として捉える種族など、様々なんだそうです。
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