【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

文字の大きさ
上 下
7 / 206
第二章 旅は道連れ

7 探索をしてみましょう

しおりを挟む

寒さとくすぐったさを感じ、目を覚ますと、焚き火が消えていました。
くすぐったさの原因は、枕代わりの丸めたリュックの上、私に擦り寄るようにくっつく紫色の羽毛です。

私が目覚めたのを感じたのか、パッと離れて、
「ギー!ギーーー!」
と威嚇した後、また飛んで行ってしまいました。

寒かったのでしょうね。
焚き火が消えてしまい、寒さを凌ぐ為にくっついていたのでしょう。
私は再び焚き火に火を付け、横になり寝たふりをしていました。

暫くすると紫色のオカメインコは三たびやって来ました。
焚き火に近づき、私の方を気にしながらも、丸まって目蓋を閉じます。
やはり寒かったようですね。
私は驚かせないように、なるべく優しい声を心がけて話しかけました。

「ねえ君、寒いのなら毛布の中に来るかい?
一緒に寝るときっと一人より暖かいよ。
私は君に危害を加えはしないよ。
信じられないかもしれないけど、信じてくれたら嬉しいな。
私は動かないから、君が暖かく寝たいなら、こっちにおいで。
私は先に寝るから、少しでも信じてくれたなら、毛布の中に入って来るといいよ」

紫色のオカメインコはじっと私の話を聞いています。
動物に話しかけるなんて…と仰る方はいますけれど、私は動物にだって言葉は通じると思います。
気持ちも通じると思っています。

「それじゃあ私は先に寝るから、気が向いたらおいでよね」
伝える事を伝えて、私は再び眠りにつきました。

明け方目を覚まし、そっと毛布をめくると、胸の上で寝ている小さな命。
体より心が暖まりますよね。
冷たい空気で目が覚めたのか、オカメインコはビクッとした後、隙間から飛び去って行きました。
残念です。


荷物はその場に置き、川で顔を洗い水筒に水を入れたら、食べ物を探しに出発です。
持ち物は水筒と木の棒、ウエストポーチの中はナイフとドリンク剤の瓶一本、それに昨日引き裂いた手拭いの残りを同じ様に引き裂き、半分の長さに切ってリボン状にした物が8本入っています。

森の奥へ進み暫くしたところで、木の枝にリボンを結びます。
そこから進み、枝にリボンを……こうすれば帰り道に迷わないでしょうから。
リボンがなくなるまで進み、何もなければ、リボンを回収しながら戻り、別の方向へ進めばそのうち何か食べられる物も見つかるでしょう。

三つ目のリボンを結んだ頃に気づきましたが、オカメインコが付かず離れず付いてきているようです。
私に興味を持ったのでしょうか?
ふふふ、そうなら嬉しいですねえ。

一度目、二度目と空振りに終わり、三度目の挑戦だとも思いましたけれど、お腹空いて気力も落ちました。
昨日から焦げた生焼けキノコと出がらしキノコ、それにキノコの煮汁と川の水しか口にしていません。

先ほどから獣道を歩く足音より、お腹の音の方が大きいです。
仕方がないので川原であちらこちらに生えているキノコを焼いて食べることに。
今回は火から離して焦げないようにしましたけど、生焼け具合が酷くなっただけでした。
網でも有れば、スライスして焼けますが、無い物は仕方ないです。

空腹は紛れましたけど、ストレスは溜まります。
早くキノコ以外の食べ物を見つけないと。


三度目の探索の途中、緊急事態が発生しました。
無いと分かっていても、ついキョロキョロ探してしまいます。
ト……トイレ…………、あるわけないですよね。
小ならまだしも、生焼けばかり食べた弊害が、空腹とは違う音がお腹から響いてきています。
諦めて草むらへ入り、せめてもと土魔法を使います。
「小さな落とし穴」

出す物出したら何とか落ち着きました。
しかし困った事は続きます。
トイレが無いのに、トイレットペーパーなどあるわけがありません。
でもこれは大丈夫でした。
「ウォシュレット」
後は穴を埋めてしまえばいいですよね。
これで大丈夫、大丈夫じゃないのは、ずっと見られていた事です…、オカメインコに。
精神的にダメージがありますけど、見られていた事は忘れましょう。


四度目、五度目、何も見つかりません。
出したからか、お腹が空きました。
けれどキノコは暫く口にしたくありません。
六度目、二つ目のリボンを結ぼうとして上を向いていたら、足元の木の根に引っかかり、転んでしまいました。
なんだか立ち上がる気力がありません。

このままここで朽ち果てるのでしょうか。
幸せになるどころか、第二の人生開始早々に餓死ですか。
投げやりな気分になってきます。

そのままうつ伏せに倒れていると、何かが後頭部に当たりました。
顔を上げて辺りを見ると、中指ほどの黄色い物体が……。
それを手に取り、皮を剥いてみると、見たことのあるそれはやはり
「モンキーバナナじゃないですか!」

バナナは素晴らしいですよ、甘いし栄養価も高いし、腹持ちもいいし、皮も剥きやすく種もないので、簡単手軽に食べられますからね。
私は一口でそれを食べました。
ああ、甘さが染み入ります。

しかしこれはどこから来たのでしょう?
キョロキョロと見回してみると、オカメインコがモンキーバナナを一本足に掴み、飛んでくるではありませんか。

「君が持ってきてくれたのか?
ありがとう」
体を起こし座ると、オカメインコに向かい頭を下げ礼を告げます。
オカメインコは持って来たモンキーバナナを私の前に落とすと、
「ギーー、ギギ、ギーーー!」
と威嚇しました。
これはアレですかねえ、『つんでれ』とか言うやつなのですか?
一宿の恩返しですかねえ、ありがたく頂戴いたします。

私がまた一口で食べると、オカメインコは川の方へ向かって飛び、低い木の枝に止まると、「ギー」と鳴きながらこちらを見ています。
こちらへ来いと呼んでる気がします。
私が近づくと、また先の木に止まりこちらを見ているので、私の考えは間違っていないでしょう。

オカメインコに先導されて川へ戻った所で、彼(多分きっと雄ですね)は川向こうへ飛び、河原に降りてまた鳴きます。
川を渡れと言う事でしょうか。
サンダルの様な靴で川を渡るのは怖いので、裸足になって渡ります。
幸い深い部分でも太腿の辺りまででしたので、何とか渡りきることができました。

オカメインコに導かれるまま進むと、少し開けた場所にモンキーバナナが群生していました。
「おお…これはありがたい!」
そこにはモンキーバナナだけでなく、よくよく見るとビワも成っています。
ビワが成っていると言うことは今は5月あたりですかね。
とりあえず首にかけていた手拭いで包めるだけ採り、川へ戻ります。

どうやら川の向こうは実のなる木は無いのかも知れません。
拠点をこちらに移し、明日からはこちらを探索しましょうか。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...