【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

15 調理スキルを使ってみました

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さっぱりしましたし、早速とばかりに焼きキノコに再チャレンジしました。
不思議なものです、同じキノコを同じ魔法で焼いたのに、とても美味しく出来あがりました。
勿論二人にも振る舞いましたよ。

お腹が膨れましたら、出発です。
今日も空からチャックが道案内をしてくれています。
シナトラは別行動で食べ物を探しに行ってくれています。

チャックは元鳥ですので、木の実や果物を集めてくれるのですが、木の実や果物ではあまり満腹感を得られません。
私が探すと、キノコばかりだと言われました。
キノコはそこそこ満腹感があると思うのですが、肉食獣には不満な様です。

森は意外と鬱蒼とはしていなく、木漏れ日が幻想的とでも言いましょうか、とてもキレイです。
足元には色とりどりの花が咲いていますし、こんな場所を妻と散策したいですねえ。

「お待たせ!」

そんな私の癒し空間を破ったのは、血塗れの兎を両手に持ったシナトラでした……。
太陽が真上近くにありますし、お昼休憩にしますかね。

「僕二匹、ジョニーが二匹、チャックは小さいから一匹でいいよね?」
鋭い爪で仕留めたのでしょう、五羽の兎は、無残に引き裂かれています。

それを見て一瞬吐き気がしましたけれど、ここは異世界です。
以前の様にキレイに腑分けされ、パックに入ったお肉はありません。
私だって木の実やキノコだけでは生きていけません。
お肉や魚を食べなければ、栄養が偏り健康を損なう恐れがあります。
私がやらねば誰がやる。

チャックが
「肉なんて食べないよ!」
と言うので、三羽はシナトラが食べることに、
私はまだ生暖かい二羽を受け取りました。

シナトラは適当に毛皮を毟り丸かじり……。
私はナイフを片手にしましたけど、
「動物を捌いたことないよ…、調理スキルを持ってても……」
独り言を呟いたつもりでしたけど、「調理」と口にしたせいなのか、頭の中に、【どの部分にどうナイフを入れると解体ができるか】と、捌き方の手順が浮かんできました。

その手順通りに…と、ナイフを兎にあてがうと、スッスッと勝手に動き、兎を肉の塊にしてしまいました。
材料を切り分けるところからが調理の様ですね。

土魔法で火をつけるスペースを作り、チャックに集めてきてもらった枯れ枝に火をつけます。
これまたチャックが持ってきてくれた草…ハーブですかね、をまぶして枝に刺した肉を火で炙ります。

この辺もスキルの影響なのでしょうか、ハーブを細かく切ったりまぶしたりなど、考えずに体が動きます。
木の枝の刺し方も、ぶっ刺すのとは違う気が?
火との距離も最初は近くて、途中で少し離したりと、火加減を調節しているようですね。
自分の体なのに勝手に動くとは、不思議現象です。

暫く炙っていると頭の中に、『チーン』と聞き慣れた音が響きました。
キノコを焼いた時にもした、この電子レンジの様な音は、焼き上がった合図だと思います。

肉汁滴る兎肉を口にしました。
ジビエなど食べたことありませんし、グルメ番組の様なレポートはできませんが、野趣味溢れるとでも言いましょうか、少しクセはありますけれど、ハーブ?がいい味を出していて、大変美味しかったです。

ただ贅沢を言うならハーブより塩で食べたかったですねえ。
海は雰囲気的に遠いでしょうけれど、人里まで行けば手に入りますかね。
そういえば海から離れた場所でも、確か【岩塩】とか言う塩の石が手に入る事がある…と、旅番組で言ってましたねえ。
でもまさかそう簡単に見つかるわけないですよね。

色々考えながらもペロリと食べきってしまいました。
最近は肉は重くて少量しか食べられなかったのですが、体が若くなったからですかね、本当にペロリでした。

そんな私を見ていたシナトラが、自分の分も焼いてくれと、残りの一羽を渡してきたので、言われた通り焼きましたら、生よりこちらの方が美味しいと、とても興奮しています。
これから先、肉が手に入ったら、シナトラの分まで焼く事を約束させられました。
調理のスキルを使うと失敗する事もない様ですし、肉はシナトラが獲ってきてくれるので、焼くくらい問題はありません。
私は条件を受け入れました。

自分の分だけではないとなると、少しでも美味しいものを作りたいですよね。
そうなればやはり塩は欲しいです。
塩があればキノコのスープなども作れるかもしれませんし、他にも役に立ちそうです……えっと目玉焼きとか?

試しにと、私は先程土を耕した時に出てきた、少し濁った紫色をした水晶の様な物を鑑定します。
色付きの水晶ならお金に換金できますし、拾って行くのが正解でしょうからね。

「鑑定………はぁ、灯台下暗しですか…」

私はほんのり紫色をした岩塩を手に入れていました。
先にわかっていれば、今食べたウサギももっと美味しくいただけたのに、残念です。

鑑定はこまめにした方が良さそうですね。



日が暮れるまで歩き、今日寝る場所を決めると、シナトラが鳥を三羽、そして卵を四つ獲ってきてくれました。

鳥は捌いて、卵は茹で卵にします。
塩が手に入って良かったです。
目玉焼きはフライパンか、油が手に入ってからですね。
鳥肉は、「調理」と唱えた時に、チャックが採ってきてくれた果物が一緒に視界に入ったからか、頭に浮かぶまま手を動かしていきます。

一口大に切った鳥肉を塩で下味を付けて、水を入れた鍋の中に小鍋を入れて、そこに肉を入れ蓋をし、蒸し焼きにします。
グミに似た木の実を潰して、蒸しあがった鶏肉にかけますと、【名も知らぬ野鳥の蒸し焼き、見たことのない木の実のソースを添えて】とでも言いましょうか。
ふふふ、料理なんて一切作れなかった私ですのに、この調理スキルという物はなんて素晴らしいのでしょう。

鳥肉はとても脂身が多かったのですけど、蒸すことによって適度に油が抜け、そこに酸味のある木の実のソースが合い、とても美味しいです。

「ナニコレ?これ何?
この大声鳥いつも一匹食べたら胸がむかむかしてたのに、めっちゃ美味しい!なんで⁈」
シナトラが大喜びです。
作った私も大満足です。

そんな私達を見ていたチャックが、私の皿から鳥肉のかけらを取り、口にしました。
あ、共喰いでは………。

「え?ちょぅと、なんでこんなに美味しいの?
訳わかんないんだけど!
お肉がこんなに美味しいなんて聞いてないし!
ちょっと!なんでオレの分が無いの⁈
ちゃんとオレにも作ってよ!
なんなの、仲間外れなの⁈」

…………お肉は食べないと言ったのはチャック……、いえ、そうですね、仲間外れは良くないですね。 
次からは何を作る時も三人分準備しましょう。

今日は肉を調理したので、寝る前にクリーンの魔法をかけてもらい、スッキリしてから就寝です。
夜は冷えますが、三人で寝るととても暖かいですねえ。

おやすみなさい。





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