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第二章 旅は道連れ

19 ヨルゼル氏はブルースと仲が良いようです

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「クククククククッ」
押さえた笑い声が聞こえてきました。
「おい、あまり意地の悪いことを言うな」
「スミマセン、どんな人か見極めようと思いましたけど、予想以上に面白い方のようですね」
どうもヨルゼル氏が笑っていたようです。
ブルースとの会話が聞こえます。

「だろ?」
「貴方が気に入ったのも納得できますよ」
そっと目を開けて見回すと、ヨルゼル氏とブルースは笑っていて、シナトラはキョトンとしています。
チャックはなぜか顔が赤いです。

「まあ、貴方が気に入っている時点で悪い人間だとは思いませんでしたけど、ここまで素直な上この世界のことを知らないとなると、守りが必要でしょうね。
だから連れてきたのでしょう?」
「それもあるが、我は説明下手であることを自覚しておるからな。
色々な説明なら、知恵者なそなたが一番適任であろう?」
「そうですね」

二人の会話はよくわかりませんが、先程の話はどこに行ったのでしょう?
「あの、真名を取り消すのはどうするのでしょう?」
再度尋ねてみます。

「ああ、それですね。
貴方には必要ないですよ。
きっと悪いようにはしないでしょうし、貴方が生きている限り命の保証があるのですから、そのままでもいいでしょう」
「いえ、ですから何かあってからでは遅いでしょう。
進んで酷いことはさせませんけれど、うっかり何かあったらどうするんですか?」
言い募る私に答えたのはブルースでした。

「その時は我が止めてやる。
我が止めなくともそ奴らが止めるだろう」
チャック達を見て言います。
「そんな事ができるのですか?」
真名を握る者に抵抗できないと言う話ではなかったですか?

「お前忘れていないか?
お前の真名を俺達も知っているのだぞ」
「…………あ、成る程」
そうですね、私、本名フルネームで名乗っています。
【後藤 丈二】が私の真名なら、お互いが生殺与奪の権利を持っていると言う事ですね。
となると、私の発言に抵抗出来なくても、三人のうち誰かがその発言を取り消すように私に命令できると。

「それにメリットはもう一つあって、命が繋がっている様な状態ですから、感情も伝わります。
貴方が幸せを感じると、その幸せな気持ちが伝わるし、辛い時にはその辛さを分かち合い、理解してもらえます。
つまり貴方が幸せなら彼らも幸せをお裾分けされる、という事です。
ですから、貴方は彼らに幸せをお裾分けするためにも、幸せを感じる生活を送ってください」

辛い気持ちも幸せな気持ちも分かち合う、まるで『病める時も健やかなる時も……』ですね。

「勿論我らの感情も伝わるぞ。
なればやる事は一つ、皆で幸せになればいつでも心地よく生きていけるという事だ」
「それは素晴らしいですね」
「だから小難しい事は考えずにいれば良い。
但しこれからは名を名乗る時と、名付けをする時には充分気をつける様にしろよ」
「わかりました」

私には深く繋がった家族ができた様です。

「あれ?名付けをする時には声に出すモノなのですよね?
真名は声に出さなくていいのですか?」
この際ですので疑問に思った事は聞いてみる事にしました。

「名付けは個を確立させる為に、相手にも認識させなければなりません。
認識させて、魂が寄り添う事で、名付けた者の形に似た形を取ります。
それが人族に近い亜人ですね。
心が寄り添ったところを強引に縛りつけるのが真名です。
寄り添い近くなった魂ですので、付ける方が認識していれば真名を付けることができます。
ただ、名付けの時に寄り添わずに一方的に付けると、自分に跳ね返ってしまうので、人としての形を失うこともあります。
ましてや真名を無理やりにとなると、魂まで別のものになってしまう事もあるそうです。
ですから、呉々も名付けは相手が望んだ時にのみにしてくださいね」

「お前よくわかってないだろう」
ブルースから指摘されましたので、正直に言いましょう。
「とても丁寧に説明して下さった様ですが、よくわかりません。
一先ず、相手の同意なしに勝手に名前をつけなければいいと言う事ですよね?」
「それだけ分かっていれば充分ですかね」
「コイツの説明が細か過ぎだからだろう。
根っこさえ間違えなければなんとかなるし、我らがなんとかしてやろう。
なにせ仲間だからな」
ブルースの言葉に
「自分が説明できないから人に説明させといてその言い草ですか」
と、ヨルゼル氏の眉間にシワが寄ります。
「いえ、理解できない私が悪いのですから、ブルースを責めないでください」
私の言葉にヨルゼル氏は、やれやれとばかりに首を振り、私に視線を合わせました。

「今は理解できなくても、この世界で暮らすうちに話の内容が理解できる様にもなるでしょう。
知りたい事で私のわかる事ならなんでもお答えしますよ」
「ありがとうございます」
「では私にも真名をつけていただきましょうか」

「……………え?」





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