【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第二章 旅は道連れ

6 『男子厨房に立つべからず』な土地柄で育った中年ですから…

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肌寒さを感じて目が覚めました。
どうやら日が暮れてきたようです。
地面に寝ていたので少々体が痛みますねえ。

日暮れでこれだけ肌寒いなら、夜になるともっと冷え込みそうですね。
川の近くでは一層冷えそうですから、森の中で眠る場所を探した方が良さそうです。

来た道を戻るより、人里目指して他の道を進む方が良いでしょう。
かと言って水があるか無いかわからない場所へ行くのは不安です。
食べ物がなくても、最悪水さえあれば何とかなりますからね。
水筒がありますが、水筒の水だけでは心許ないです。

私は川から離れ過ぎないように、川音の聞こえる範囲で反対方向へ進みました。
川の音に注意しながら少し歩くと、少し開けた場所に、大きな倒木があります。
根元から折れたそれに薙ぎ倒されたのか、周りの樹々も巻き込まれるように倒れていまね、朽ちている様子は無いですから、何かあったのでしょうか?

倒れた樹々は立派で、一番大きな倒木は、私の背丈ほどの幅があり、向こう側が見えないほどです。
見たことも無いような太さの樹ですねえ。
樹齢何十年、何百年とかでしょうか。
ひょっとして御神木なのかもしれないほど立派な樹々です。

その倒れた樹々が良い風除けになりそうですので、そこで休むことにしました。

リュックから荷物を出し、落ちている枯れ木で再度焚き火を試みます。
やはり野宿なら火が無いと危ないでしょうから。
今度は煙は出ませんでした。
先程切り落とした枝の木は、やはり煙の出る木だったのでしょうか?

水を入れた鍋に、キノコを入れて煮込みます。
暫く煮込むといい匂いがしてきました。
確か火が通ったからどうかは串を刺せばわかるんですよね?
細く削った枝を、鍋の中のキノコに刺しましたけれど、先程の串刺しとどう違うのでしょう?
わかりません。

生焼けのように、生煮えは嫌ですから、さらに煮込みます。
水を足し足し30分も煮込めば大丈夫でしょう。
鍋を火から下ろして、キノコを取り出し実食です。

…………カスカスで、風味も何もありません。
何とか飲み込みましたけど、これはダメですね。
鍋の中に残った煮汁もいい匂いはしますけど、これもダメなのでしょうか。
捨てるには勿体無いですので、コップに移し飲みました。
ああ、これは椎茸の出汁の味に近いですね。
塩味が足りませんが、今までで一番まともな食べ物(飲み物?)のような気がします。

鍋の中身を飲み干して、ふと気づきました。
これは私が洗わないといけないのですよね?
食器など一度も洗ったことはありません。
食器用の洗剤もスポンジもありません。
でもこのまましまうわけにもいきませんよね。
少し考えてから、【水遣り】で流すことにしました。
油は使っていないので、水を流すだけでもいいでしょう……きっと。


焚き火に木の枝をくべながら、毛布を頭から被り寒さを凌ぎます。
やはり夜になるとかなり冷え込んできました。
燃える火を見ながら考えます。

私は本当に妻がいないと何もできませんねえ。
何もかも妻に任せていました。
あちらの世界では便利な電化製品が沢山あったにも関わらず、私は掃除機一つ、洗濯機のボタンを押すことも、食器洗浄機に皿を入れることもしたことがありません。

仕事に行って給料をもらい、買い物に行った時に荷物を持ったくらいで、妻を労った気でいました。
お嬢様育ちだった妻を、駆け落ちで家族から引き離したのに、私は妻を幸せにできていたのでしょうか。

それでも、自分勝手でも、私は再び妻に会いたいのです。
今度こそ妻を幸せにします。
第二の人生は、妻の為に生きます。
だから早く会いたい………。

焚き火が滲んで見えるのは、煙が目に染みたからです。
泣いているわけではありません。
紫色の生き物が焚き火で暖をとっているのも、目の錯覚でしょう。


………紫色の生き物?


目を擦りその生き物をよく見ましたら、見慣れたその生き物は、オカメインコではありませんか。
色は紫ですが、あの可愛らしい体型に、頭の上の冠のような羽、まあるい嘴にほっぺの赤、それにつぶらな瞳。
思わず凝視していると、視線を感じたのか、閉じていた目蓋を開け、オカメインコはこちらを見ました。

「ギーーー!ギーーーーー!!」

羽根をバタつかせて威嚇をしています。
ああ、懐かしいですねえ、うちで飼っていたチャックも、機嫌が悪いとよくこうしていました。

「チチチチ」
舌を鳴らしながらゆっくり近づき、下から指を差し出します。
オカメインコは驚いたように飛んできいました。
驚かせたようですね、可愛そうな事をしました。

飼っていたオカメインコを思い出し、ほっこりしたところで、眠くなってきたので、焚き火に木を足してから、少し眠ることにしました。




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