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第二章 旅は道連れ
8 閑話 案内人は見ていた
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「何なのあのオッサン!
物を知らないにも程があるでしょ!
生木を燃やしたら煙が出るなんて、当たり前じゃん!
それに普通鑑定スキルが有るんだから、手当たり次第鑑定するべきじゃない?
川の右側は食べ物少ないけど、ハーブとか薬草とか色々有るし、何より生物が一番必要な岩塩だって有るんだよ?
それなのにいきなり丸焼き、しかも燃え盛る火に突っ込むとか、突っ込み様がないよ!」
案内役の二人は、切り番当選者が無事に世界に到着したか、新生活のスタートをきったかを確認するまでが仕事だ。
今までも切り番当選者や、別口で転生や転移の送り出しをしていた二人は、余りにもの光景に唖然とし、目が離せなくなってしまっていた。
送り出した場所は、魔法の練習をしたり、鑑定スキルのレベルアップの為にも、人里から離れた場所だ。
その辺りは獰猛な生物も居ないので、武器はナイフだけでも大丈夫なくらいだし、川には魚や甲殻類も居る、川を渡れば果物も成っているし、簡単に狩れる小動物も居る。
スタート地点から魔法や武器での戦いを経験していき、人里へ着くまでに一通りのことを学ぶ為に転移先は森の中だ。
予定では、川の右側…東でスパイスやハーブなどを手に入れて、川で魚を捕り、左側…西で木の実や果物、ウサギやネズミを狩りながら、魔法の練習を……などと思っていた。
それなのに……………。
「なに、あの【隙間風】って、一体何に使うつもり?
風なら【ウインドカッター】とか【トルネード】とか色々あるじゃん!
何で【ウォーターボール】とかせめて【シャワー】なら百歩譲れるけど、どうして【水遣り】なの?
イミフなんですけど⁈⁈」
軽い口調の男は、両手で頭を掻き回しながら、スクリーンの前をウロウロしている。
本来なら一日目を確認したら、任務終了なのだけど、余りにも予想外すぎて二日目も見ていたのだが……。
「確かに資料では、子供がいないので、漫画やアニメやゲームに関わることなく、本を読む習慣もなし、ジェネレーションギャップから、若者との交流も、会社の部下と仕事上の付き合いしかない。
趣味が【妻】の様な、奥様第一で過ごされた方ですけれど、ここまでファンタジーの知識がないとは、少々困りますねえ」
「趣味【妻】っても、家事丸投げで、大事にしてたもなにもないんじゃないの?
だいたい転生や転移する奴らって、殆どが『趣味は料理です~』『料理は苦手だけどお菓子作り大好きなのぉ』『一人暮らしだったから家庭料理なら作れるのは当然ですが?』『食べるのが趣味で作るのにも手が出たんだよね』『お茶を入れるのなら大得意』とかじゃん!
それに人生経験豊富だと、『え?普通素材から作るもんでしょ?スパイスがあれはカレーが作れるの当然だし、パンだって酵母から作るよ!スープだってフォンも豚骨も鶏ガラだって作れないわけないじゃん!ラーメンだって朝飯前、デザートにアイスクリームだって作るよ』ってのがセロリーじゃん!」
「セオリーね」
「なのにキノコ一つ焼けないとかナイワー!
生焼けばかり食って腹下すとか、信じられない!
水魔法の二つ目が【ウォシュレット】ってバカかーーー!!」
叫んだ後、ガックリと肩を落とす。
「折角の切り番当選者なのに、二日目でエンドを迎えそうなんて……、せめてなにか強い魔物にエンカウントして瀕死ならまだしも、空腹で餓死寸前とか、俺達の成績を落とすつもりかよ」
「成績云々は置いといて、確かにこのままでは不味いですね。
私達の説明不足として責任問題にもなりかねないです」
丁寧な口調の男性の言葉に、軽い感じの男性は膝を抱えてしまう。
「あ~、何で俺今回の担当者になったんだろう…。
神様役で事故死したオタクな子の転生係をやればよかった」
「一度請け負った仕事は仕方ないじゃないですか。
グチグチ言うよりどうするか、対策を練る方が有意義です」
言いながらタブレットを操作する丁寧な口調の男性に、軽い口調の男性が膝を抱えたまま顔を上げて尋ねる。
「どうするんだよ」
「そうですね、先ずは【誘惑】の数値を少し上げましょう。
対象は【動物】と【子供】にしておけばトラブルも少ないでしょうから」
確かに大人が誘惑されると色々問題が起きそうだ。
動物なら気が合えば亜人化させて仲間にできるだろうし、子供に好かれるのは、彼は喜びそうだ。
軽い口調の男性は立ち上がり、タブレットを一緒に覗き込む。
「それなら人間に興味のある動物を彼の近くに誘導するのはどう?」
「そうですね、私もそれは考えていました。
それに加えて仲間から弾かれているモノも誘導してみましょう」
「あと退屈してる奴とかもいいんじゃない?」
軽い口調の男性の言葉に、何か思いついた様に肯く。
「そう言えばあの辺りにあの方がいましたね。
少し誘導してみましょう。
あの方を仲間にできるかどうかは彼次第ですが、あの方の知恵は彼の助けになるでしょう」
「あー、アイツね、確かに物知りだし、いいんじゃない?
アイツも引きこもっているより刺激的だろうしね」
タブレットを操作して、一通りの作業を終わらせて画面を閉じる。
「このまま彼を見ているわけにはいきませんし、こちらからはこれ以上手出しはできませんね」
「だいたい監視は昨日までの予定なのに、オーバーしている時点で俺達ペナルティだろ?
それに二つも追加サービスしたのも怒られそうだな」
「でも死なれるよりはマシでしょう」
転生、転移させた命が、そこそこ生きた後ならまだしも、すぐに亡くなった場合、案内人にはかなりの罰則が課せられる。
それよりは、死なせないための追加処置で少しばかりのペナルティを受ける方が、ずいぶんマシなのだ。
「何はともあれタイムオーバーですよ、そろそろ戻りませんと」
「あー、ほんと、俺達のためにも長生きしてくれよ、ジョニー」
物を知らないにも程があるでしょ!
生木を燃やしたら煙が出るなんて、当たり前じゃん!
それに普通鑑定スキルが有るんだから、手当たり次第鑑定するべきじゃない?
川の右側は食べ物少ないけど、ハーブとか薬草とか色々有るし、何より生物が一番必要な岩塩だって有るんだよ?
それなのにいきなり丸焼き、しかも燃え盛る火に突っ込むとか、突っ込み様がないよ!」
案内役の二人は、切り番当選者が無事に世界に到着したか、新生活のスタートをきったかを確認するまでが仕事だ。
今までも切り番当選者や、別口で転生や転移の送り出しをしていた二人は、余りにもの光景に唖然とし、目が離せなくなってしまっていた。
送り出した場所は、魔法の練習をしたり、鑑定スキルのレベルアップの為にも、人里から離れた場所だ。
その辺りは獰猛な生物も居ないので、武器はナイフだけでも大丈夫なくらいだし、川には魚や甲殻類も居る、川を渡れば果物も成っているし、簡単に狩れる小動物も居る。
スタート地点から魔法や武器での戦いを経験していき、人里へ着くまでに一通りのことを学ぶ為に転移先は森の中だ。
予定では、川の右側…東でスパイスやハーブなどを手に入れて、川で魚を捕り、左側…西で木の実や果物、ウサギやネズミを狩りながら、魔法の練習を……などと思っていた。
それなのに……………。
「なに、あの【隙間風】って、一体何に使うつもり?
風なら【ウインドカッター】とか【トルネード】とか色々あるじゃん!
何で【ウォーターボール】とかせめて【シャワー】なら百歩譲れるけど、どうして【水遣り】なの?
イミフなんですけど⁈⁈」
軽い口調の男は、両手で頭を掻き回しながら、スクリーンの前をウロウロしている。
本来なら一日目を確認したら、任務終了なのだけど、余りにも予想外すぎて二日目も見ていたのだが……。
「確かに資料では、子供がいないので、漫画やアニメやゲームに関わることなく、本を読む習慣もなし、ジェネレーションギャップから、若者との交流も、会社の部下と仕事上の付き合いしかない。
趣味が【妻】の様な、奥様第一で過ごされた方ですけれど、ここまでファンタジーの知識がないとは、少々困りますねえ」
「趣味【妻】っても、家事丸投げで、大事にしてたもなにもないんじゃないの?
だいたい転生や転移する奴らって、殆どが『趣味は料理です~』『料理は苦手だけどお菓子作り大好きなのぉ』『一人暮らしだったから家庭料理なら作れるのは当然ですが?』『食べるのが趣味で作るのにも手が出たんだよね』『お茶を入れるのなら大得意』とかじゃん!
それに人生経験豊富だと、『え?普通素材から作るもんでしょ?スパイスがあれはカレーが作れるの当然だし、パンだって酵母から作るよ!スープだってフォンも豚骨も鶏ガラだって作れないわけないじゃん!ラーメンだって朝飯前、デザートにアイスクリームだって作るよ』ってのがセロリーじゃん!」
「セオリーね」
「なのにキノコ一つ焼けないとかナイワー!
生焼けばかり食って腹下すとか、信じられない!
水魔法の二つ目が【ウォシュレット】ってバカかーーー!!」
叫んだ後、ガックリと肩を落とす。
「折角の切り番当選者なのに、二日目でエンドを迎えそうなんて……、せめてなにか強い魔物にエンカウントして瀕死ならまだしも、空腹で餓死寸前とか、俺達の成績を落とすつもりかよ」
「成績云々は置いといて、確かにこのままでは不味いですね。
私達の説明不足として責任問題にもなりかねないです」
丁寧な口調の男性の言葉に、軽い感じの男性は膝を抱えてしまう。
「あ~、何で俺今回の担当者になったんだろう…。
神様役で事故死したオタクな子の転生係をやればよかった」
「一度請け負った仕事は仕方ないじゃないですか。
グチグチ言うよりどうするか、対策を練る方が有意義です」
言いながらタブレットを操作する丁寧な口調の男性に、軽い口調の男性が膝を抱えたまま顔を上げて尋ねる。
「どうするんだよ」
「そうですね、先ずは【誘惑】の数値を少し上げましょう。
対象は【動物】と【子供】にしておけばトラブルも少ないでしょうから」
確かに大人が誘惑されると色々問題が起きそうだ。
動物なら気が合えば亜人化させて仲間にできるだろうし、子供に好かれるのは、彼は喜びそうだ。
軽い口調の男性は立ち上がり、タブレットを一緒に覗き込む。
「それなら人間に興味のある動物を彼の近くに誘導するのはどう?」
「そうですね、私もそれは考えていました。
それに加えて仲間から弾かれているモノも誘導してみましょう」
「あと退屈してる奴とかもいいんじゃない?」
軽い口調の男性の言葉に、何か思いついた様に肯く。
「そう言えばあの辺りにあの方がいましたね。
少し誘導してみましょう。
あの方を仲間にできるかどうかは彼次第ですが、あの方の知恵は彼の助けになるでしょう」
「あー、アイツね、確かに物知りだし、いいんじゃない?
アイツも引きこもっているより刺激的だろうしね」
タブレットを操作して、一通りの作業を終わらせて画面を閉じる。
「このまま彼を見ているわけにはいきませんし、こちらからはこれ以上手出しはできませんね」
「だいたい監視は昨日までの予定なのに、オーバーしている時点で俺達ペナルティだろ?
それに二つも追加サービスしたのも怒られそうだな」
「でも死なれるよりはマシでしょう」
転生、転移させた命が、そこそこ生きた後ならまだしも、すぐに亡くなった場合、案内人にはかなりの罰則が課せられる。
それよりは、死なせないための追加処置で少しばかりのペナルティを受ける方が、ずいぶんマシなのだ。
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